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15

九歳になりました。

あれから俺は訓練に勉強に、家庭菜園に勤しんでいる。




そして、今日はジルたちとの合同訓練の日である。あの日から俺たちは、こうして度々合同訓練を行っていたのだ。



今日の俺の相手は、誰だろうか? 俺がジルに確認すると、オレンジ髪が現れた。




「俺だ。」



オーサックか。あれから、たびたび合同訓練を行っているが、それ以外でも何かと勝負をしたがる。面倒な奴に気に入られたかな?



その他の組み合わせは、ジルとキース、ミラルとウォーザットという風になった。













ーー











オーサック・ドンターラ。オレンジ髪に淡い黄色の目のガタイのいい男前だ。属性は火である。火の身体強化を得意とし、火力とスピードを持ち合わせたアタッカータイプだ。特殊な能力は持たないが、恵まれた体格や身体能力を生かした、純粋で強力な力と速さが武器だ。




「では、始め!」、ジルの合図で俺たちは一気に距離を詰める。





こういう脳筋タイプは、からめ手で攻めるのが得策である。しかし、俺は火力のぶつけ合いも嫌いじゃない。さて、どうするか。火力のぶつけ合いは前にやったから、ここはセオリー通り、水で攻めるか。



『凪げ 泡沫』


『火よ、我が身を強化せよ』




「いくぞ、アース!オラッ!」、火の身体強化を纏ったオーサックが、剣を振りぬいてきた。





ドンッ! ドンッ! キンッ! 





クソ……。やはり一撃が重すぎる。魔刀がぽっきり折れそうだ。それにスピードがある。純粋な力とは、やはり恐ろしいな。だが……。



『泡沫の誘い』



シャボン玉のような泡が周囲に展開される。しかし、今回は幻影用ではなく、目くらましようだ。





「その手は効かん! 幻影を見せられる前に、吹き飛ばす! オーラッ!」




オーサックの一閃が泡を吹き飛ばす。



しかし、残念。この泡は詠唱のすきをつくるためだよ。





『泡沫よ、儚く散らせ 泡沫の夢』



俺がそう詠唱すると、周囲を埋め尽くす黒い泡が展開される。




「な!? 黒い泡だと、新技か?」






その通りだ、俺だってこの二年間ぼんやりしていたわけではない。魔刀の能力増やしに、最も力を注いだのである。


 


泡沫の第二の能力【泡沫の夢】は泡に触れた相手の魔力を奪うというものである。大量の泡による魔力簒奪は、魔力量に自信のない者が多い騎士相手には効果抜群である。 


ただ、能力が強くなればなるほど詠唱が長くなるため、隙を作る必要があるのだ。




「こんなものまた吹き飛ばせば!」、オーサックが再び、剣を大振りしようと構えた。



それはどうかな? 俺だって、同じ手には、しっかり対応するんだよ!


『氷壁』




俺は、オーサックの周囲を氷壁で、アーチ状に覆った。これで泡が吹き飛ばされようと、俺の泡沫は氷壁内にとどまる。




(クソッ! 先に氷壁を壊さないと……。 あ!? どんどん身体強化が、弱くなっていく! この黒い泡のせいか! このままじゃ……、早く氷壁を壊さなければ!)



オーサックが、氷壁に狙いを定めたらしく、壁際に走り出した。




させない!




『水槍』

『大窓』




俺は大窓をだし、オーサックの正面へと出口をつくり、放たれた水槍を氷壁内へと移動させる。



(クソッ! もう魔力が……。 グッ!)





