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6


ミラルがまっすぐ向かってくる。俺が魔導士でもあることを知っている者は、大概距離を詰めてくる。俺の魔力量での魔法攻撃を、警戒してのことだろう。ただの、騎士と魔導士の両刀使いならば、これは正解である。




ミラルには俺が魔導士の訓練も積んでいるとは話してはいないが、魔法を使った攻撃は見せている。だから、魔法をサブに使う騎士とでも思っているのだろう。




『氷柱雨 』

『 小窓』






俺は前と俺から見て右から小窓を使って、二方向からの攻撃を展開した。相手の行動としては、防御、迎撃、回避が考えられる。




まず防御だが、先程の首元集中の防御でほとんど魔力を使い切っているであろうから、除外。迎撃は、一刻も早く距離を詰めて魔法攻撃を封じたいであろうし、何より氷柱の数が多い、よって除外。



したがって、残る回避一択である。回避は上、後ろ、左斜め前が考えられるが、後ろは前述のとおり、早く距離を詰めたいだろうから無し、上も跳んだところで氷柱の攻撃は続くため、跳んだ後に攻撃が当たってしまうから除外。



以上から、左斜め前に回避、これ一択だな。タイミングを合わせて左斜め前に大窓を設置、つなげるのははるか後方地点。





よし、今だ!








『大窓』



(な、進行方向に窓が!)




ミラルがはるか後方に移動した。これは、ゲームでいうノックバックってやつだな。




俺の窓には、対象が自分自身で入るか、または何らかの方法で窓へと放り込む必要がある。だから、ただ窓を出すだけでは、ノックバックできない。進行方向を予測して、罠のような感じで窓を展開して、窓に自分から入るように仕向ける必要がある。




(これは……距離をあけられた! しかし、また距離を詰めればいいだけです!)




ミラルが再び距離を詰めてきた。それは相手が、ちょっと、魔法を使える騎士ならば正解だ。




しかし、俺は空間属性持ちのちょっと魔法を使える騎士ではなくて、空間属性を扱える、騎士であり、魔導士でもあるんだよ。


俺は刀を収めた。




「な、刀を収めただと! 本魔導士でもあるのですか、アース様は!」




『氷の女王に希う、我に御身の御力の一端を授け給え、




(まずい急いで距離を詰めなければ!)




 

水属性の身体強化のスピードはほかの属性と比べると遅い。これほどの距離が空いた時点で、もう俺の勝ちは決まっている。




白銀世(界)』



俺が上級魔法を唱え終わる前に、父上からコールが入った。



「それまでだ! 勝者アース・サンドール。異論はあるか、ミラル譲?」



父上がミラル様にそう尋ねると、悔しそうにミラル様が項垂れた。




「いいえ、上級魔法を打開するすべは私にはありませんでした……。しかし、私はまだ負けるわけには……。」




すると、



「もうよい、ミラル。」



ダンカ―辺境伯様が、ミラル様を制した。






「でも、私はまだ! 勝つまで続け……。」



「私は力を示せといっただけで、勝てとは言っていないだろう?」



「た、たしかに、おっしゃってはいませんが……。それなら、私はどうなるのでしょうか?」



ミラルがそういうと、辺境伯はミラルに頭を下げた。


「ミラル……。お前の力、そして覚悟、確と見せてもらったぞ! お前に、剣を握ることを許す。今まで、すまなかった。」





ダンカ―辺境伯の言葉を聞いて、ミラル様は涙を浮かべた。




「あぁ。だが、剣を握るのは、この地でではない。」




「……。お父様それはどういう……。」



そうすると、ダンカ―辺境伯が俺の方を向いて頭を下げた。




『アース・サンドール様、私の娘をあなたの側近として、連れて行ってはいただけないでしょうか? そしてミラル、お前はアース様に返さなければならない御恩があるだろう? 受けた恩を返さないのは、ダンカ―辺境伯家として恥ずべきことだ。それにお前はこの地を出て、もっと広い世界を見るべきだ。そして、見聞を広めてきなさい。どうでしょうか、アース様?』




そこまで言われたら断るわけにはいかない。それに、ミラルは個人的に好感が持てる方だ。是非、俺の側近になってほしい。



「私に依存はありません。むしろ、ミラル様なら大歓迎です。父上、よろしいですよね?」



俺がそう聞くと父上は、俺の好きにしていいと言ってくれた。




「ありがとうございます。キース、この先同僚となる人だ。お前もいいか?」




「私はアース様が決めたことならば依存はないですが、個人的に訓練相手が増えることは、非常にうれしいことであると考えます。」




「わかった。ダンカ―辺境伯様、その話お受けいたします。」



「ありがとうございます、アース様。ミラル、行ってきなさい。たまには帰ってくるのだぞ。」



ミラル様は、ダンカ―辺境伯に頭を下げて、お礼を述べた。


そして、ミラルが私の前に跪き、そして剣を差し出した。忠誠の儀である。




「私ミラル・ダンカ―は、アース・サンドール様への忠誠をここに誓います。どうかあなたに、この剣を受け取っていただきたい。」




俺は忠誠の儀の作法通り、差し出された剣をミラルの首元にあてる。




「私、アース・サンドールは、ミラル・ダンカ―あなたの忠誠を確と受け取ります。これからよろしくな、ミラル。」






「はい、こちらこそよろしくお願いいたします。アース様。」










ーー









ミラルはその日のうちに、サンドール家に俺の側近としてやってきた。帰りはもちろん、俺の窓で帰ってきたから、ストレスフリーである。



「改めて、今日からよろしくな、ミラル。知っていると思うが、こいつは俺の護衛騎士のキース・ツーベルクだ。」




ミラルとキースが挨拶を交わした。これから互いに背中を預けて戦うであろうから、是非仲良くなってほしい。



そして俺は、キースと同じように、俺たちだけの時は敬語いらないことをお願いした。だって、側近同士は呼び捨てなのに、俺だけ様付けとか悲しいだろ?



ミラルは、俺がそれを望むなら構わないと言ってくれた。キースもミラルも理解があって助かるな。



それにしても、ミラルは屋敷と雰囲気が全然違うな。ボーイッシュというか大人びているる感じがする。俺は気になって、ミラルに尋ねてみた。



「お陰様で迷いが晴れたからね、いつもはこんな感じだよ。」



なるほど、ミラルは素だとこんな感じなのか。



「同い年っていうか、年上に見えるな。ミラル姉さん、とでも呼ぶか? なぁ、キース?」



「年上に見えるってことは、老けてるってことか?」




は? こいつは、アホだな。キースは、女性関係が、本当にダメだな……。俺がキースにアホだと伝えると、ものすごい剣幕で突っ込まれた。



「キース、ミラルの顔を見ても、自分がアホでないと言い切れるか?」




そこには凍えるような視線を、キースに送るミラルの姿があった。







「……、すみませんでした。」

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