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「後期開始初日から、最悪な気分だな。」
と、俺は自室に着くなり、つぶやいてしまった。
「全くだな、なんだあいつらは? いや、弟がムカつくな。兄の方は、まだましだったことが唯一のすくいだよな」と、ジルも項垂れた。
確かにそうだよな。研究会への勧誘はしてきたが、その後はしっかり身を引いていた。それに、口調も丁寧だったし、これからは絡んでこないだろう、多分。
それよりジーマンのやつ、もう一回謹慎にでもしてやりたいな?
「はー、魔法ぶっぱなしたいな。今から、訓練場の申請をしに行くか? それとも、屋敷に帰ろうか? あ、そうだ。魔女の森で……。」
あ、やばい。
「おい、今魔女の森って言ったか? そこで、何をしたいといった? お前、魔女の森が氷漬けになっていた件に、何か心当たりはあるか?」と、ジルに詰められた。
しくったな……。つい、言葉に出してしまった。
「……ありません。」
……。
俺が知らんふりをすると、ジルがジト目でこちらを見てきた。
「主、今のは主の失態です。素直に認めてください。」
「そうだな、今のはお前が悪いな。」
と、ローウェルとキースが肩をすくめて言ってきた。
「おい、お前ら少し黙って……。」
「アース、今言えば黙っててやる。」
やばい、ジルが笑っている。これは、ガチギレされる前に、素直に白状した方が良いな……。
「……。サーカス様たちとのお茶会の後に、怒りが我慢できなくて、魔女の森で氷の上級魔法を放ちました。」
そういうと、ジルは大きなため息を吐いた。
「はーーーーー、やはりお前か。あれだけの威力と規模だ、お前以外には考えられないと思っていたが、まさか本当にアースだったとは……。」
すると、ウォーザットが前に出てきた。
「殿下、報告は致しますか?」
「おい、ウォーザット! ジルは、今言えば黙ってやるって言っただろ?」
「そ、それは……。」
俺の主張が通ったのか、ジルは肩をすくめた。そうだよな、これは情状酌量の余地があるはずだ。
「わかった、ここだけの話にしよう。ただ、次にやったら、わかってるな?」
「……はい。」
俺がジルに怒られている姿を見て、笑い出した二人がいた。
ぶははははははははははははははははははははははは!!
「おい、ハル、アイザック! なに笑ってるんだよ!」
「いや、アースは冬休み中にも愉快なことをしているものだと思ってな。なあ、アイザック?」
「そうですね、主。どこにいても、にぎやかな人ですね。」
「……夕食の用意をするから、その辺に座ってろよ」と、俺が言うと、各自休む準備を始めた。
「ああ、悪い悪い。それじゃあ、そこのテーブルでジルと話していようかな。なあ、ジル?」
「ああ、いいぞ。アース、リバーシを貸してくれ。」
王子組は、二人で時間をつぶすようだ。俺は二人にリバーシを貸した。
「じゃあ、俺はアース様の情報部隊を借りますね。俺の能力について、宿題を出していましたからね。俺が聞いて差し上げますよ?」と、アイザックは挑発的な笑みを浮かべていった。
ああ、そういえばそうだったな。アイザックの属性風で、どのように俺たちに気づかれずに情報収集を行っていたのか、ということをローウェルとアスタが見極めるというくだりがあったな。
たしか、俺たちで一応の答えは出ていたはずだ。風による遮音空間や、遠くの声を拾うという能力だったな。
「望むところだ、側近部屋に来い。」
「そうですね、その軽口をたたけなくしてあげますよ。」
と、ローウェルとアスタが受けてたった。
「楽しみですね」と、再びアイザックが不敵に笑った。
側近同士も、仲が良くてよろしいな。
「じゃあ、ミラルは俺の手伝いをしてくれ。あとは……。」
確か、ジルがミントとも話しをしてほしいと言っていたよな。ミントはジルの側仕えだ。確か軽いお菓子を作っているという話だったから、料理にも興味があるかもしれないな。
よし、誘ってみよう。
「ミント、俺たちと一緒に料理をするか?」
俺がミントに話しかけると、ミントは肩をびくっと振るわせてジルのほうを見た。
「ミント、いい機会だ。他のみんなとも打ち解けた方が良い。それに、前からアースに料理を習いたいと言っていたではないか。」
すると、ミントは顔を紅潮させた。
「で、殿下、そのことは言わないでください……。」
「ああ、すまない。だが、せっかくアースが誘ってくれたんだ。やってみるといい。」
すると、ジルの言葉受けて、ミントは俺たちに向き直った。
「……は、はい。アース様、ミラル様、よろしくお願いします。」
何だ、前から俺たちには興味があったのか。料理仲間として、これから仲良くしていきたいな。
――
俺たちは三人で、キッチンへと移動した。
「それでアース、今日は何をつくるの?」
今日は人数が多いし、スープカレーは外せないな。それから、キースにも評判の良かったハンバーガーを試してみようかな。
あとはそうだな、野菜か。野菜炒めを、付け合わせに出そうか。そして……、ハンバーガーと言ったら、フライドポテトだよな。
「今日はスープカレーとハンバーガー、そして野菜炒めにフライドポテトだな。」
「スープカレーと野菜炒めはわかるけど、他の二つは聞いたことがないね。」
「ミラルも食べてみてからのお楽しみだな。スープカレーは、一人でも作れそうか?」
俺がそう聞くと、ミラルは少し考えた後に、頷いた。
「アースがスパイスをすでに配分してくれているからね、後は混ぜるだけだよ。野菜炒めも私がやるよ、味付けは頼んでもいい?」
「わかった。じゃあ、ミントは俺のサポートな。」
「は、はい。よろしくお願いします。」
「じゃあ、まずは玉ねぎとひき肉を捏ねようか。ミント、やってみてくれ。」
「はい。こ、こんな感じですか?」と言いながらも、ミントは慣れた手つきで作業をしていた。
やはり、料理に慣れているようだな。
「うん、うまいぞ。どこかで、やったことがあるのか?」
「い、いえ。お菓子作りで、生地を捏ねたことがあるくらいです……。」
「そうか、いい手際だな。」
俺がそういうと、ミントは笑った。
よく見ると、かわいいな。小動物みたいだ。なんというか……、妹にしたい。
――
「よし大体捏ね終わったな。この後は俺が焼くから、ミントはジャガイモをこんな感じに切ってくれるか?」
「はい、わかりました! アース様とのお料理は、楽しいですね。」
お、最初は会話がたどたどしかったが、慣れてくれたのかな?
