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「ようやくすべて植え終わりましたね、皆さんお疲れさまでした。」、俺の一言で、本日の作業が終了した。
「では、皆さん。お庭にお茶を用意しておりま……。まぁ、皆さん。泥だらけですね。すぐに湯あみの準備をさせますわ。殿下方はどうされます。」
母上の問いかけを受けて、ジルは、湯あみの準備をお願いした。
ーー
はー、さっぱりしたな! 久しぶりの土いじりは懐かしいものがあったな。いまは、湯あみ後で、全員で庭にて軽食をとっている。
「お兄ちゃんたちの剣かっこいいね!」と、子供たちが駆け寄ってきた。
「おーこれか?」
「うん! 特にアースお兄ちゃんの剣がかっこいい! キラキラしてる!」と、一人の男の子が目を輝かせて言ってきた。
おー、みんなわかってるな! そうだろう、かっこいいだろう? 俺はこの剣は、魔刀という名前だと説明した。
「魔刀……? 聞いたことない!」
確かに、今は俺しか持ってないからな(笑) 子供たちが不思議な顔をするのも、当然のことだろう。
「触ってみてもいい?」と、一人の女の子が言ってきた。
まあ、触るくらいなら危険はないか。俺は振り回さないようにと注意してから、魔刀を子供たちに渡した。そうすると、子どもたちは楽しそうに魔刀を触りだした。
「お前は触らなくていいのか、アスタ?」
「わ、私は……。」と、アスタは下を向きながら答えた。
俺が、遠慮しなくていいというと、恥ずかしそうにしながら、魔刀を触りだした。アスタという子は、子供たちのリーダーである。非常に優しくて、礼儀正しい。
俺がそんなことを考えていると、衝撃の光景が目に飛び込んできた。
は? アスタが持ったとたん、わずかに魔刀が光ったぞ。これは、魔力反応? いや、アスタは孤児だ。貴族にしか魔力はないはずだ。ということは……。
これは……、確かめる前に人払いをした方がよさそうだな。俺は父上に人払いをするように頼んだ。父上は最初、理由を尋ねてきたが、俺が必死に頼むと、人払いを命じてくれた。
父上の命令によって、使用人たちが素早く出ていく、子供たちもだ。
人払いが済み、俺は本題を切り出した。
「先に、父上と殿下に確認します。孤児が貴族である可能性はありますか?」
「ないとは言えない。愛人や妾の子である場合がそれにあたるな。」と、父上が言いにくそうに答える。
「俺もそう思う。あまり聞いたことはないがな……。」、ジルも同じく、言いにくそうに答えた。
なるほどな。俺は、先ほどアスタが魔刀を持った時に、わずかに魔刀が光ったこと。そして、魔刀は属性を付与することができ、属性付与ができない人が触っても、その人の魔力に魔刀は、僅かに反応することを説明した。
「ということは、アスタは……。」
「そうです。貴族の子である可能性がありますね……。」
……。
「たしかに、アスタはほかの子と違って口調も丁寧ですし、落ち着いていますよね。それに、他の子たちよりも容姿が整っているような気がします。」と、キースが納得の表情で言った。他の側近たちも心当たりがあるらしく、賛同してくれた。
「アスタの容姿と言えば、あの茶髪に灰色の目という組み合わせ、どこかで見たような気がするが……。」と、ジルが首をかしげながら言った。俺は、ジルに先を促したがどうにも思い出せないらしい。俺は父上たちに、ジルの言った容姿に、心当たりがないか尋ねてみた。すると、二人には心当たりがあるらしい。
「フーラル様、あの方よね。」
「そうだな。容姿の特徴だけで言えば……シンカー伯爵だろうな。」
二人の回答を受けて、ジルも思い出したらいい。
「殿下がすぐに思い出せないのも無理はありません。なぜならあの家はいわゆる教会派の貴族ですからね。」と、父上がジルにフォローを入れた。
あー、なるほどな。国内は、国王派と教会派に大まかに二分される。現在は国王派が、圧倒的多数だ。しかし、第二王妃中心に一定数の教会派が存在する。第二王妃はナハト教の大元、サンテリア聖王国の姫だからである。
「彼には少し黒いうわさがありますからね、要注意人物です。」と、父上が厳しい顔つきで言った。
何? 黒いうわさだと? 俺は父上に先を促した。
「何やら、ルーン石を使って、ぼろもうけしているとかしていないとか。彼は証拠を隠すのがうまくてね、なかなか尻尾を出さないんだ。ただ、まだ確定ではないからね。今考えるべきことは、アスタのことをどうするかだな。」
