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俺の氷龍とアイリーンの溶岩の花が空中でぶつかり合い、すさまじい蒸気を出しながら霧散した。


会場はすさまじい熱気と蒸気に包まれた。それによって、視界も悪くなってしまった。






まずいな、霧のせいでアイリーンの位置が捕捉できない。音を聞くにしても、会場からの声がうるさすぎて、聞き取ることができない。俺には、この蒸気を払うすべがないからな。ここは、アイリーンの攻撃に備えなければ……。




(私の『溶岩の花』と互角なんて、流石ですわね。この霧では、互いに位置を補足することができないですわ。それならば、範囲攻撃を仕掛けましょうか。うふふ、あなたの「あの姿」を想像するだけで私は……。)





『闇の女王に希う、我に御身の御力の一端を授け給え、願わくはその御力で我が願いを叶え給え、重万有力』









-

ーー










とりあえず、アイリーンの攻撃に備えて氷壁を展開して、水龍を上空に待機させておこうか。



『登水龍』

『氷壁』



俺が二つの魔法をセットし終わった瞬間に、体が地にたたきつけられた。と、同時に霧が晴れ、水龍も地面に打ち付けられ、そして氷壁も崩れ去った。




こ、これは……。闇の攻撃魔法か……、それも重力による攻撃か。闇魔法の攻撃魔法は、重力と引力である。周囲の重力を操作するタイプと、自分に引き寄せる引力タイプの二種類があるが、これは先天的に片方のどちらかの適性が与えられる。もちろん、二つ持ちや、アスタのようにどちらの適性のない者も一定数いる。アイリーンは、少なくとも重力の適性があるようだな。








「おほほほほほほ!!! 地面に打ち付けられるあなたを見ると快感が……、お待ちになって。アース様、その頬、血が出ているではありませんか!!」




アイリーンが高笑いと共に、意味不明の言葉を口走った。頬に血だと? まあ、急に地面に打ち付けられたから、体のいたるところに傷を負ったが……。このくらいの傷なら問題ないはずなのに、何をそんなに喜んでいるんだ?



それよりも、この重力はやばい。これは、上級魔法クラスだな。体が地面にめり込んでいく、このままでは体がつぶされてしまう……。俺が打開策を考えていると、アイリーンから衝撃の発言が飛び出した。





「やりましたわ!! ついに、私があの「傷だらけの王子」に傷をつけることができましたわ!!! ずーーーーと、あなたの……、あの戦いのような「傷だらけの姿」を見たいと思っておりましたのよ!!」












はーー? こいつ今、「傷だらけの王子」といったか? ついに傷をつけることができたって……。確か俺に最初に傷をつけた人が、俺と恋仲になれるとか何とかという噂があったよな? それで喜んで……、っていうか、俺の傷だらけの姿をずっと見たいと思っていただと? こいつ、やばい、サイコパス……。というかこんなイカれた考え方をする奴、噂や俺のあだ名を考えたやつにそっくり……。






お前かーーーーーーーーーーーーー!!!!!








こいつだったか、犯人は。前賢者の孫という権力や、地位も持ち合わせており、あの戦いを見ている可能性のある一年生の女子生徒だ。それにさっきの発言のイカれ具合……、確定だ。


くそっ、こんな近くにいたとは……。俺に無関心な態度を表では取りながら、裏ではこんなにもイカれていたとは……。決めた、復讐しよう。





『大窓』




俺は自分の真上に大窓を展開して、アイリーンの頭上へとつなげた。すると、「ぐえええええ!!」と、ご令嬢からはあるまじき声が聞こえてきた。




ようやく体が自由に動かせられるな。俺は、服に着いた土を払いながら立ち上がった。頭上からは、大窓によって確認できないが、紫色の光が降り注いでいるようだ。おそらく、重力を発生させているエネルギー体のような何かが上にあるのだろうな。それはそうだ、このレベルの上級魔法だ、打って終わりではなく、魔力を流し続けて制御するタイプだろう。これで他の魔法が使えたら、俺は狙われて終わりだったろうからな。



