表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

123/193

16


決勝戦開始まで、一時間のインターバルが設けられた。俺は控室で、ジルたちが運んできてくれた軽食をとっている。こういう時は、十秒でチャージできるゼリー飲料を飲みたいが、贅沢は言っていられない。俺には、再現不可だからだ。


それにしても、ジルたちは、俺が試合に勝ったことをほめるばかりで、俺の新魔法については何も話してこないな。そういえば、俺が龍を出したときに、会場中がどよめいた気がするが……。パニックはならなかったのだろうか? 俺は皆に聞いてみることにした。






「はーーーー? 大丈夫なわけがないだろう!! 龍が出た瞬間、観客たちは、パニックを起こしかけていたんだぞ。それを学園長が制してくださったんだよ。まったく、せっかく人が気を使って次の試合のために、怒るのを我慢していたのに全く……」と、ジルがあきれながら説明をしてくれた。



「まあいいじゃないか、ジル。これでアースは決勝戦に出られるんだ。勝てば問題ない、そうだろ、アース?」と、ハルが言ってくれた。



「そうだな。龍使いが準優勝だと、格好がつかないからな。しかし、相手は全属性を扱えるアイリーン様だ。俺も全力でいかなければならない。それに、もうこの次は試合がないから、魔力の温存も考えなくていいからな。めいっぱい戦えるぞ!」




俺がそういうと、全員がドン引きしたようだった。なぜ、皆は俺をそのような顔で見ているのだろうか?





するとジルがただ一言、「会場を壊すなよ」といった。


……なるほど、あんなでかい龍を出したにもかかわらず、俺がさらに全力で臨むといったから、次はどんな盛大な魔法が出るのかとみんな心配しているのか。しかし、みんな安心してくれ。俺の新魔法は、あれだけだからな。俺はそう言って、皆を安心させようとした。


だが、あまり信じてはもらえなかった……。俺って、そんなに信用ないか?






俺たちがそんな会話をしていると、係員が俺に、会場入りを告げにやってきた。


いよいよだな。俺は皆からの声援を受け、控室を後にしようとしたとき、ハルから耳打ちをされた。



「アース、これは友人としてのちょっとした助言だ。アイリーンは……。」











――










俺とアイリーンがバトルフィールドに登場すると、観客席から大歓声が聞こえていた。アイリーンは、初戦から人気だったものな。何しろ、前賢者の孫だからな。俺とは知名度が……、いや、俺も空間属性という知名度があるか?


それよりも、会場を破壊しないようにか……。そんなことをするつもりはないが、試合に集中すればリミッターが外れるかもしれない。一応、観客席に被害が出ないように結界が張られているらしいが、大丈夫かな? とりあえず、立会人のモール先生に確認してみようか。




「モール先生、会場の結界のレベルはどれくらいですか?」



モール先生は「こいつ何を言い出すんだ?」とでも言いたげな顔で、答えてくれた。




「それは、一年生が使う上級魔法を難なく抑え込めるレベルだな。」




なるほど、上級魔法までなら耐えられるということか。だが、一年生が使うか……、自分で言うのもなんだが、俺もそして、アイリーンもそのレベルをとうに超えているのではないか? これは最終戦だ、お互いに上級魔法を連発する可能性だってある。その場合は、結界が持たない可能性があるんじゃないか? 一応、提案してみるか。




「モール先生、結界の強化を要求します。そのほうがいいですよね、アイリ―ン様?」



俺がアイリーンに話を振ると、アイリーンは何とも言えない愉悦そうな顔を浮かべて答えた。



「ええ、そうですわね。あなた相手なら私、加減ができそうにありませんからね!!」



俺相手なら、加減ができない? いったい、どういうことだろうか? というか、話したのって、これが初めてじゃないか? 何とも物騒な初会話である。


そんな俺たちの会話に、俺たちの実力を知るモール先生が血相を変え、すぐに結界の強化に取り掛かった。強化には、三十分ほどかかるらしく、試合開始の延長が通達された。会場からはどよめき声が聞こえてきて、何が行われるのかと全員が社交をやめ、自分たちの陣地へ帰っていったようだ。



