閑話 側近の集い3
今回の閑話は、ジルとアースが二人で母子とのお茶会のことやピアスのことについて話している間、外で待機していた側近たちのお話です。
では、本編をお楽しみください。
~ローウェル視点~
俺たちは主と殿下の指示で、部屋の前で待機をしている。二人はたまに、こうして二人きりで話をしている。側近にも開示できないような情報を、何か持っているのだろうか? 情報を扱う文官としては、知っておきたいが……。
おっと、まずいな。はやく、サイニードの近くに移動しなければ……。
俺はこうして、側近だけで待機するようなときは、いつも殿下の文官のサイニードの近くにいるようにしている。なぜなら安全地点だし、落ち着いて話すことができるからだ。というのも、オーサックという脳筋が、キースたちに絡んで行くため、面倒くさいのである。俺は文官だから勝負を申し込まれたりはしないが、いつとばっちりを受けるかわからないからな。用心に越したことはない。
「サイニード、冬休み中はどうだった? 殿下の文官は、大変だったか?」
俺は文官の講義などで、サイニードとは結構仲がいいのだ。
「そうだね、公務の補佐が主だったけど大変だったよ。もう一人文官がいればな、と思うことが何度かあったね。」
「それは俺も思ったことあるよ、というか今も思っているかな。特に学園に行けば、風呂掃除とかもあるかさ。文官の仕事が遅れることがあるんだよな……。」
冬休み中は特に主に公務などはなかったからよかったが、そのほかが色々ありすぎたからな……。これから先忙しくなるかもしれないから、文官の増員は必要かもしれない。
「掃除を、自分たちでやるという発想がすごいよね。まあ殿下も学園に行けば、洗濯の補助をやっているけどね……。」
「俺の主は特別だからな、慣れてしまえばどうということもないよ。」
「確かにアース様は特別だよね……」と、サイニードがいたわりの表情で言ってきた。
「それは殿下も同じだろ? 冬休み中は脱走とかしなかったか?」
俺がそう聞くと、サイニードは無言で空を眺めた。
「何度かアース様の所へ行こうとしていたよ。暇ができるとすぐに、遊びに行こうとするんだ……」と、サイニードは頭を抱えた。
そうだったのか……。でもたしかに、主と殿下は冬休み中に三回くらいしか会っていなかったからな。殿下は主のことを本当に、気に入っている。そして最近は、主のファンが増えていっている気がする。オーガスト先生やラインハルト殿下、そして魔導士コースのクラスメイトとかな。まあ、主は人を引き付ける天才だから、これも道理だ。
「サイニードも苦労しているよな……」と、俺はサイニードの肩をたたきながら言った。
「客観的に見れば、アース様の側近の方が大変そうだけど……。冬休み中も色々あったんだよね? 特に外見が結構変わっているけど……、その耳につけているものはなにかな?」と、サイニードはピアスのことについて聞いてきた。
俺は主の説明を交えて、サイニードに細かく説明した。殿下の文官であるサイニードは、細かく知っておいた方が良いだろう。学園では、殿下がピアスについて尋ねられることもあるかもしれないからな。
「耳につけるアクセサリーか……。またアース様は、斬新なものをおつくりになったね。しかし……、これは流行るだろうね。」
「サイニードもそう思うよな! だから今日、俺が特許の手続を……」と、俺が言う途中で、遂にあの男が動き出した。
「ん? お前らよく見ると、耳に何かついているな? まさか、戦力の強化なのか!!」
と、オーサックが騎士組に詰め寄っていった。
はー、遂に来たか。なぜすぐに、戦力強化の方に発想が飛んでいくのだろうか? この調子だと、鞘のことを知ったらまた面倒になりそうだな……。
「違うぞ、これは戦力強化ではない。アクセサリーの一種だ」と、キースが面倒くさそうに答えている。
オーサックに絡まれたときに対応するのは、大体キースの役割だ。ミラルとアスタはオーサックの接近に気づいた瞬間に、さっと姿を消すのだ。脳筋のオーサックの相手には、ドライなキースがうってつけなのである。
俺は、哀れな幼馴染に頑張れという気持ちと、ざまあみろという気持ちを込めて、グットサインを送っておいた。
すると、キースは俺のサインに気づき、「殴る」と口を動かした。
あいつは騎士ではない俺に対しても、容赦がないからな。まったく、それだから「氷の騎士」なんて陰で呼ばれているんだぞ? キースは容姿や実力だけなら完璧だから、陰では結構人気なのだ。しかし、あの愛想のない顔や対応にがっかりするものも多いと聞く。ただ、一部のマニアには刺さるようだ。キースの将来が、心配である。
それにしても、「氷の騎士」ならば、主の方がお似合いな気がするけど……。「傷だらけの王子」というあだ名が衰退したら、次は「氷の騎士」を推薦してみようか?