水槍がオーサックに、直撃した。魔力もほとんど残っていないだろう。たとえ傷が浅くとも、もう、身体強化は発動できないだろう。



「それまで、勝者アース・サンドール!」、ジルのコールが響き渡った。








 俺は魔法をすべて解除し、オーサックのもとへと駆け寄った。


「オーサック、大丈夫か?」


「あぁ、アース。また俺の負けだな。」


「今回は新技のお披露目だったからな。」


「お前はどんどん、新しい能力を作り出していくな。明日また勝負だ。」


「明日はやんねーよ!」



俺たちが健闘をたたえ合っていると、ジルがそばに寄ってきた。



「おつかれ、アース。あの新技すごかったな! 俺も早くお前と勝負したいぞ!」



「あぁ、ジル。次の機会にな。ほら次、キース対ジル!」









ーー









キース対ジルはキースの魔力切れで、ジルの勝ちとなった。キースは、雷属性の身体強化をほぼマスターし、直線距離の速さや貫通力では、他を凌駕している。序盤から果敢に攻めたが、ジルも騎士兼魔導士としての才能を開花させつつあり、剣技と魔力量をいかんなく発揮した攻防を展開した。最終的には、魔力量でキースの負けとなった。



「キース、流石の実力だ。魔量量が同じであれば、勝負はわからんぞ。」


「もったいないお言葉です、殿下。」





「キースもジルもお疲れさま。次、ミラル対ウォーザット。始め!」









ーー







互いに同じ水属性の身体強化同士の戦いだ。回避と受け流しのミラルと、水の斬撃を飛ばせ、水が流れるような軽やかさが持ち味のウォーザット、という感じだ。二人の戦いは、水のように静かな戦いだった。しかし、決着はあっという間だった。水の斬撃を放ったウォーザットに対して、ミラルはその一撃を突進しながら捌き、そのままカウンターを決め勝利した。






「流石、ミラル譲だね。回避と受け流しの技術もさることながら、反撃の一撃も見事だったよ。」




「ウォーザットの攻撃も鋭くて、回避や受け流すのが大変だったよ。また、勝負しよう。」




二人も健闘をたたえ合った。




そろそろ終わりにしようという雰囲気の中、ジルがふと何かを思い出したかのようにつぶやいた。



「今日はこれで終了だな。あぁ、そうだアースに話があったんだ。そろそろ来る頃だけど……。」



うん? 誰だろうか?



すると突然、影が動き出し……、見覚えのある顔が現れた。





「お久しぶりです、アース様。」




ア、アスタだ!



「アスタ! 久しぶりだな! 修業はもう終わったのか?」



「はい、終わりましたよ。」





アスタとは、一年以上会っていなかった。俺は定期的に、王城へと足を運んでいたが、影という特殊な部隊ゆえになかなか会うことができなかったのだ。


背も……伸びたな、よかった。俺たちと同じくらいの背丈になっている。





「アスタ久しぶり、強くなったか?」、「アスタが元気そうで何よりだね。」、「情報取集について早く打合せしたいな。」、俺に続いて、側近たちもアスタに声をかけ始めた。




「皆さんも、お久しぶりです!」





アスタ……。なんというかその、少し変わったな。前よりも自信に満ち溢れて、堂々としている気がする。俺がアスタにそう、伝えてみた。




「師匠に堂々とするようにと教わったのですよ。従者がおどおどしていると、主の格を下げてしまう、とね」と、アスタは笑顔で答えた。




「なるほどな。師匠はどんな感じの人だった?」




 「それは……」、アスタが答えるのと同時に、また影が動いた。




「そちらの方は、もしかして……」、俺がそういうと、アスタが答えてくれた。




「はい、こちらは師匠のタンドリーチキン先生です。」




タンドリーチキン? 偽名でしかないな。しかし、この見た目どこかで……。




「初めまして、アース様。タンドリーチキンと申します。影ゆえ、本名を名乗れないことをお許しください。」




なるほど、そういう理由で偽名か。あと、この声もどこかで聞いたことがある気がする……。確かめてみるか。





「お初にお目にかかります。アース・サンドールと申します。アスタが大変お世話になりました。」



「いいえ、鍛えがいのある教え子でしたので、楽しかったですよ」と、偽名の先生は笑顔で答えた。





「左様でございましたか。私もアスタには期待しております。ところで、タンドリーチキン先生、最近オークションで面白いものはありましたか?」


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