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11


ジルの案内のもと、俺たちは人気のない裏路地を目指していた。あの店にあるものは、なんだろう? 俺がジルに尋ねようとした瞬間、角から何かが飛び出してきた。




「お下がりください!」と、護衛騎士たちが一斉に剣を抜き、前へと出る。






な、なんだ? 子供か? だけど、平民にしても、やけに薄汚れて、そして痩せているな。



すると、飛び出してきた子供が泣き出した。





「お前ら剣を収めろ、相手は子供だ。怖がっている。」と、俺が言うと、最初は側近たちは拒否した。しかし俺が再度頼むと、キースとミラルは、渋々剣を収めた。




ジルが俺に続いて、剣を収めるように言うと、双子も剣を収めたようだ。





側近たちが剣を収めた直後、飛び出してきた子供よりも、大きな子供が駆けつけてきた。





「も、申し訳ございませんでした! ど、どうか私の首だけで許してください! 他の奴らは勘弁してください、貴族様!」




貴族とバレているな。まぁ剣を抜いたし、俺たちの間に主従関係があったもんな。





「謝らなくていいよ。それに、誰も咎めるつもりはないよ。」と、俺はできるだけ優しい口調で話しかけた。




「ほ、本当ですか……?」



「うん。」


「あ、ありがとうございます。」



「いえいえ。俺も前を見ていなかったしね、お互い様だよ。」




すると一人の女の子が近づいてきて、



「リーダー! マルクが倒れた!」と、慌てて言った。




「わかった、今行く。申し訳ございません、仲間が倒れたようです。行ってもよろしいでしょうか。」




後ろの方に数人子供がいて、そのうちの一人が倒れたようだ。



「俺たちも行ってもいいか? 何か力になれるかもしれない。決して危害は加えないことを約束する。」




「「「アース(主)!」」」




「すまん、みんな。見過ごすことができない。ジルたちは先に帰ってくれ。送ってやれなくてすまん。」と、俺が平謝りをした。




すると、



「この国の王族として、見届ける義務がある。」



といって、ジルたちも残った。 まぁ、ジルならそういうだろうな。




ジルが王族だと分かり、子供たちは、口をパクパクさせて、身震いしていたが、ジルはなんちゃって王子だから大丈夫だと伝えた。そうすると、「お前はなんちゃって公爵だろ!」と、返された。まったく、失礼な話である。










ーー











俺たちが子供たちの後についていくと、そこには、ガリガリに痩せている男の子が倒れていた。




「ローウェル、病気か?」



「いいえ、これは空腹や栄養失調で倒れたのでしょう。」



こんな小さな子が、空腹に栄養失調か……。心が締め付けられるようだ。周りの子供たちも、立っていることが不思議なくらい、瘦せている。



「じゃあ、何か食べ物を……。キース、近くの屋台で何か食べ物を……。」と俺が指示する途中で、「アース様、それはできません」と、断られてしまった。




「なぜだ?」



「それは……。」と、キースが言い淀んでいると、ジルから説明が入った。




「アース、孤児たちに対して一時の施しをするよりは、やらない方がましだ。今を凌いだとしても、この先どうする? お前が一生こいつらの面倒を見るのか?」




ジルたちの言うとおりだ、頭ではわかっている。しかし……。




「じゃあお前ら全員、ここで見て見ぬふりをしろというのか?」



俺がそういうと、全員が下を向いて俯いた。




自分がしようとしていることはいけないことだとわかっている。しかし、先程の奴隷といいい、この孤児といい、もう我慢をすることはできない。



「そこのリーダー、お前の仲間は全員で何人いる?」




「ご、五人です……。」




「ジル、一時の施しじゃなければいいか?」




「おまえ、何を……。」




俺がミラルに向き直って、質問をした。


「ミラル、俺は今日買った苗や種を植えるための畑をつくる予定だ。その作業や世話に係る人数はどれくらいだ?」





「作業は、人が多ければ多いほどいいです。世話自体は水撒きや雑草抜きくらいだから、五人ほどいれば充分かと。」





「五人ほどだな? お前たち、サンドール公爵家のアース家庭菜園場で働く気はあるか? 三食家付きで、給料も出すぞ。」




俺は、子供たちにそう語りかけた。しかし、側近たちからの非難の声が上がった。



「アース様! 勝手に決められては、困ります!」




「みんなすまない。俺は今わがままを言っていることはわかっている。しかし、手が届くなら助けてあげたい。偽善だと罵ってくれても構わない。父上には俺から説明する。だから、この通りだ」と言いながら、俺は皆に頭を下げる。





これは貴族の、公爵家の者として、最もやってはいけないことだと、理解はしている。しかし、先程自分の首を差し出してまで仲間を守ろうとした、このリーダーと呼ばれる男の子には手を差し伸べたかった。偽善は十分承知だ。







「アース様、頭をお上げください!」、「そうです、孤児のために頭を下げるべきではありません。」、「主、それはいけません!」と、側近たちが各々、俺を非難してくる。



だが、俺は……。俺が頭を下げ続けていると、ジルが低い声で言葉を発した。






「……。アース、貴族が、公爵家ともあろう者が簡単に頭を下げるとは感心しないな。頭を上げろ。」





「は、はい……。」






ジルはずるいな。いつもはバカをやれる友人なのに、こういう時はしっかり叱ってくる。ジルが、貴族として、王族としての矜持をしっかりと持っていることも知っている。






「アース、もう一度言う。簡単に頭を下げるな。お前が簡単に頭を垂れれば、お前だけではなく、周りの者たちも下に見られるぞ。俺はそれを望まない。わかったな?」





「は、はい……。申し訳ございませんでした。」



俺は謝ることしかできなかった。





「謝る相手が違うだろう?」





「キース、ミラル、ローウェル、すまなかった」、俺は側近たちに謝罪をした。




俺が謝ると、側近たちはふっと笑った。




「いいですよ。私もアース様には助けられましたしね。」


「まぁ、主らしいと言えば主らしいですけどね。」




「アース様、私もあなたに助けられたうちの一人です。ですので、今回は許します。ただ、あなたの周りにいる人はあなたが思っている以上に、あなたのことを大切に思っています。そのことをぜひ、覚えておいてください。」





「あぁ、キース。みんな、ありがとう。」



俺はいい友人、いい部下に恵まれたな。






「さて、お前ら、どうする? 今、こいつをみんなで叱りつけたが、いいやつだし、信頼もできる。後は、お前らが選べ」と、ジルが子供たちに問いかける。






「私は行きたいです。みんなもいいか?」と、リーダーと呼ばれていた男の子が、子供たちに賛同を求めた。






そうすると、子どもたち全員が頷いた。








「よし、決まりだな。あとはお前に任せるぞ、アース。」



「あぁ、ありがとう。その倒れている子は俺が抱えるよ。」




「いえ、さすがにそこまではさせられません。私がリーダーとして、責任をもって運びます。」




「そうか。なら、頼むな。ジル、ここで解散でいいか?」



「あぁ、いいぞ。」




俺はジルの部屋へと続く、大窓を出してジルたちを見送った。その際、子どもたちは、窓を呆然と見つめていた。まあ、最初に窓を見たら、みんなそういう風な反応になるけどだな。








「それじゃあ、みんな、帰ろうか。」



俺は屋敷へと続く大窓を出して、帰路に就いた。


 

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