「そういってもらえると嬉しいよ。ミントも料理が好きそうだよな、料理部に入っているのか?」
俺がそう聞くと、ミントは目を泳がせながら頷いた。
「え、ええ。入ってはいますけど、あそこはその……、料理よりも女子生徒同士の会話がメインですので、少し居づらいですね……。」
あーなるほど。女の園というわけか。女子トークがマシンガンのように繰り広げられているのだろうな。入らなくてよかった。
それにしても、超絶人見知りのミントにはその空間はきついんじゃないだろうか?
「ミント、ジルたちがここに食事に来るときに、一緒に料理をするか? そうすれば、ジルにもおいしい料理を提供することができるぞ?」
俺がそういうと、ミントは顔をほころばせて笑った。
「アース様がよろしければ、是非お願いしたいです!」
人見知りなだけで、話すと普通の女の子だな。
よし、ハンバーグが焼けたな。あとはこれとレタスをパンにはさんで、特製ソースをかけて出来上がりだな。あとはジャガイモを、揚げるだけだな……。
俺が油を準備していると、ハルとジルに呼ばれた。
「なんだよ、お腹がすいたから早くしろとかじゃないだろうな?」
「そんなわけないだろ!」
「すまん、冗談だよ。それで、どうした?」
俺がそういうと、ジルが耳打ちをしてきた。
「ピアスのことや例の母子については、側近たちの前では話さない方が良いと思ってな。だから、夜に俺ら三人だけで集まろうということになったんだよ。」
なるほどな、賢明な判断だな。話す人数は最小限の方が、側近たちの身を守ることにもつながるからな。
「それはいいが、門限はどうするんだ? 夜になると、寮から出るための転移陣は閉まってしまうだろ? ジルは同じ寮内だからいいけど、ハルはどうするんだよ?」と、俺はハルに確認してみた。
寮から夜遅くに生徒が外出するのを防ぐために、八時以降は転移陣が閉まってしまうのだ。
「俺は、この部屋に泊まる。」
「は? ベッドがないんだぞ? 」
「俺は床でも構わないぞ?」
何を言いているのだ、この皇子様は?
「お前はアホか? 皇子を床に寝させられるわけがないだろ! ジル、客室の使用許可を寮監からとってきてくれ。幸い、明日からは休日だしな。」
「その方が良いな。まったく、何が床で寝るだよ。」
「本当にな、こっちの身にもなってほしい。」
俺たちがそういうと、ハルは項垂れた。
「俺にアホなんて言うやつ、お前らくらいしか……。」
「「事実だ。」」
「くっ……。」
俺たちがそういうと、ハルはそっぽを向いてしまった。
「じゃあ、風呂に入ったら、俺の部屋に集合でいいか? 」
と、俺たちがこの後の段取りを確認していると、ハルが周囲を見渡してから、質問をしてきた。
「アースの部屋って、あそこのドアの向こうか?」
いじけていたハルが、急に元気になった。何だ?
「ああ、そうだが何だよ、急に。」
「いや、何か面白いものがあるのかなと思ってさ」と、ハルは不敵に笑った。
「面白いもの? 家具くらいしかないぞ。変なものなんて何も……。おい、何考えてんだよ!」
そうだ。この世界にも少しだが、そっち系の書物があるのだ。それを探し当てたいと、ハルは言っているのか。
ただ残念ながら、まだ十歳の少年には必要のないものだ。俺は、十歳だからな!! まだ子供なんだぞ!!
「別に、何も言ってないだろ? 」
そういうと、こちらを挑発的な目で見てきた。くそっ、さっきの仕返しのつもりだな……。
「もう用が済んだんなら、俺は料理に戻るからな。」
ちょっと、怒ったからな?
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