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次は美術の時間である。
き、来たな美術……。ジルの前で、俺の絵を披露するのは嫌だな……。急用を思い出したことにして、今日は帰るか。
「ジ、ジル、急用を思い出したから今日は……。」
俺がそういうと、ジルは首をかしげた。
「急用だと? さっきサンドール公爵から今日一日お前は暇だと聞いているぞ?」
あ、あの親ばか。また余計なことを……。
「あ、あぁ。すまん。俺の勘違いだったようだ。」
「そうか……。何やらお前には、美術の才能がありそうだな。」
こ、こいつ。俺が帰りたがっていることに、気づいたうえで言ってるな。本当に鋭い奴だ。そして、いい性格をしている。
「じゃあ、美術の先生を紹介するな。ゴッホ―ラ先生だ。」
「空間と時の女神の祝福を受け、類いまれなる出会いに感謝をすることをお許しください。お初にお目にかかります。サンドール公爵家三男、アース・サンドールです。本日は、よろしくお願いいたします。」
「よろしくお願いしますじゃ。ゴッホ―ラ・サインズじゃ。ゴッホ―ラと呼んでほしいのう。」
なるほど、いかにも巨匠って感じの見た目だな。
「では今日は、人物画を書いてもらう予定じゃ。殿下とサンドール殿が、互いに互いの姿をかき合う形でよいかの?」
まずい、俺が一番苦手としている人物の描写だ。俺の素晴らしい画力で、王族を描いたら不敬罪になりそうだが、相手はジルだから大丈夫か。
「えぇ、わかりました。ゴッホ―ラ先生。アース、かっこよく描いてくれよ?」
「あぁ、もちろん。見たままを描くよ。」
ーー
俺たちが書き終わると、早速ジルが声をかけてきた。
「じゃ先に俺から見せるな。―― どうだ?」
わー、これはすごい。まるで写真みたいだな。改めてみても、俺は美少年だな。というか、ジルのやつ、本当に何でもできるな。
「流石ですじゃ、殿下。これなら、貴族のたしなみとして、申し分ないじゃろ。」
「ありがとうございます。先生の教えの賜物ですよ。じゃあ、アースお前の絵を見せてみろ。」
「そうじゃな。公爵家の実力楽しみにしておるぞ。」
そこまで期待されたら、堂々と出すしかないな。
「どうぞ、作品名『ジルベルト・アーキウェル』です。」
……。
うん? 二人の目が点になっているぞ? ちゃんと、見たままを書いたんだがな?
すると、突然ジルが立ち上がった。
「誰だ、これは! 俺はこんなに、不細工ではない! それに俺の首はどこに消えた? お前は俺が将来、斬首刑になることを望んでいるのか?」
「ま、まさか。そんなことはございません。この目元なんか、殿下が半目になって俺を見る時に、そっくりだと思いますけど……。」
「急な丁寧語やめろ! どちらにしても全く似ていない!」
そんな俺に対して、先生は目を泳がせながらほめてくれた。
「こ、これは私の感性では計り知れない才能をお持ちのようじゃの……。」
先生が苦しそうな顔をしながら、言葉をひねり出してくれているようだ。……そこまでして、褒めなくてもいいんですよ?
「先生、無理にほめなくていいですよ。これは酷いです。アース、お前が美術に自信がなさそうだと思ったから、笑ってやろうと思ったが、自分の顔をここまでひどく描かれると、殺意しか湧かんな。」
「心を込めて描いたのですが……。」
「あぁ、そうだったのか。だが金輪際、俺の顔を描くことは禁止にする。お前はある意味、画伯だな。」
や、やめろー! 前世で俺の絵を見たある友人が俺のことを「画伯」と呼びだし、一定期間いじられたんだぞ! その苦い思い出を呼び起こすなー!
ーー
今日は俺の家で、ジルと一緒に訓練を行う日である。
「アース、そろそろジルベルト殿下が到着されるころだ。お出迎えの準備を。」
俺は父上の指示に従って、ジルを迎える準備に取り掛かった。同年代との訓練は初めてだから、非常に楽しみだ。
ーー
馬車でやってきたジルは、最初に父上とあいさつを交わした。
「出迎えご苦労、サンドール公爵。」
「恐れ入ります。ジルベルト殿下。」
「ではさっそく、訓練場へ行こうか、アース。」
ーー
今日は、ヘンゲーナ先生とグートン先生が監督をしてくれることになっている。
「ジルベルト殿下、こちらが私の魔法の先生であるヘンゲーナ先生と、そしてこちらが剣術の先生のグートン先生です。」
「「お久しぶりでございます。ジルベルト殿下。」」
「あぁ。二人がアースの指南役だったのか。」
うん? 三人は知り合いなのだろうか? 双方、顔見知りな雰囲気を醸し出しているが……。
俺はジルに、先生たちのことを知っているのか、聞いてみた。
「無論だ、魔法師団のエースと護衛騎士団団長だからな。」
たしかに、この二人なら殿下と面識があったのも不思議ではない。それじゃあ、ジルも安心だろうな。
では早速、訓練に移ろうか。俺は騎士でも魔導士でも戦うことができるから、ジルの戦闘スタイルに合わせようか。
「殿下の、戦闘スタイルはどのようなものですか?」
俺がそういうと、ジルは半目になって
「アース、今はプライベートだ。言葉はいつも通りでいい。」
といってきた。
はー、わかったよ。お前は、そういうやつだよな。俺は肩をすくめて、頷いた。
「よし。俺は三属性(火光風)を賜っているから魔法を中心に、後は王族のたしなみとして剣術も習っている。」
「なるほど。俺と同じ、騎士、魔導士の両刀スタイルということだな。じゃあ、剣も魔法もありで戦うか?」
俺がそういうと、ジルは頷いた。
よし、自分がどれほどやれるのか、しっかり見極めるぞ!
ーー
グートン先生が立会人を務め、ヘンゲーナ先生が結界を張り、周りに被害が出ないようする役目を引き受けてくっれた。
「それでは始め!」
ジルの実力は全く分からない。しかし、何でもできるジルだ。王族としてもかなりの修練を積んでいるであろう。ここはバランスモードで行こう。
魔刀の属性は……。ジルは火属性を持っているから、水属性がいいな。
「いくぞ、アース!」
「おう、かかってこいジル!」
『凪げ 泡沫』
泡沫は水属性の魔刀だ。全体に水をまとっている。泡沫の能力【泡沫の誘い】は、周囲に大量の泡を展開し、泡を用いた幻影や神出鬼没な攻撃が可能である、というトリッキーなものである。泡は目くらましにも使うことができる。
俺が構えると、ジルが慌てて手を上げた。
「お、おい! それは何だ、アース!」
あー、やっぱりそうなるか。今は面倒くさいから、勝負が終わった後でいいか。
「後でな。」
俺がそういって、再び刀を構えると、ジルも仕方なさそうに剣を構えなおした。
「あ、あぁ、わかった。じゃあ、気を取り直していくぞ!」
「面白かった!」
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