こんなにも、大事にするつもりはなかったのにな……。














――







いよいよ試合の開始時間になった。


『それでは両者、準備はいいな? 始め!!』


モール先生の合図で、俺たちは同時に魔杖を構えた。






『雷の帝王に希う、我に御身の御力の一端を授け給え、



いきなり雷の上空魔法の詠唱かよ!! ふつう上級魔法を放つときには、事前にスキをつくることがセオリーだ。それはそうだよな、詠唱が長いからその間に攻撃されてしまう。仲間の援護があれば別だが、今は一対一だ。

常軌を逸しているが、アイリーンはそれでも対処が可能というわけか? ずいぶんな自信家だな。しかも、ジーマンとの戦いで、俺が雷属性に弱いことをしっかりと認識している。ここで、攻撃をしてもいいが、それだと負けた気がするから嫌だな。ここは窓での反撃と、保険をかけておこう。



『氷鎧』



俺は念のため、氷の鎧を纏って防御力を上げておいた。まあ、上級魔法相手には、気休め程度だけどな。




願わくはその御力で我が願いを叶え給え、轟雷降誕』




アイリーンの詠唱が終わると同時に、激しく放電を行いながら雷が一直線に、俺の方へと向かってきた。



『大窓』



俺は大窓を出し、アイリーンの後方へとつなげた。自分の魔法でリタイアしてくれればいいが……、そんなに甘い相手ではないかな。



『土壁』


案の定アイリーンは、雷属性に強い、土属性の壁を展開した。



これが全属性の強みだよな。相手の苦手な属性で攻撃する一方で、相手からの攻撃は相性のいい属性で防御なり迎撃ができる。何とも、うらやましいよな。しかし、俺の属性も引けを取っていないはずだ!



「最高ですわ、アース様!! やはり、そこら辺の有象無象とは違いますわね!!」



攻防がひと段落すると、アイリーンが話しかけてきた。急にどうしたのだろうか? 今まで俺に対しては、興味ありませんという態度を貫いていたのにな……。



「それは光栄ですね。では、次は俺の番です!」



『登氷龍』



俺はアイリーンめがけて、氷龍を繰り出した。無論、この距離とスピードでは上級魔法による迎撃はできない。ただの壁によるガードも貫通するぞ。どうする、前賢者の孫!!




『合技 溶岩の花』



な! 俺の氷龍に対してアイリーンが放ったのは、花の形をした溶岩だった。


溶岩だと……、溶という属性はないはずだ。アイリーンは『合技』と言った、つまり魔法を組み合わせたということだ。溶岩ということは、火と土の魔法を組み合わせたのか。これは……、アイリーンはそういう方面の天才だったか……。





俺は試合前に、アイリーンの情報をハルから聞いていた。その内容は、「アイリーンには、上級魔法を使えない属性がある」というものだった。前賢者は、全属性かつすべての魔法を扱える人物であった。アイリーンも、前属性の持ち主だったため、俺は当然アイリーンも上級魔法をすべての属性で扱えると思い込んでいたが、どうやら違うらしい。まあ、まだ一学年ということもあるかもしれないけどな。しかし、前賢者の血筋であれば当然上級魔法を扱えると期待していたのに、俺は少しがっかりした。


だが、彼女は前賢者とは異なる方面の才能を持っていたらしい。それが、異なる魔法を組みあわせて、新たな魔法を作り上げる『合技』の才能だ。俺も自身や、アスタと合技を完成させてきたが、あれは単に魔法を組み合わせたものであるが、彼女は火と土を組合わせて溶岩という新たな属性を生み出している。合技の中でも最上級だ。



普通合技を行使するには、二人以上がセオリーとされる。なぜなら、単純に同時に二つ以上の魔法を行使できる魔力量の持ち主が少ないこと、さらに魔法の比率を合わせられるほどの魔力コントロールの持ち主が少ないことが理由だ。それがさらに、新たな属性の合技となると、難易度が格段に跳ね上がる。まずは複数属性持ちが稀有なこと、そして新たな属性を生み出すという柔軟な頭、さらに具体的なイメージ力を持っていなければならない。


これをさらに一人で行うとなれば、世界中を見てもできる者は一握りだろう。二人以上でも難しいのに、アイリーンは一人で……。だが、一人で行うメリットがあるとすれば、それは、魔法の比率を合わせやすいということだ。人と合わせるよりは、自分で合わせた方がわかりやすいからな。




しかしアイリーン・ガナハット、恐るべき才能だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