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俺たちが風呂から上がると、側近たちが待機していた。
「どうしたんだ、お前ら? そんなに、嬉しそうにして。」
俺は、何やらそわそわしている側近を不思議に思って聞いてみた。
「主、主の部屋を見てみてください。」
俺の部屋? まあ、見てみるか。
俺は側近たちの案内に従って、自室へと向かった。
そして俺は、自分部屋をのぞいてみた。
すると……、ベッドがもう一つ増えていた。
「ベッドがもう一つ増えているな……、どこから持ってきたんだ? あと、どういう狙いだ?」
「それは俺から説明しますね、アース様。」
俺がそう聞くと、アイザックが説明役を買ってでた。
「まずこのベッドは、主と俺が使う予定だった客室から持ってきました。そして狙いは、ずばりお泊り会というやつです。」
「「「お泊り会?」」」
と、俺達はきれいにハモって聞き返した。
「主とジルベルト殿下、そしてアース様には積もる話もあるでしょう。そして、何よりも久しぶりの再会を楽しんでほしいと思い、側近一同で準備しました。明日から二日間、休日ですしね。どうでしょうか?」
側近たちの心遣いというわけだな。素直にうれしいな。それに、お泊り会か。少々響きが子供くさいが、友達と宿泊するのはいくつになっても楽しいものだ。
それに、俺はこの世界に来てから、あまりそういう機会がなかったからな。明日からも休日だし、たくさん話したいな。
「ありがとう、俺はすごく嬉しいよ。ジルとハルはどうだ?」
俺が二人に聞くと、ジルが先に答えた。
「ああ、俺もうれしいな。王族だとめったにこういう機会はないからな。それに、アース以外と泊まるのは初めてだ。ハルは、どうだ?」
すると、ハルは気恥ずかしそうに微笑んだ。
「お、俺は友人とこういうことをするのが、昔からの夢だったんだ……。だから、本当にうれしい。」
ハルは国内では、気を許すことができないからな。ここで、目一杯楽しんでほしい。
「それじゃあ、決まりだな。側近のみんな、本当にありがとう。俺たちはこのまま話して寝るから、側近のみんなも朝まで自由に過ごしてくれ。」
そして俺たち三人は、用意された部屋へと入った。
「それじゃあ、まずはお菓子とお茶を用意しようか。」
俺は焼きあがったカステラと、緑茶を用意した。
「アース、この緑色のお茶は何だ?」
ハルに緑茶を出すのは、これが初めてだったか? 確かに無意識に、出すことを避けていた気がするな。ハルたちの舌に合うか、わからなかったからかな……。
「ああ、ハルは初めてか。これは緑茶というものだ。紅茶の茶葉と同じものだが、これはほとんど醗酵していないものだ。俺は紅茶よりも、緑茶の方が好きなんだよ。緑茶の方が合うお菓子もあるしな、料理に合わせるのも緑茶が良いな」ろ、俺は説明した。
「そうだったのか。ジルも、好きなのか?」
「ああ。最初は苦いと感じたが、今はそれが美味しいし、苦みも気にならなくなった。それにしても、アース。このお菓子は何だ? 色が分かれているようだが……。」
お、遂に俺の好きなものを紹介できるな。
「これは、カステラと命名した、はちみつが主役のお菓子だ。とりあえず、食べてみようぜ。」
俺たちは、一緒にカステラを頬張った。
「おい、アース! これは美味しいな! 俺はものすごく好きだぞ!」
「俺も好きだな。シンプルだが、上品な味がする。それに、緑茶にも合うな。」
よかった、二人の舌に合ったようだ。自分の好きなものをほめられるって、嬉しいことだよな……。
「ありがとう、二人とも。まだまだあるから、いっぱい食べてくれよ。」
しかしまだ、カステラの出来は合格点というところだ。まだ、ザラメなどの食材が揃っていないから、まだまだ改良の余地がある。でも……、おいしいな。
俺たちはしばらく、カステラを堪能した後、本題に移った。
俺たちが共有したい情報はピアスと、盟神探水についてだな。[時]については、先程話し終わったから、もう大丈夫だろう。
そして、あの母子については……、ジルは話すのだろうか?
