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俺たちが第五魔導士訓練所へと向かうと、アイリーン一味と、クリスとジョン以外の生徒が俺へと詰め寄ってきた。アイリーン一味は、いつも俺に対してはこのような反応だし、クリスとジョンはシリル殿下の側近だから、二人の反応を見ると、俺の空間属性のことは何となく知っていたんだろうな。
しばらく俺はクラスメイト達に囲まれていたが、モール先生が授業の始まりを告げると、クラスメイト達は泣く泣く、それぞれの属性の先生のもとへと移動し始めた。
「アース、今日はどの属性で訓練するんだ?」
「そうですね、空間属性でお願いします。後期からは、空間属性に力を入れようと考えていましたからね。よろしくお願いします、モール先生。」
俺がそういうと、モール先生は頷いた。そういえば、モール先生は俺の空間属性のことを知っていたのかな? あまり空間属性のことを聞いてこないしな、確かめてみるか。俺が、不思議に思って聞いてみると、モール先生はあきれ交じりにこう返された。
「お前の入学試験を担当したのは、この学園の教師だろ? 一部の教師たちには、その報告がなされているんだよ。お前の担任である俺も、当然にな。」
あ、言われてみればそうか。入学試験で俺は、空間属性を使っている。その報告が学園の教師にされていてもおかしくはないか。それにしても一部の教師にか、きっと学園長が口止めをしてくれたんだろうな。生徒思いの方だったからな。
それから俺は、初めての魔力引出による空間属性の行使に悪戦苦闘しながらも、本日の授業を終えた。魔闘演舞の開催までにはしっかりと、魔力引出をマスターしたいな。
授業終了後には、クラスメイトが押し寄せてきたため、どうしたものかと悩んだ結果、全員で昼食をとろうということになった。弁当を持ってきていない者もいたため、食堂の一部のスペースを貸し切って、昼食をとった。その際にキースたちのことを、友人でもある俺の側近だと紹介した。すると、全員の顔がきらめいたのがわかった。何しろ、俺の側近たちは優良物件だからな。ターゲットにされなければいいけどな……。
ーー
それからというもの、俺が魔導士クラスでしっかりと空間属性を証明したことによって、俺への注目は和らいでいき、日常を取り戻していった。何事もなく、授業に部活に休日に、楽しく日々は過ぎていった。
季節は少し暑くなり始めた七月である。今月中には、文化祭に展示する工作を完成させなければいけないが、俺はリバーシを展示することになっているので、気楽なものである。工作は合作も認められているので、皆とは入浴剤を合作として展示することにした。
後期も残すところあと、二か月である。ここで、八月のスケジュールを確認しておきたい。一週目には、期末テストが行われる。まあ、対して苦労はしないだろうな。そして、二週目からは祭典の開始である。二週目には魔闘演舞、三週目には剣闘演舞、そして四週目に文化祭があるという流れである。
魔闘演舞と剣闘演舞は学年別のトーナメントで行われ、月の日は第一学年、そして順に行われて金の日に最終学年の第五学年のトーナメントが行われ、その後に全体で表彰式があるという流れである。
文化祭では各学年の美術の展示が行われ、文官コースの研究発表などが行われる。そして、ビックイベントは各学年による学年発表である。どの国が発表を行うかは、学年ごとに毎年ランダムで選ばれるらしい。幸い、今年の第一学年の発表はアーキウェル王国ではなかった。実に、ラッキーである。
そのほかにも、合唱部や演劇部といった文科系の部活の発表や、有志の発表などがあるようだ。まあ俺からすれば、聞き飽きたクラシック調の音楽や格式高い演劇ばかりであろうから、これと言って楽しみではないけどな。それに、俺の絵画の展示という公開処刑もあるしな。完成したハンバーガーの絵をハルに見せたら、何も言わずに肩をたたかれた。つまりは、そういうことなのだろう。それぞれの展示や発表には賞があるらしいが、俺にはあまり関係はないな。もしかすると、工作部門での受賞はあるかもしれない。
