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6


「その手に持っているのが新作か?」と、風呂場に向かう途中でジルに聞かれた。





「そうだよ。これは入浴剤と言って風呂に入れる薬兼、香りでリラックスするためのものだ。風呂に入ってから説明するよ。まだ、寒いしな。」




俺がそういうと、二人は頷いた。











ーー











「じゃあ、入れるからな。気泡が出てくるから見とけよ。」



俺がバスボムを風呂に入れると、ブクブクと気泡が出てきた。




「本当だ、すごいな。それにこの香り……、とても癒されるな。」


「そうだな。それに、なんだか体が軽くなった気がするな。」


「ハルの言うとおりだ。この入浴剤には、回復草を調合してある。そのほかにも解毒草などで、効能を変えることができるんだ。香りことだが、今は果汁などを使うしかないから、他の手段を模索中だ」と、俺は入浴剤の現状も踏まえて説明した。




「なるほど、これは面白いな。商品化したら、売れそうだ。それにしても、回復草を調合するだけで、こんなにも効能が現れるものなのか? 多少はあるとは思うが……。」



やはり、そこに気が付くとは流石ハルだな。ハルには、俺の水回復魔法のことをまだ話してはいない。



「アース、まさかこの入浴剤には……」と、ジルは気付いたようだな。



「……ジル、ハルに話してもいいだろうか? それに、ハルにはどこまで話す予定なんだ?」



と、俺たちが目で語り合っていると、空気を読んだハルが立ち上がった。



「俺、先に上がろうか……?」



ハルが空気を呼んで、席をはずそうとしてくれたのだ。



「「いや、それはいい!」」



俺たちは、慌ててハルを止めた。



「ま、まさか、二人同時に言われるとはな。わかった、このままいるよ。」



ハルがそういうと、俺たちは安心してため息をついた。


すると、ジルが俺の方を向いてきた。


「アース、俺は冬休み中に起こったことを、全部話そうと思う。俺は、話してもいいと思うんだ。」



……俺もそう思う。ハルには、話しておきたい。



「俺もそう思うよ。それに……、仮にハルに裏切られたとしても後悔はない。」




俺がそういうと、ハルは再び立ち上がった。


「俺はそんなことはしない、誓うよ。アイバーンの名にかけてもいい。」



貴族が家名にかけて誓うことは、最大級の誓いだ。俺たちのために、家名まで持ち出してくれるなんて……。



「ハル、気持ちだけで十分だよ。俺たち王族にとってそれは、最後の切り札のようなものだからな。」



「そうだな、友人として約束してくれれば充分だよ。」




と、俺たちはハルの肩をたたきながら言った。



「そうか……。二人とも、ありがとう。」





「じゃあ、この入浴剤の秘密の前に俺たちが提げている刀について説明しようか。」



俺がそういうと、ハルは首をかしげた。



「刀……? 剣ではないのか? 普通ではないとは、思っていたが……。」



「俺たちの剣は、魔刀というんだ。」



それから俺たちは、魔刀についての説明を始めた。









ーー











「魔法剣のようなものを、アースがつくったのか……?」


「そうだ、だから人には話さないでほしい」と俺がいうと、ハルはまじめな顔でうなずいた。



「当然だ。そんなものがあると知られれば、アースの価値はとんでもなく跳ね上がることになる。ただでさえ、今は空間属性持ちであることが知られて、注目されているからな。」