最初にハルがリヒト殿下たちとのお茶会で俺が行った毒見方法について聞いてきた。
俺は盟神探水の説明を始めた。盟神探水は体に害のあるものを判別することができること、判別方法は水の濁り具合で行うことを説明した。そして人前では、カムフラージュのために、ローウェルの土人形にしみこませて使っていることも併せて話した。
「なるほど、あれはローウェルではなく、アースの能力だったのか。」
「ああ、ハルにも一応この盟神探水が入った小瓶を渡しておくな。」
ジルは、この盟神探水が必要になったフローラ様の件を話すのだろうか?
俺は目で合図を送ってみたが、ジルは首を振った。
それはそうか、第一王妃が毒におかされたなんて、そうそう口に出していいわけはないからな。国内の貴族でも知っている者は一握りだろうしな。ここは、ジルに従っておこう。
俺たちがしばし無言でいると、ハルが気を遣って話題を移してくれた。
「それで、その耳につけているものは何だ?」
ハルも何かを察して、次の話題に移ってくれたようだ。
俺は再び、ピアスの説明を始めた。伝言石は思念伝達ができる点、収納石はアイテムボックスの能力が使える点を説明した。あとは、耳に針で穴を開けることも一応な……。
「そんな代物をつくったのか! どちらも強力な能力だな……。」
「ハルにもあげたいんだが、ルーン石がなくてな……。すまない。」
俺がそういうと、ハルはうれしそうに笑った。
「じゃあ、俺が用意すれば作ってくれるか?」
「それはもちろんだ、俺も用意できるように頑張るよ。それでさ、ルーン石以外の宝石でもよければすぐに用意できるが、どうする?」
俺がそう尋ねると、ハルは欲しいと即答してくれた。ピアスとイヤリング、どちらがいいかな?
「ハルは耳に穴を開けるのは大丈夫そうか?」
「痛いのは一瞬だろ、大丈夫だ。宝石は俺が用意するからさ。」
「わかった、準備できたらいつでも声をかけてくれよな。」
それから俺たちは、他愛もない話をした。互いの幼少の頃の話や、授業のこと、家族のこと等をな。
ハルの父親、つまりアイバーン帝国の皇帝の話は興味深かったな。
大国の皇帝ゆえに、威厳はすさまじいらしいが、子供に対しては厳しくもあるが、優しい一面も持っているそうだ。そして、人を中身で判断するようにとハルに教えたのが、まさに皇帝らしい。
まあ、ハルの人柄の良さを見れば、皇帝の人柄の良さも見えてくるよな。
そんなこんなで、俺たちは話し続けていると、ハルからとんでもない提案があった。
「そうだ、夏休みに帝国に遊びに来ないか? 長期休みに、お前らと会えないのは寂しいからな。」
「行く!」
俺は当然即答だ。何しろ他国だぞ、それに世界一の大国に遊びに行けるなんて……。考えただけで、ワクワクしてくる。
「おい、アース。陛下や公爵に確認してからだぞ?」
「もちろんだよ。だけだ、ジルも行きたいだろ?」
俺が少し挑発的に聞いてみると、ジルはそっぽを向いて、「行きたい」と、一言返事をした。
ジルはこういうやつだからな。城から脱走することが好きな少年が、他国に興味がないわけはない。
アイバーン帝国か……、何があるんだろうな? 北の一番広い大陸だ、ということしか知らないな。ハルに聞いてみようか。
「ハル、帝国は何が有名なんだ?」
「そうだな、色々あるが……。」
ハルは少し考えたそぶりを見せて、ニヤッと笑った。
「ダンジョンがたくさんある。」
「ドゥアンジョンきたーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
ダ、ダダダダダダダ、ダンジョンだとーーーーーーーーーー!!!
最高だ、俺が求めていたものだ。そうだよ、異世界と言ったらダンジョンだよな!
アーキウェル王国には残念ながらダンジョンはなかった。しかし、帝国にはダンジョンが……、しかも、たくさんあるのか!
これはもう行くしかない、夏休みはダンジョン攻略合宿だな!




