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~Sideジルベルト~
はー、今日は色々あったな。俺の側近たちは、今日の出来事やアースのことをどう受け止めているのだろうか? 俺は双子に今日のことを尋ねてみた。
「俺はまあ、勉強になりましたね。」
「俺は魔法剣が偽物で、残念でした。」
二人らしい答えだな。次に、アースのことをどう思うかを二人に聞いてみた。
「俺は早く戦ってみたいです。ただ、変な奴だなとは思います。」
「私も、変な方だと思います。同じ公爵家の人間だとは思えません。だけど……。」
「だけど嫌いじゃない、か?」
俺の問いかけに、ウォーザットは無言でうなずいた。そうだな、確かにあいつは変わってる。しかし、決して鼻につかない。あれだけの能力を持ちながら、決しておごらず、ひたむきに努力を続けている。
それに誰に対しても、平等で優しい。相手が孤児、でもな。それに側近に対しても、しっかり「ありがとう」と言っていたな。あいつは、側近や家の従者にでさえ、挨拶や礼をするそうだ。俺も、見習わなければならないな。
俺がそういうと、二人も賛同してくれた。
「はい。私は同じ公爵家の人間として、自分が恥ずかしくなりました。あの孤児たちに対して、見て見ぬふりをしようとしたのですから。」
「それは俺だって同じだ。ただ、我々上級貴族が、対処していかなければならない問題だな。俺たちもあいつに追いつけるようにがんばっていこうな。」
俺がそういうと、二人は「はい!」と、力強く返事をしてくれた。
ーー
「よし、今日は家庭菜園の日です! 張り切って土いじりをしましょう! こちらは、庭師のポム爺さんです。みんな、ポム爺さんのいうことをしっかり聞くように!」
俺がそういうと、子供たちは元気よく返事をしてくれた。子供たちはあれから、十分な食事や睡眠をとって、健康な体を取り戻しつつあった。
「では、最初に土を軟らかくしていこうかのぅ。こうして土を掘り返すんじゃ。ほれ、子供たちやってみぃ。」
子どもたちは元気よく返事をした後、早速土いじりを始めた。ようやく、年相応の姿を見ることができたな。
※ローウェル視点
「すっかりアースに懐いてるね、子供たち。」
「そうだな。公爵様、認めてくださってよかったな。」
と、ミラルとキースが嬉しそうに話している。
本当にそうだ。公爵様も「私も家庭菜園をしてみたい!」って、おしゃっていたもんな。本当にこの親子は似てらっしゃる。しかし、あの時は驚いたな。主が頭を下げるなんて……。
変わった人だと思っていたが、まさか孤児のために頭を下げるなんて……。俺がそういうと、二人も同意してくれた。
「本当にね。奴隷や孤児を見て、どうしても感情が抑えられなかったんだろうね。」
「確かに貴族としてはやってはいけない行動だった。しかし、人として俺は間違っていないと思う。俺たちがしっかり、支えないとな。」
二人の言うとおりだ。主は決して人として間違ったことはしていないんだ。むしろ俺は、アース・サンドールを主に選んでよかったと確信している。俺たちで、主を支えていきたい。
ーー
うん? 何やら側近連中がこそこそ話してるな、サボらせないぞ!
「おーい、お前ら早くこっちに来て手伝え!」
三人は俺の呼びかけに答えて、すぐにこちらに向かってきた。すると、約一名から、サボり発言が飛び出した。
「主~、俺、みんなみたいに鍛えてないので、パスしたいんですけど?」
「お前は土人形で作業すればいい。」
「それってかなり疲れるんじゃ……。」
「さぁ、やりますか!」
と、俺はローウェルの嘆きを華麗にスルーして、作業開始を告げた。
ーー
「次は畝をつりますかのぅ。この鍬をもって、こうやって……。ほらやってみぃ。」
俺たちはポム爺に言われたとおりに、鍬を振り回していると、遠くから声が聞こえてきた。
「おーい、お前ら! やってるみたいだな。」
ジ、ジル? どうして、ここに? あの時ガチで怒られてから、少し気まずい。
「あー王子様だ!」、「かっこいい!」、「後ろのお兄ちゃんたちも、かっこいい!」と、子供達には大人気であった。
「おーお前ら!元気そうだな。 公爵様に聞いたんだよ。今日、畑づくりをするって。」
そ、そうなのか。気まずいから、あえて教えなかったのにな……。
「アース? 殿下に伝えていなかったのか? お前が自分で伝えるからって言ってなかったか?」
「キース! 少し、黙ってろ!」と、俺が叫ぶとジルから話があると呼ばれてしまった。
はー、また怒られるのかな。
ーー
※キース視点
「皆さん、畑仕事とはご苦労なことですね。」