「そうだな、だが、そうも言ってられないかもな……」と、俺は懸念点を口に出した。



「どういうことだ、アース?」



ハルの問いに対して、俺が言い淀んでいると、ジルが代わりに説明をしてくれた。


「アースは、年始に襲われたんだよ。変な連中にな。」


「襲われただと? 怪我は?」



「俺は大丈夫だったが、俺の側近たちが凍死する寸前だった。それを俺が回復させたんだ、俺の能力でな。」


「俺も腹を貫かれたとき、アースの回復魔法で助けてもらったんだ」と、ジルがあの事件の出来事も補足した。



「……そんな大けがを治しただと? たしか、アースは光属性が「死に属性」だったよな?」



そう、それは当然の疑問だよな。



「ああ、そうだ。だから、俺の回復魔法は光じゃない。水回復魔法だ。これが俺の魔刀の能力のうちのひとつ、『清流の衣』だ。」



俺がそういうと、ハルは目を見開いた。



「水回復魔法……? 聞いたことがないな。それをこの入浴剤に?」



「ああ、そうだな。だから仮に広めるとしたら、薬草の調合、もしくは香り付けまでだ。まあ、それでも十分いい商品にはなると思うけどな。」



実際、回復力がこれほどなくとも結構うれると思う。一度使えば、やめられなくなるであろうからな。



「それはそう思うが……、水回復魔法か……。空間属性に加えて、そんな稀有なものまで……」と、ハルは天を仰ぎながら言った。




「あの時は、ジルの命がかかっていたからな。」



「確かにそうだな。あの時アースの水回復魔法がなければ、俺はとっくに死んでいただろう……。」



本当にその通りだ。魔刀が、俺に応えてくれてよかった。ジルを失わずにすんで、本当によかった。




「お前らも、相当な経験をしているんだな。話は戻るが、その襲ってきた奴は何者だったんだ?」



それは……。



「おそらく聖王国関係のやつらだと考えている」と、ジルが言いづらい俺に代わって話、してくれた。



「証拠は?」と、ハルが真剣な眼差しで聞いてきた。



それはそうだ、序列二位の国を疑っているんだ。相応の証拠がなければいけない。




「反空間結界が使われたことだ」と、ジルが答えた。




「反空間結界だと? また、知らない単語が出てきたな。」



ジルはハルに、反空間結界の説明をし、それを聖王国や教会関係者が使ってきたことを話した。そして、あの戦いのときにジルの腹を貫かれたことも……。






「……なるほど、転移陣を管理する聖王国が、それを封じる反空間結界を保有していても不思議ではないということか。」



流石に、ハルも理解力がすごいな。一回話しただけで、内容をどんどん飲み込んでいく。




「そいつらは、どんな感じだった? 少しは、情報を渡せるかもしれない。」



俺はハルに、二人組の黒ローブで、トゥエルブとイレブンと名乗っていたということを伝えた。二人の印象はこれくらいしかないからな。



すると、ハルは何か心当たりがあるようで、少し考え込んだ。


「黒ローブに、数字……。待てよ、噂で聞いたことがあるぞ。たしか……、聖王国の影部隊。暗殺から密偵、国のあらゆる闇を担当している組織。通称、[時]だ。」




トゥエルブにイレブン、次はテン、ナイン……。十二から始まって一で終わる、まさに時計ということか。



俺たちが頷くと、ハルは慌てて手を振った。



「だが、証拠はないんだ。そいつらの尋問は、できなかったのか?」



「ああ。アースの話では、隷属の首輪が絞まり、首が飛んだらしい。」




「……それは、そいつらならやりそうなことだな。アースは大丈夫だったか?」



いや、俺は……。


そう、俺はその光景を見たときに嘔吐してしまったのだ。でも、次からは相手の命を奪わなければいけないときだってあるのだ。俺も覚悟を決めなければならない。



俺がそのことを話すと、二人は俺の肩に手を置いた。




「最初は誰でもそうなるさ、慣れろとは言わない。しかし、大切なものを守るためには、そうしなければならないときも必ず来るはずだ。わかるな、アース?」



と、ジルが真剣な眼差しで俺に語り掛けた。



「ああ。覚悟はしているつもりだ、ハル。それにしても、その[時]というやつらは本当に存在するのか?」



俺がそういうと、ハルは首を振った。


「いや、実際に見た者はいないんだ。あくまで、うわさに過ぎない。」



俺が頷くと、ジルが話をまとめてくれた。そして、あの武器のことも……。


「そうか、だがそういうやつらがいるということは覚えておこう。それに、厄介なことにそいつらは偽魔剣という武器を使用してくる。偽魔剣とは、アースの魔刀と同じような能力を持っているが、一度しか使えないという代物だ。」



「な! それは本当なのか、ジル? アースは、そんな奴らを相手にしたのか?」



俺は、あいつらとの戦闘のことを話した。


「ああ。能力自体はそこまで強力ではなかったが、環境や組み合わせ次第では恐ろしい効果を発揮するタイプだった。雪山で、氷と水の能力だったんだよ。」



「なるほど、それで凍死か……。そんなのが少なくともあと、十人はいるのか。」



「そういうことになるな。その他にも、おそらく聖王国は強力な毒を……。」



俺がさらに、例の毒の説明をしようとすると、ジルに止められた。



「アース、ハル、いったん出よう。側近たちも入れないし、何より長い話になる。続きは上がってから、アースの部屋でしよう。」




確かにその通りだな。このまま話せばのぼせてしまうし、側近たちの迷惑にもなるからな。


「面白かった!」


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