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28


次の日は、キースの二回目の訓練だった。

まだ二回目ということで、前回同様に、かなりの心理的・身体的ダメージを負ってしまった。俺は再び、回復魔法をふんだんにかけたバスボムをつくり、キースをサポートした。




その二日後、ジルのピアスの引き取りと三人の鞘の依頼をしに、ドーンロア工房へと向かった。



耳に穴を開けるとき、ジルは緊張していたが、開け終わった後は、「もう終わりか?」と、ローウェルと同じようなことを言っていたので、痛みは本当に一瞬のことなのだろうな。




鞘の注文も無事に完了したが、ショーク様はジル相手でも、いつも通りの口調だったのでひやひやしたが、そこは寛大なジルだ。きれいに流していた。






そして、今日はいよいよ俺たちの鞘の完成日である。

俺たちがドーンロア工房に入ると、前回の店員が申し訳なさそうな顔をして出迎えてくれた。その店員に案内されて、俺たちが応接室に入ると、既にドーンロア親子が待っていた。




「お久しぶりです、ショーク様。一週間ぶりだな、エリック。」


「はい、お待ちしておりました!」


「……できてるぞ。」



相変わらず、不愛想だな。まぁ、慣れたらどうということもないけどな。



「ありがとうございます、早速見せていただいてもよろしいですか?」と俺が言うと、ショーク様はエリックにアイコンタクトを送った。


ショーク様のアイコンタクトによる指示を受けたエリックは、応接室から出ていった。





……応接室内に沈黙が流れた。何か話題を提供した方が良いかな? 俺がそんなことを考えていると、ショーク様が頭を下げてきた。





「ショーク様、どうされたのですか! 頭をお上げください!」と俺は慌てていったが、一向にショーク様は頭を上げてはくれなかった。俺は仕方なく、少し様子をうかがっていると、ショーク様がぽつぽつと、話し始めた。




「……今回は、エリックに、貴重な経験話させてくれてありがとう。それから、エリックの最初の客になってくれてありがとう。そして……、エリックのパトロンになってくれてありがとう。……俺は、エリックがまだ子供だからと、客相手の商品をつくらせたことがなかった。しかし、俺の間違いだった。エリックが加工したその耳飾りを見て、そして、エリックが喜んでいる姿を見たら、俺は……うれしかった。だから、ありがとう」と、深々と頭を下げた。




誰から見ても口下手で、頑固な職人気質のショーク様が、精一杯俺に感謝を伝えようとしていることが、否応なしに伝わってくる。


……俺も、あなた方親子に出会えて、幸せですよ。




「頭をお上げください、ショーク様。私も、あなた方に出会えて、本当によかったです。私自身も、エリックとデザインを考えたり、アクセサリーの話をしたりすることが楽しかったです。それに、彼の技術はすごいですね、きっと指導したショーク様が素晴らしい師匠だったのでしょう。ですから私は、彼のパトロンになりたいと思ったのですよ。ショーク様、これからもよろしくお願いしますね。何かありましたら、私に何でも相談してください」と、俺は笑顔で答えた。




俺がそういうと、ショーク様は顔を上げ、笑った。








コンコン





「失礼します。戻りました、こちらが……。皆さん何かありましたか?」と、エリックが首をかしげた。




先ほどまでとは、何か違う雰囲気を感じ取ったのだろうな。ショーク様は、先ほどまでは優しい顔をしていたが、今はいつも通りの不愛想な顔に戻っている。おそらく、息子にあの笑顔を見られたくはないのだろうな。





「特に何にもないよ、エリック。さぁ、鞘を見せてくれるか?」と、俺は笑いかけた。



「そ、そうなのですね……。それでは、これがご注文の鞘です。」




そういうと、エリックは俺たちに鞘を手渡した。





こ、これは……。見事としか言いようがないな。注文通り、氷と水の模様が美しく彫られている。この素晴らしい鞘を、これから毎日、腰から下げることができるのか。俺たちは幸せ者だな。



皆も、注文通りの素晴らしい鞘に満足しているようだ。アスタの影のイメージは、堀の深いデザインがなされていて、その陰影で影を表現しているようだ。





「素晴らしい鞘です、ショーク様。本当に感動しました。なぁ、お前ら?」と、俺は皆にも感想を聞いてみた。



『あぁ、本当にかっこいい鞘だ。ありがとう。』


『私もこのすばらしい鞘を毎日下げられるなんて、幸せです。ありがとうございます。』


『俺も最高の気分です。主からいただいた魔短刀に加えて、このかっこいい鞘……。ありがとうございます。』


『自分の難しい注文にも、ここまで見事なデザインで応えてくださり、本当にありがとうございました。』




よかった……、側近たちも満足しているようだな。




「あぁ、こちらこそいい仕事をさせてもらった。ありがとう」と、ショーク様は再び頭を下げた。




「お礼を言いたいのはこちらですよ、ショーク様。それでは、報酬のはなしですが……」と、俺が依頼料の話をしようとすると、ショーク様が制してきた。




「いらん。礼は、さっきの件のものだけで十分だ。」



「いえ、しかし、これほどの鞘に対して、依頼料がないというのは……。」



「俺は受け取らない。置いて行っても、返しに行くからな。次からの注文では、きっちり金をとる。今回だけだ」というと、ショーク様はそっぽを向いてしまった。




この人は頑固だ。受け取らないと言ったら、絶対に受け取らないだろう。ここは、お言葉に甘えようか。次からの注文では、しっかり色を付けて払おう。あとはその分、エリックに返していこう。