「なるほど、こうやって鍛えているのか。」
「兄さんもあっちに行って、早く耕してきな?」
「お前、なんかバカにしているな?」
双子が、兄弟トークを繰り広げながら、俺たちの方へと近づいてきた。最初は仲良くなれるのか不安だったが、同じく主に苦労する側近同士ということで、最近はよく話すようになってきた。
「俺たちもまさか土いじりするなんて、昔の自分だったら考え付きもしませんでしたよ。」
「私もですね。魔物を討伐することはあっても、畑仕事は父が許してくれなかったでしょうね。」
「俺は、土人形をこんな風に使うなんて思ってもいませんでしたよ……。」
「皆さん苦労しているんですね……。」と、ウォーザットが同情の目を向けてきた。
「それはお互い様でしょう? 殿下は結構お忍びを?」
「はい、しますね。まかれないようにいつも気を張っています。それに兄さんは脳が筋肉でできているので、さらに大変です。」
……。確かに、一心不乱に鍬を振っているようだ。最近仲良くなってきたというのは、ウォーザットだけだと訂正しておこうか。
すると、「お宅ら、うちの主にお忍びなんて変な遊びを教えたからには、しっかり責任取ってくださいよ?」と、ローウェルが挑発的に問いかけた。
言い方はあれだが、俺も同意するな。アースが窓で気ままに移動したら、たまったものではないからな。
「それは、そちらで対応してください。」
「むしろ、二人で出かけるのでないですか? アースは、空間属性ですから。」と、ミラルが不安げな声色でつぶやいた。
……。俺たちは何も言い返せずにそのまま、一心不乱に鍬を振り続けるオーサックを眺めた。
ーー
「アース、なぜ俺に伝えなかった?」
と、少し怒気を混ぜてジルが聞いてきた。
「いやー忘れてて、すまない。」
「へー。」
「な、なんだよ!」
「いや、別に。ただ、俺に会うのが気まずいのかと思ってさ。」
そ、それは……。はぁー、降参だ。正直に言うと、ジルに怒られてからどういう顔をして会えばいいかわからなかったんだよ! 俺が白状すると、ジルは笑った。
「やっぱり、そういうことか。それは、今回は、俺がそっち側だったってだけの話だ。」
ん? どういうことだ? 俺が不思議に思っていると、ジルが言葉を続けた。
「次に俺が間違えたときは、お前が俺を諫めてくれ。それだけの話だ。」
なるほどな、そういうことか。
「あぁ、わかった。泣かす勢いで止めてやる。」
「それは楽しみだな。よし、この話はおしまいだ。いいな?」
「あぁ、面倒をかけたな。」
本当にいい奴だな。
ーー
俺たちが戻ると、オーサックとウォーザットが鍬を振っている様子が見えた。俺たちが双子に問いかけると、ウォーザットは、「私は半ば無理やり押し付けられて……。」と、諦めたような口調で言った。
「俺はアースがこうやって鍛えているのかと思って、鍬をふるっているんだ。」
オーサックは相変わらずの脳筋で、逆に安心できるな。側近同士仲がよさそうで何よりである。
「それで、どこまで進んだんだ?」と、俺が尋ねるとどうやら、後は種の苗を植えるだけらしい。
俺とジルも参加しようとすると、二人の人影が現れた。
「まぁ、みんな泥だらけね。」
「みんな、楽しそうだな。いらっしゃいませ、殿下。」
現れたのは、父上と母上だった。
「あぁ、世話になってるぞ。」
「まぁ、殿下。今度王妃様主催の茶会パーティーに出席されると聞きましたわ。御婦人方が大変喜んでおられましたわ。私も大変、楽しみにしておりますわ。」
「えぇ、母上が是非にとおっしゃられたので。」
流石ジルだな。お母さま方に大変人気なようだ。母上も、ジルのファンだったのか、知らなかった。
(「マダムキラー(小声)」)
俺が小声でつぶやくと、ジルが笑顔でこちらを向いていた。は? 今の声量は絶対聞こえないはずだぞ!
「アース、何か言ったか? そうか、お前も参加したいのか! 母上にお前の招待状を手配するように頼んでおこう。」
まずい、聞こえたようだ。すぐに訂正しないと。「はー? 言ってな……」、俺の言葉を遮って反応したのは母上だった。
「まぁ、アース! 参加したいのなら早く言ってくれればよかったのに! 母様もうれしいわ!」
そんなにうれしい顔をされたら、否定なんかできないじゃないか……。
「えぇ、喜んで参加させていただきます……」、俺は貴族スマイルでこう答えるしか、道はなかった。
お母様方の茶会で何をしろというんだ。ジルめ、色々込めた仕返しだな。俺も何か仕返しを考えとこ、ジルの肖像画でも送り付けるか。
「さぁ、皆さん早く植えましょう!」、ジルの一声でみんなが動き出す。