「アクセサリーだと? それじゃあ、おしゃれのためだけに、それをつけているのか?」と、オーサックが訝しんだ。
「ああ、そうだよ」と、キースがそっぽを向きながら答えた。
あ、面倒でなげたな。
まあ説明するにも、結構文字数がいるからな。それに相手がオーサックだから、より面倒くさそうだと考えたのだろうな……。しかし、オーサックがただのアクセサリーではないと知った後の方が、面倒くさそうだとは思うけど……。
「ローウェル、あれでいいのかな?」と、サイニードも俺と同じことを思ったらしい。
「うん? いいんじゃないか、オーサックだし。」
俺がそういうと、サイニードは納得したようだった。最近オーサックの扱いが雑だとは思っていたが、同じ側近仲間からの扱いも雑なのか。可哀そうだな。
俺がそんなことを考えていると、オーサックがふと、俺の方を見てきた。
「アースの文官のローウェルなら、このアクセサリーについて詳しく知っているな? 戦力の強化なら教えてくれ。強くなったアースと、戦いたいからな。」
げっ、そうくるか……。オーサックに絡まれないようにするために、サイニードの陰に隠れていたのにな……。
まあ、無視をするわけにはいかないから、俺はサイニードに説明をした内容をそのままオーサックにも伝えた。
「なんだと!!! ただのおしゃれでは、ないじゃないか!! キース、どういうことだ!!」
やっぱり、そうなるよな。だから、後の方が面倒くさそうと思ったのに……。まあ、怒りの矛先がキースだから、問題ないか。
俺がそう思っていると、キースが俺をにらんできた。
おい、それは筋違いだろ? キースが最初から説明しなかったのが悪いんじゃないか。俺はキースに、貴族スマイルを送っておいた。
後が怖いが、主に助けてもらおう。
「うるさいぞ、オーサック。身につけるという意味では、アクセサリーと何も変わらないだろ? それに、戦力の強化ではないだろ?」
「それはそうだが……。なぜ、最初にそう言わなかったんだ!」
「ちっ、別に理由なんてない。」
「今、舌打ちしたな? それは、宣戦布告と受け取っていいな? よし、わかった。その勝負受けてやろう。最近からだが、なまっていたところだ。」
「誰も勝負なんか、申し込んでいない。うるさいから、外で走っていろ。」
「なんだと、キース? ならこの場で、勝負をつけてやる!」と、オーサックが踏み出したところで、ウォーザットが止めに入った。
「はいはい兄さん、そこまでだよ。殿下たちからいつ呼び出しがあるかわからないんだから、おとなしく待っていようね?」
ウォーザットはこういう時にはいつも止めに入ってくるが、殿下や主がいないときには止めに入るタイミングが、若干遅いのだ。まさか、楽しんでいるんじゃないだろうな? ウォーザットは常識チームの一員だと思っているが……、そうだと願いたい。
「サイニードも大変だよな……。そうだ、俺たちの癒しのミントはどこに行ったんだ?」と、オーサックたちの方は見ないようにして、サイニードに再び話しかけた。
「ミントはお茶の準備をしに行ったよ。俺たち側近が、いつ中に呼ばれるかわからないからね。」
そういうことか、顔が小動物のようにかわいいだけではなく、気もきくのか。是非常識チームに入ってほしいものだな。
「おい、ウォーザット! 止めるんじゃない! 俺はキースと勝負をしなければならないんだ!」
また始まったよ……。もっと、ウォーザットには頑張ってほしいものだな……。
俺がそんなことを考えていると、主から伝達石で、呼び出しが入った。
これは素晴らしいタイミングです、主!
俺はこの空間から抜けられる機会を逃すまいと、急いでドアに向かった。そのついでに、俺はキースに向かって手を振った。
すると、キースは凍えるような視線を、俺にむけてきた。
その後、屋敷に帰った後のキースによる報復は、痛かった……。
第六章の反省点としましては、閑話が少なかったことです。第七章では緩和を少しでも多く投稿できたらと思います。
皆様も、読みたい閑話の案などがありましたら、是非とも送っていただければ幸いです。
※次話の投稿は、水曜日からです。本日の夕方の投稿はございません。
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