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水晶に手をかざし、属性判定を受けて結果、アスタは闇属性を賜っていた。
やはり魔力持ちだったか。しかも闇! 俺が欲しい属性である。闇属性は、影移動や気配遮断が使える。攻撃は重力や引力を使う。そして何より、従魔契約も適性があれば扱える。なんとも、厨二心をくすぐられる属性なのだ。
俺たちは司教からの、探るような視線を感じながら、教会を後にした。
ーー
「アスタ、おめでとう! 闇属性だってよ! 本当に、うらやましいぞ! アスタ、アスタが属性を賜わっていたらと、決めていたことがある。」
「なんでしょうか?」と、アスタが不安げに俺を見つめてくる。安心しろ、悪い話じゃないからさ。
「俺の側近にならないか? 俺が保障できるのは、食事や寝床、給金、そして守ってあげることくらいだけどな。」
「わ、私は弱くて、何もできないですよ……」といいながら、アスタ首を横に振る。
「誰だって最初は弱い、それなら訓練して強くなればいい。一緒に強くなろうな、アスタ。」
俺がそういうと、アスタは意を決したような顔つきになって、頭を下げた。
「……。わ、私たちはアース様に命を救っていただけました。そのアース様のために、私がお役に立てるのならば……、アース様のお命をお守りしたいです!」
そうか、よかった……。アスタにそう言ってもらえて、俺はうれしいよ。俺がそう伝えると、側近たちが駆け寄ってきた。
「アスタ、ちょっと来い! 俺らが忠誠の儀を教えてやる。」
「そうね。私の剣を使って。」
「主の側近としての、心構えも教えてやるよ。」
ーー
アスタが俺の前に跪き、そして剣を差し出した。
「私アスタは、アース・サンドール様への忠誠をここに誓います。」
俺は忠誠の儀の作法通り、差し出された剣をアスタの首元にあてる。
「私、アース・サンドールは、アスタあなたの忠誠を確と受け取ります。これからよろしくな、アスタ。」
「身命を賭してお仕えします。アース様。」
「命は大切にな?」
こうして俺の理想通り、四人の側近がそろった。
今はすでに、アスタは眠ってしまったため、俺たち四人だけで、俺の自室にいる。
それにしても、闇属性の使い方は誰が教えるんだ? けっこう珍しいはずだ。今度アスタの養子の件で、ジルに会うときに相談してみようかな。
……今更だけど、アスタを側近に加えたことに、側近たちは不満はないのだろうか? 俺は側近たちに聞いてみることにした。
「俺は不満はないぞ。なんというか、アスタとは同い年だが、弟のような存在だな。」
「私も不満はないよ。人数が増えれば楽しいしね。」
「俺もないですね、主。それに、俺の土人形とアスタの闇属性を合わせれば、最強の情報収集部隊になると思いますけどね?」
たしかに、これは恐ろしいことになりそうだ。ローウェルの土人形による広範囲の情報収集に、アスタの闇属性によるステルス情報取集……。敵に回したくはないな。
というか、側近たちがアスタのことを、好意的に受け止めてくれているようで安心した。側近同士の方が、かかわる機会が多そうだからな。それにしても……。
「お前ら、貴族らしくなくなってきたな。」
「「「誰のせいだよ!」」」
ーー
今日はジルから養子の話がまとまったから、王城に来てほしいとの手紙が来たので、王城へとやってきた。
「アスタ、緊張しているか?」
「は、はい……。まさか自分が、王城に入るなんて思ってもいませんでした。」
「王城には入るが、会うのはジルだ。あまり緊張しなくてもいいぞ?」
「は、はい。努力します。」
これは、緊張がほぐれなそうだな。まぁ、仕方がないか。俺も初めて来たときは緊張したからな。
ーー
「おう、アース、来たか。養子の話うまくまとまったぞ。」
「ありがとう、ジル。で、どうなった?」
ジルの話によると、リンハット男爵という人物が引き受けてくれたらしい。リンハット男爵は、王国の最南端に領地をもっていて、そこには、白い砂浜が見事なビーチがあり、観光業でにぎわっているそうだ。リンハット男爵夫妻は老齢だが、非常に穏やかで優しい方々だそうで、現在子育てが終わり、少し寂しいとおっしゃっているそうだ。そこでこの話をジルが提案したら、快く引き受けてくださったという流れらしい。
まぁ、とはいっても、俺の側近になるから領地には頻繁には帰れないだろうな。
俺はいい話だと思う。しかし、決めるのはアスタだ。俺はアスタに意見を聞いてみた。
「私も魅力的な話だと思います。ぜひお受けしたいです。」