とすると、シンカー伯爵に知られると、まずいか? 知られれば、何か仕掛けてくるかもしれないな。それならば、きっちりと清算する必要がありそうだな。
アスタなら、何か知っているかもしれないな。彼に、話を聞いてみようか。
ーー
「アスタ、急に呼び出してすまない。なにも、起こるとかではないから気を楽にして聞いてほしい」、俺はできるだけ優しい口調で語りかけ、そしてアスタに、さきほどの魔刀が僅かに光り、アスタが、貴族の子のである可能性があることを伝えた。
「私が貴族の子供ですか……。うーん、どうでしょう」と、アスタは首をかしげてしまった。何も心当たりがないのだろうか? もう少し詳しく聞いてみるか。
「何か覚えていることはない? 例えばその丁寧な口調とか、思い出したくないかもしれないけどお母さまのこととか。」
「口調は母に散々注意されてきました。丁寧な言葉で話すようにと。その母は、今私は七歳ですが、五歳の時に亡くなりました。それから、孤児になりました。あとは、母はこの屋敷の女性の皆さんが着ているような服を大事そうに持っていました。そして、ほとんど記憶にはないですが、小さい頃は大きな家に住んでいたような気がします」と、アスタは何とか思い出しながら語ってくれた。
アスタは俺たちと同い年なのか。それに、母君が大事そうに持っていた服って、メイド服だよな? そして、大きな家は屋敷のことで……そうするとほとんど決まりだな。
周りのみんなの顔を見ると……、俺と同じく、ほとんど確信したようだった。
ーー
この先は、どうするべきだろうか? 教会で属性判定を受けてもらったほうがいいのか? 俺は、魔力があるなら、使えるようにするべきだと思う。属性がわかり、サンドール家に保護されていると知られれば、ほぼ確実にシンカー伯爵とやらが手を出してくるだろう。アスタの身を守るには……。
「アスタに属性判定を受けてもらいましょう。もし属性がわかり、魔力があることが確定したら、私の側近として向かい入れます」、俺がそういうとジルが難色を示した。
「アース、姓のない子どもを側近に加えたら、周りから批判が出ると思うぞ。」
「確かにそうだな。「批判されても構いません」と言いたいところだが、俺だけでなく、サンドール公爵家や私の周りのものの評判にもかかわるからな。ジル、何か姓を得る方法はあるか? シンカー家に戻る以外の方法でな」、俺がそういうと、父上が話に入ってきた。
「アース、お前少し大人になったな?」
「ありがとうございます。この間、ある人に怒られたばかりなので……。」
「そ、そうか。お前でも叱られることがあるのだな。ぜひ一度お礼をしたいな。よくも私の父としての役目を奪ってくれたな、と。」
父上、今あなたの目の前にいます。事情を知る子供組の空気が重くなった。
「フーラル様、話が脱線しておりましてよ?」と、母上が空気を呼んだのかナイスフォローをいれてくれた。
「う、うむ、そうだな。姓を得る方法だと、どこかの家の養子になることだな。」
養子か……。信頼できるところがいいけどな……。俺がそうつぶやくと、ジルが名乗りを上げてくれた。
「それならば、王家が責任をもって紹介しよう。当てがあるんだ。」
俺たちはジルに任せることにして、早速アスタの属性判定をすることにした。
ーー
「というわけで、アスタ、アスタには属性判定を受けてもらいたい。いいか?」と俺は、アスタに聞いてみた。
「はい、私がお役に立てるのであれば、ぜひ」と、アスタは笑顔で答えてくれた。
ーー
俺たちが教会に着くと、「ようこそ、お越しくださいました。ジルベルト殿下、サンドール公爵様、そしてアース様」と、例の司教が出迎えてくれた。
「本日はどのようなご用件で? も、もしかしてアース様を教会に!」
「違う、次にそのような発言をしたら……。わかっているな?」と、ジルが低い声で司教を制した。
「も、申し訳ございませんでした……。」
おい司教、また不満が顔に出ているぞ。二度と会いたくなかったが、今回は仕方がない。
俺はここにいるアスタの、属性判定をお願いしたいと説明した。
「この子供のですか……? なぜ今の時期なのでしょうか?」
当然の疑問である。
「それは、この子供が病気にかかっており、六歳の時に属性判定を受けられなかったからだ。「今日はこの子供の病弱な両親の代理を、私たちが引き受けたというわけだ」と、ジルが事前に決めていた設定を口にした。司教は微妙な表情を浮かべながらも、儀式の間へと案内をした。
なんとか、怪しまれずに済んだかな? それにしても、ジルベルト殿下の圧がすごいな。ジルは怒ると本当に、怖いからな……。