「わかりました、お言葉に甘えさせていただきます。」


俺がそういうと、ショーク様は頷いた。





その後、俺は二人に別れの挨拶と今回のお礼をし、また、エリックと学園での再会を約束して、屋敷へと戻った。














ーー













冬休み最後の週、キースの訓練も冬休み最後だ。鞘が出来上がったから、いよいよ、蓄電の訓練だ。



「キース、受けた雷魔法を今までは地面に流していたが、それを鞘に溜めるイメージで流せ。鞘自体にも、雷を溜めるというイメージも持ってな」と俺が言うと、キースは頷いた。



「では、ヘンゲーナ先生、よろしくお願いします。」




「えぇ、わかったわ。いくわよ、キース君!」

『雷刃』





『避雷針』



先生の放った、雷刃がジルの魔刀へと引き付けられる。そして、魔刀を伝い全身に雷が走った。



「くっ……。」




……キースの精神力は本当にすごい。今回で訓練は三回目なのにもかかわらず、もう叫び声をあげなくなった。このまま、怪我無く終わってほしい。



「キース、そのまま鞘に雷を流して、留めるイメージで!」



俺がそういうと、雷が鞘に集まっていった。



「そう、その調子だ!」



雷は鞘に収まりかけたが、次の瞬間、「はぁ、はぁ、くっ……!」という、キースの声が聞こえ、その瞬間、雷が周囲に散った。


『氷壁』



俺は間一髪で、全員への放電を防いだ。




「す、すまない、アース」と、キースは息を切らせながら謝ってきた。



「全然いいさ、まだ一回目だからな。俺がサポートするから、できるまで頑張ろう!」



「あぁ、頼む。」







ーー







それから、キースは休憩なしで三十回以上繰り返した。




「はぁ、はぁ……、も、もう一回お願いします。」



「キース君、これで最後よ。もう体が持たないわ、これでできなければ、次回また頑張りましょう。」




……俺がするべきことは、ここでキースを止めることではない。キースを信じて、応援することだ。




「キース、キースならできる。俺が選んだ、側近なんだからな!」




俺がそういうと、キースは笑った。





『雷刃』


『避雷針』






「くっ……。」



雷が、魔刀、そしてキースの身体を経て、鞘へと集まる。今回は雷が、ほとんど鞘に収まっている。





『キース、その調子だ、行けるぞ!』


『キース、お前ならやれる!』


『キース、頑張って!』


『キース、あなたならできます!』




俺の声援に続き、側近たちが声援を送る。





「くああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」と、キースが最後の力を振り絞り、雄叫びを上げる。



『収電』



キースがそういうと、雷が鞘へと収まり、鞘が青白く光った。







「……せ、成功だ。成功だよ、キース!」



俺たちは、駆け足でキースのもとへと駆け寄った。



「流石俺の幼馴染だな。」


「キースならできると信じていたよ。」


「流石ですね、キース!」






「あぁ、ありがとう。みんなのサポートのおかげだ」といい、キースは笑った。



「キースが頑張ったからだよ、信じていたぞ、キース。」


「あぁ、ありがとう。」



そして、俺たちは笑い合った。





「素晴らしいわ、キース君。三回目で、初級雷魔法をクリアするなんて。ただ、これからも訓練は続けましょう。収電するスピードを速めて、あとは中級以上の雷魔法を耐える訓練も必要だわ。学園に行ってからでも、アース君の能力があればいつでも帰ってこれるわよね? 私もできる限り、手伝うわ」と、ヘンゲーナ先生はキースの頭に手をのせていった。



「はい、よろしくお願いします!」


「俺からも、よろしくお願いします」と、俺はキースに続いて頭を下げた。そして、俺たちに続いて、他の三人も頭を下げた。




「えぇ、もちろんよ。訓練ももちろん重要だけど、学園生活の方も楽しみなさいね?」と、先生は俺たちに笑いかけた。




「はい!」と俺たちは全員で、返事をした。









ーー













今日は、冬休み最終日だ。

俺たちは、転移陣の前に来ている。


「アース、冬休み中にいろいろあったが、学園ではしっかりと楽しんで来なさい。何かあったら報告するのだぞ?」と、父上が涙を浮かべていった。


全く、そろそろ子離れをしてほしいものだな。俺は引きつる顔を何とか抑え込み、笑顔でうなずいた。




「アース、帰ってきたらフローラ様たちとまた、お茶会をしましょうね。楽しみに待っているわ。」



「はい、母上。 では、父上、母上、行ってまいります!」







さぁ、一年後期がスタートだ。どんな学園生活が待っているのか、楽しみだな!


これにて第六章は完結です。皆様の応援のおかげで、ここまで投稿を続けることができました。本当にありがとうございます! 第七章以降も、ますます頑張っていく所存です。


第七章は水曜日から、開始予定です。


また、第六章完結を機に、評価やブックマーク登録、そしてご感想をいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。



「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるの!」


「第七章が楽しみ!」


と思いましたら、下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いいたします!



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何卒、よろしくお願いいたしします。

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