アスタもうれしそうでよかった。俺たちがジルに礼を言うと、ジルはサイニードに、リンハット男爵夫妻をここに呼ぶように命じた。
サイニードは、ジルの側近で文官だったな。一度しっかりと話してみたい。というか、リンハット男爵夫妻、ここにきているのか? 俺はジルに尋ねた。
「あぁ、ぜひアスタに会いたいと。」
「なるほどな。わざわざ遠くから来てくださるなんて、本当にお優しい方々なんだな。」
すると、扉がノックされ、老齢のご夫婦が入ってきた。
「空間と時の女神の祝福を受け、類いまれなる出会いに感謝をすることをお許しください。お初にお目にかかります。ザザ・リンハットと申します。こちらは妻のコーラルです。この度は、魅力的なお話を提案していただきまして、誠にありがとうございました。」
なんとも気品にあふれたご夫妻だな。将来はこうなりたい姿ナンバーワンって感じだな。
「許します。お初にお目にかかります、サンドール公爵家三男、アース・サンドールと申します。この度は快くお受けくださって、本当にありがとうございました。」
「とんでもございません。私共にとっても、幸運なお話でしたから。特に妻が喜びまして」と、ザザ様が言うと、隣の女性が前に出た。
「はい。私共は、子が自立して久しいですからね。本当に寂しかったのですよ。……。あなたがアスタ君ね。近くに来てお顔をよく見せてちょうだい?」
アスタは一瞬ためらったようだが、俺が大丈夫だと背中を押すと、アスタは少しずつ、夫妻に近づいていった。
「まぁ、かわいらしいお顔ね。ねぇ、あなた?」
「そうだな、利発そうな子ではないか。私たちがしっかり守り、育てるからな。」
「あ、ありがとうございます。リン……ち、父上、は、母上。」
アスタが戸惑いながらそう言うと、ザザ様は大きな声で笑った。アスタは少し驚いたように、身を震わせた。
「っはははっ! 無理してそう呼ばなくてもいいんだよ。好きに呼びなさい。爺でもザザでもな。」
ザザ様がそういうと、アスタの体の緊張が少しほぐれた様だった。無理に呼び名を変えなくていいなんて、本当にお優しい方だな。
「わ、わかりました。おじい様、おばあ様。本当にありがとうございます……。」
ご夫妻がアスタを抱きしめ、そしてアスタは涙を流した。久しぶりに受ける、大人からの愛情なのだろう。
「よかったな、アスタ。ジルも、ありがとな。」
「あぁ」と言いながら、ジルも涙を目に浮かべていた。
そうだ、闇属性の指導者の相談をジルにすると決めていたんだったな。
「ジル、悪いが一つ相談があるんだが、いいか?」
俺がそういうと、ジルは頷いた。
「アスタに闇属性を教えられる人に、あてはあるか? あるなら紹介してほしい。」
「そうだな……。そこにいるミントが闇属性だが、ミントは人に教えることができるほど口がうまくないからな。あまりしゃべる方でもないし……。よし、影に預けようか。」
「影って、王族直属のあの「影」か?」
「そうだ。王国を陰から支える、諜報や暗殺を専門とする部隊だ。」
暗殺……。俺が考え込んだのが、わかったのかジルがフォローを入れてくれた。
「何もアスタに暗殺術を仕込む必要はない。影には、闇属性の使い手が多く在籍しているから、その使い方、主に情報取集だな。あとは自衛の手段の教えを受ければ充分だろ?」
なるほどな、それならば影にお願いした方がよさそうだな。アスタにも聞いてみると、アスタも了承した。
「ジル、お願いしてもいいか?」
「任せておけ。しばらくは王城に詰めることになるだろう。」
結構日数が必要そうだな。定期的に、アスタの様子を見に来ようか。
ーー
帰り際にリンハット夫婦が、「アスタ君、近いうちに私たちの領にも遊びに来てね。待っているから。」、「いつでも帰ってきていいからな。」と二人でアスタに声をかけた。
「ありがとうございます。必ず参ります」、アスタは笑顔でリンハット夫婦を見送った。
お二人との別れが済むと、いよいよアスタともしばしの別れの時間が来た。せっかく、側近になってくれたのにこんなにすぐに離れ離れになるなんて……。ただアスタが強くなりたいと望むなら、俺は笑顔で見送ろう。
「じゃあ、アスタ。頑張ってこい!」
「はい。必ず強くなって、あなたのもとへ戻ります。」
第四章 入学準備編
「アース、あらゆる方面でお前の身を固める必要がある。」
「最低の下種野郎だな。」
「お前が殺したのか!!」
「き、貴様!!!!」
「クソ、俺に回復魔法が使えたら……。」
「何!! 俺の美術、どうすればいいんだ?」
「お前、俺の絵を見て笑ったな?」
戦闘にテストに忙しい日々の開幕!! ぜひお楽しみに。明後日からスタート予定。