ということは、今アイリーンは魔法が使えない状態で、地面に張り付いているということだ。早く終わらせよう。


しかし、俺は頭上に窓があるおかげで平気だが、周囲にはいまだに強力な重力が存在している。このまま魔法を放っても、落とされるだろう。ということで俺は、窓めがけて魔法を放つことにした。




『登水龍』




『雷壁 多重』




俺の水龍が窓を通ってアイリーンにたどり着く寸前で、彼女は魔法を解除し、水に相性のいい雷の多重防御で威力を弱めた。しかし、多少のダメージは入ったようだった。




「最高ですわ!! このまま、あなたをもっと弱らせてさしあげますわ!!!」



「やかましい!! このサイコパス女め!! すぐに終わらせてやるからな!!」



『凪げ 泡沫 【泡沫の誘い】』


俺は泡を周囲に展開して、アイリーンの隙をつくろうとした。しかし、それはすぐに阻まれてしまった。




「それは先ほどの試合で、すでに見ましたわ!」

『嵐怒』


アイリーンの風魔法によって、俺の泡は吹き飛ばされてしまった。


くそっ、頭はイカれているが、魔導士としての実力は本物だ。もっと威力のある魔法か、意外な攻撃ではないと通用しないな。魔刀の能力でも、駄目そうだな。上級魔法も……、おそらく相性のいい上級魔法や合技で相殺されてしまうな……。いや、待てよ。溶岩か……。






俺は全属性と聞いて、思うことがあった。全属性が使えるイコール、すべての属性をまんべんなく使うことができるのか、とな。魔法は強くとも、それを使うのは人だ。例えば、とっさの時に反射的に使う魔法は、全属性をまんべんなく使うか? いや、そんなことはない。得意な属性や使い慣れたものを使うだろう。


そう、全属性が使えるといっても、本人の中で得手不得手などを含めた、属性の序列があるはずだ。現に、彼女には上級魔法が扱えない属性があるのだ。


俺は彼女の試合をできるだけ見ていて気付いたのだが、アイリーンは火と土をよく使うように思えた。実際、合技も土と火を合わせたものであるし、攻撃も土や火をよく使っている。おそらく、本日一回も登場していない水や光が、少なくとも上級魔法が使えない属性なのだろう。とすると、勝機はそこにある。




『登水龍』

『大窓』




俺は大窓を複数回だし分けて、水龍の軌道を読まれにくくさせながら、加えて時間をかけて攻撃を仕掛けた。



「また、その龍ですか……、もう飽きましたわ!」


『火の王に希う、我に御身の御力の一端を授け給え、願わくはその御力で我が願いを叶え給え、爆炎烈覇』



俺の水龍が、アイリーンの日の上級魔法で一瞬にして蒸発させられた。



そう、アイリーンは俺を完膚なきまでに叩きのめして、俺のズタボロな姿を見たがっているのだ。俺の水龍に対しても、わざわざ相性の悪い火魔法で、さらに上級魔法を使ってでも迎え撃った。セオリー通り、雷属性で迎え撃てばいいものを……。彼女はプライドが高い。そこを刺激してやれば……。




会場が再び、濃い霧につつまれた。ここだな……。




「アイリーン様、このままではいくらやっても私を倒せませんよ? そう、あなたの魔法ではね? いくら全属性を扱えるとは言っても、私には一歩届きませんね?」



俺は姿の見えないアイリーンに対して、語り掛けた。




「な、なんですって!! 私の力で、あなたを叩きのめして差し上げますわ!!!」




かかったな。



『水の女王に希う、我に御身の御力の一端を授け給え、



『嵐怒』



アイリーンの風魔法で、一気に霧が払われた。


「私の最大の魔法で叩きのめしますわ!! そう、あなたの空間属性でも対処しきれない規模でですわ!」



『咲き誇れ、溶岩の花よ 合技 大輪花』


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