ーー
今日は七月中旬の金の日である。放課後、娯楽同好会の新スポーツを試すため、第六魔導士訓練場に来ている。第六魔導士訓練場は俺たちが良く利用しているため、実質娯楽同好会の第二の部室のような扱いになっているのだ。
「それでは、新しい球技を考えてきたので今日から試してみようか!」
「待ってました!(一同)」
「コートは、バレーボールのコートを少し大きくしたものを用意しようか。あとは、ボールだけで、他は何もいらないぞ。」
今までは、バレーボールを行ってきたが、毎回同じスポーツをしてると飽きてしまうからな。今回は道具のいらない球技を提案する。
「ネットとかもいらないのか?」
「ああ、そうだなジル。今回は、コートとボールだけあればいい。」
俺たちはそれから、オーガスト先生につくってもらった不思議なテープのようなものでコートをつくった。
「じゃあ、ルールを説明するな。まずはチームを半分に分ける。そして、チームごとに内野と外野を決めて……。」
俺は覚えている限りのルールをみんなに説明した。俺がやろうとしているこのスポーツは、そう、ドッジボールだ。この運動神経が半端ない連中で、ドッジボールをやったら大変なことになりそうだな。
俺たちはそれから、ドッジボールを開始した。ドッジボールは大まかにいえば、狙った相手にボールをぶつけるというものだ。全員すぐに順応したようだった。結果的に言うと、大いに盛り上がった。敵をボールで攻撃するわけだからな、騎士組が大いに活躍していた。攻撃も防御もどちらもすごかったが、やや攻撃側が優勢といったところのようだ。これは、回数を重ねていけば変化がみられるかもしれない。
そんな中でひときわ目立っていたのは、ミラルとウォーザットの水属性騎士たちだった。ミラルたちの戦闘スタイルは回避や受け流しといった、ドッジボールに相性のよさそうな戦闘スタイルだ。コート内でも、最後の一人まで残ることが多かった。
――時間も時間だし、俺の部屋で夕食をとろうといつも用に帰ろうとしていると、エリックが訓練場に駆け込んできた。
「つい先ほど、部屋での最終調整が終わりましたよ! ラインハルト殿下のピアスが完成しました!」
「本当か、エリック!」
と、エリックの完成の一報に一番に反応したのは、ハルだった。
「エリック、お疲れ様。ハルもよかったな、夏休み前に間に合って。」
「ああ、ありがとう。」
エリックは、学園に通いながらの作業だったからな。今回はかなり時間がかかったようだ。その分、素晴らしいピアスになっているに違いない。
「早速見せてくれるか、エリック?」
ハルがそういうと、エリックは恭しくピアスをハルへと差し出した。
俺も見てみると、燃えるような赤い紅石の蘭の花弁が、美しく再現されている見事なピアスだった。いつ見ても、エリックの細工の素晴らしさには舌を巻くな。ハルもうれしそうに、ピアスを見つめている。
「ハル、早速つけてみないか? 穴はそうだな、エリック、針は持ていているか?」
「はい、一応持ってきました。ただ、どうやって熱しましょうか?」
確かにな、この学園の炉の設備を使わせてもらうか? だが、手続きが面倒くさそうだな。俺たちが頭を悩ませていると、ジルから提案があった。
「俺の火魔法で、熱を加えようか? 炉よりも、火力が出ると思うがどうだろうか?」
それは非常に魅力的な提案だな。火を起こす必要もないし、すぐにできるからな。
「ジルがいいならお願いしたいな、ハルもそれでいいか?」
「ああ、ジルお願いするよ。」
「ここでは何だし、俺の部屋に行ってやろうか。エリックも、俺の部屋で一緒に夕食をどうだ? お礼もしたいしな。」
俺がそう提案すると、エリックはうれしそうにうなずいた。部屋へ戻る前に、針をジルの火魔法で熱した後に、素早く俺の部屋へと移動した。
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