14
『木操』
俺が懸念したとおり、ジョンは自分の周囲から多数の木材のような木を生やし、水牢を難なく打ち破った。『木操』は、多数の木を手足のように操ることのできる中級魔法である。
「アース様、この魔法はすでに見ていましたよ。俺には通用しません!」
「……そのようですね。」
ちっ! やはり、ジーマンとの戦いで手の内をさらしすぎたか? あのとき使った魔法は、このレベルの相手には通用しないか……。組み編わせて使うか、新魔法を使わないとな……。
基本的に白薔薇姫の能力は、魔導士相手にはあまり効果がない。ただ身動きを、封じるだけだからな。口を動かなくさせればいいと考えるかもしれないが、これは無理だった。この世界の魔法にも、一定の限界があるようだ。俺も身体ではなく、呼吸や臓器を止めてしまえば一瞬でケリがつくと考えたが、さすがに無理だった。今の能力では、だけどな。
『木操』
今度はジョンが攻めに転じたようで、多数の木が俺に向かって伸びてきた。これは、物理的に止めるしかない……、いや、今こそあれだな……。
『大窓』
俺は自分の前にぎりぎりで大窓を出し、出口をジョンの背後につなげた。『木操』は自在に木を操れるからな、手前で窓を出すと避けられてしまう可能性がある。
その瞬間、観客席のいたるところから、どよめき声が聞こえてきた。まあ、俺が試合に出るたびに、観客席がざわついていたからな。子供たちから報告があったとはいえ、俺が本当に空間属性持ちかどうか、確かめたかったのだろう。
「ちっ! 空間属性か……、実際に相手をすると厄介ですね!」
盛大な舌打ちと共に、ジョンは出口ら出てきた木を操り、自分を避けさせながら、再び俺の方へと木を伸ばしてきた。
は、まじかよ? 後ろから不意に現れた木を、ここまで正確に操ることができるのか? 最後まで操作可能な魔法は、厄介だな……。
このまま窓で返してもいいが、また同じ結果になりそうだな……。【白薔薇の世界】で止めるか? いや、決勝で魔力が尽きてしまうから却下だな。
じゃあ、ここはかく乱するか。
『大窓』
俺は再び窓を出し、今度は出口を遥か上空へとつなげた。
「今度も同じ手です……? 出口が開いていない! では、入り口から再び出てくるようにすれば……。」
そこでジョンの動きか止まった。
ジョンの『木操』は、視認することができなければ、明確なイメージをもって操作することができないのだろう。あんなに繊細なコントロールだ、見えない状態では難しいだろうな。遥か上空に出された窓から出る木を、視認することができないのだろう。
『凪げ 泡沫』
『泡沫の誘い』
俺は周囲に泡を展開した。
(この泡は……、攻撃か! くっ……、木操を出したままでは防御ができない……。一度解除して、防御しなければやられてしまう!)
『木壁』
ジョンが、木操を解除してガードに入ったようだな。だが、この泡は攻撃用ではない。初見だと、この泡がなんだかわからないから、ガードするのは当然の反応だな。魔刀の能力は正確には魔法ではないため、窓を出している最中でも、能力を使うことができるのだ。
『泡沫の幻影』
泡沫の幻影。泡沫の誘いで展開した泡によって、対象に幻影を見せることができる能力である。
俺は、ジョンに俺の姿が複数に見えるように、幻影を展開した。これで、正確な木の操作が出来ないだろう。
(なんだ、アース様の姿が複数に見えるぞ……。この泡は、攻撃用ではなく目くらまし用か! ならば、この泡を一掃すれば……、しかし、上級魔法での一掃となると魔力消費量が大きすぎる。ここは、『木操』で周囲を一掃するしかない。)
ジョンが木壁を解いたようだな。泡を一掃すればいいと、気づいたな? さすがに、判断が早いな。それならば、次の手だ。俺の新魔法で決めてやる。
『登水龍』
『登氷龍』
俺は、二体の龍に三十秒後にジョンを追尾して攻撃するように命じて、上空を旋回させた。一体ずつ行うことによって、同時に二体の龍で攻撃することができる。
木属性は、万能である。それは俺も認めているし、何ならほしい能力である。しかし、万能であるがゆえに純粋な力や速さには弱いことが弱点だ。だからこそ俺は、火力でのゴリ押しを選んだ。
『木操』
(よしこのまま、木を旋回させて泡を振り払おうか……、なんだ? 観客席から、悲鳴や驚嘆の声が聞こえてくるが……、アース様の能力に驚いているのか? まあ、すごい能力だよな……。とにかく、この泡を何とかする方が先だ!)
ーー
(よし、泡を消し終わったぞ。このままアース様に向かって木を伸ばして……、地面に浮かぶ、この大きな影は何だ? 空に何か……。)
「な、なんですか、これはーーー!!」
泡を振り払ったジョンから、大絶叫が聞こえてきた。まあ、ちょっと目を離したら、空に龍が飛んでいたなんて、パニックになっても不思議ではないか。今度は、影で龍の存在がばれないように、天候を変える必要があるな。
龍が下りてくるまで、後十秒だな、時間を稼ぐか。
『拘束しろ 水牢』
俺は、水牢での時間稼ぎに出た。呆気に取られていたジョンであったが、流石はシリル殿下の側近だ。すぐに水牢を破って見せた。
「同じ手は何度も聞かないと言いたでしょう! すぐに決着をつけます!」
ジョンはそういうと、すさまじい速さで木を伸ばしてきた。
窓を出してても、また操られると面倒だな。上空に飛ばして、もし、龍にあたっては面倒だ。ここは、防御一択だな。
『氷壁 二重』
ジョンの木と俺の氷が、ドンッと音を立ててぶつかり合う。
少しの間膠着していたが、どうやら時間が来たようだ。
『合技 双龍の咆哮』
二対の龍がそれぞれ別方向から、ジョンを襲う。
これは上級魔法ではないと対処しきれない。ジョン、お前はここで大幅に魔力を失ってでも、決勝に行くことを選ぶか? それとも、中級以下の魔法でしのごうとするか? もしくは、あきらめて降参するか?
(くそっ、この大きさは木操では対処しきれない。かといって、上級魔法をここで使うのは……。いや、その前に今から詠唱しても間に合わない。……ここで負けたら次はないんだ、ここは全魔力を使ってでも、受け止めて見せる!)
『木壁 多重』
ジョンがそういうと、ジョンの周りが多数の木で覆われた。
まるで、一つの森林のようだな。上級魔法は使わなかったか、まあ今から詠唱しても間に合わないだろう。そして降参を選ばないのは、側近としての矜持だろうか。俺も、降参という選択はとらないだろうな……。
だが、俺も負けつもりはない!
『恣意雨』
『恣意雪』
俺はみぞれ雨を降らせて、二体の龍の威力強化を図った。
二対の龍は、ジョンの森林めがけて一直線に突っ込んでいった。盛大な破壊音とともに、俺たちの魔法は拮抗した。
しかし、少しすると、木が「ミシミシッ」と音を立て始めると同時に、二体の龍はジョンの木壁を貫通した。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるの!」
と思いましたら、下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いいたします!
ブックマーク登録も頂けると本当にうれしいです!
何卒、よろしくお願いいたしします。




