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では、本編をお楽しみください。
「しょうがないじゃないか、俺の怒りが爆発しそうだったんだから! お前ら騎士組だって、今朝の訓練中、まるで目の前に敵がいるんじゃないかと思わせるくらいに、魔刀を一心不乱に振っていたじゃないか!」と、俺は反撃をした。
「それは……」と、騎士組たちが顔をそむけた。
騎士組たちも、やはりストレスを発散したかったようだ。しかし、白薔薇姫を発動しようとしたことは、素直に謝らないとな。いくら、ジルを害すると言われたとしてもな……。
「ただ、あの時は止めてくれてありがとう。あのまま、白薔薇姫を発動していたらどうなっていたかわからないからな。」
「あれは仕方がないよ。流石にいくら王族とはいっても、内容がひどすぎた。」
「そうですね、アース様の主でもあり友人でもあるジルベルト殿下のことを、あのよう言われたら……。」
「気にするな、次も俺たちが止めてやるから。」
「あぁ、皆ありがとうな。」
それにしても、目の前で宣戦布告をされたようなものだ。ジルのガードも強めないとな。ジルの守りを……、双子にも魔刀を授けるべきだろうか?
「主、そろそろ時間ですよ! 早く行きましょうよ!」と、ローウェルが暗くなった雰囲気を明るくしてくれた。
あ……、もうそんな時間か。じゃあ、行くとしますか。
『大窓』
ーー
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」と、突然叫び声が窓から聞こえてきた。
何だ、何か事件が!! と、焦る俺をよそに、ローウェルが冷静に現状を伝えてきた。
「主、窓は工房の前に出さないとだめじゃないですか。いきなり窓が現れたら、慣れていない人はびっくりしますよ?」
しまった……、楽しみすぎてエリックの作業部屋に、直通の窓を開いてしまったのか。びっくりさせてしまって、申し訳ないな。
「エリック、こんにちは。驚かせてしまって、すまないな」と、俺は窓から話しかけた。
「アース様……。よかった、アース様で……。本当に、びっくりしましたよ」と、エリックが泣きそうな顔をしていった。
「すまなかった。そっちに行ってもいいか?」
「はい、ご注文のお品はできていますよ! 早速、ご覧ください!」
エリックも、早く自分の作品を見てほしそうだな。自信がありそうだ。
――「さぁ、早速見せてくれるか?」
「はい! まずは、アース様のピアスからですね」とエリックは、虹色に輝くピアスを差し出してくれた。
これは……、すごいな。氷をデザインもすごいが、機能性も備えている。文句のつけようもない作品だ。
「すごいな、エリック。最高のピアスだ、エリックに依頼して本当によかったよ。」
俺がそういうと、エリックは涙を浮かべた。
「お、俺の方こそ、アース様が最初のお客様で本当にうれしいです。それに、ルーン石の加工という貴重な経験をさせていただき、本当にありがとうございました」と、エリックは頭を下げた。
「あぁ、また何かあったら頼んでもいいか?」
「もちろんです!」と、エリックは笑顔で言った。
そして、「側近の方々もどうぞ!」と、エリックは、側近たちが伝えたイメージ通りのピアスを、配り始めた。
「これは……、本当に見事だな。」
「うん、本当にね。男女ともに会うデザインだね。」
「そうだね、俺の土人形も細部まで丁寧に再現されているよ。みてくださいよ、主!」と、ローウェルが土偶を見せてきた。
ローウェル、それを日本でつけていたら、変な目で見られるからな? 日本に、土偶のピアスとかって売っているのかな?
「自分は初めてのアクセサリーが、このように素晴らしいもので嬉しいです! ありがとうございます、エリック。」
「はい、俺も皆さんに喜んでいただけてうれしいです。」
本当にうれしそうだな、自分の作品を家族以外に喜んでもらうことが初めてなんだろうな。
「エリック、本当にありがとう。ピアスをつける前に、先に報酬を渡したい。遠慮なくいってほしい」と俺が言うと、エリックは動揺し始めた。
安心しろ、エリック。お金は国が出してくれるから、どれだけ高くても丈夫だぞ!
「……いえ、報酬は受け取れません! 何しろ、ルーン石の加工という貴重な経験をさせていただいたのですから! むしろ、こちらがお支払いしたいくらいです!」
そう来たか……。いやでも、このピアスをただで受け取るわけにはいかないからな……。
「エリック、ショーク様は普段アクセサリーのオーダーメイドをどれくらいの値段で請け負っているんだ?」と、俺は相場を尋ねてみた。
「父上ですか? そうですね……、金貨百枚くらいが平均だと思います。」
「なるほど、じゃあ、五人分で金貨五百枚を支払うな。」
これは、妥当な報酬だろう。それくらい見事な作品だからな。
「金貨五百枚――!!?? そ、そんな大金受け取れませんよ!!」
「いや、支払わせてくれ。」
「いえ、無理です!!」というと、エリックは半泣きになった。
「主、それ以上は可哀そうなのでやめてあげてください。報酬なら別のものを」と、ローウェルが間に入ってきた。
そ、そうだな……。こんなに拒否されるとは思っていなかったな。
さて、どうしようか。職人の彼が、喜んでくれそうな報酬は……。あ! いいことを、思いついたぞ。
「ローウェル。このピアスは、流行ると思うか?」
「……なるほど、そういうことですか。はい、はやると思いますよ。耳に穴をあける行為がネックにはなりますが、目に見えておしゃれですからね。男女問わず、人気が出るでしょうね。それに、アース様はいろんな意味で目立ちますから、余計にですね。エリックにピアス独占的につくる権利をあげたいのでしたら、主の名で特許を申請して、主を介してエリックを紹介するという、紹介制の形にした方が良いでしょうね。その方が、エリックは作ることだけに集中できますし、この店に人が殺到することも防げますね。申請なら、俺が後でやっておきます」と、ローウェルは流れるように段取りを決めた。
……。
え? 優秀を通り越して、怖いんすけど? 今から話そうとすることをすべて言ったうえに、申請の手続きまで請け負ったぞ。
「……ありがとう、ローウェル。優秀で何よりだ」と俺がいうと、ローウェルは嬉しそうに笑った。
ローウェルを敵に回すであろう、聖王国の連中は本当にご愁傷様である。
「ということだ、エリック。お金は受け取ってもらえないようだから、職人のお前が好きそうな報酬だとは思うが、どうかな?」
と、俺が言うと、エリックは少し考えた後に、笑顔でうなずいた。
「……は、はい! うれしいです! 俺だけがつくれる、アクセサリー……。いっぱい、いいものをつくって、アース様にお渡しします!」
「そ、そうか……。他のお客相手とも、しっかりやれよ? まぁ、俺の仲介が入るけどな。」
「わかりました!」と、エリックはうれしそうに笑った。本当にわかっているんだよな?
「あと、やはりお金は必要だと思うんだ。設備とか、材料とかのためにな。だから、俺がエリックのパトロンになってもいいだろうか? エリックの技術を支援させて欲しいんだ」と俺が提案すると、エリックは泣き出した。こいつ、結構泣き虫だな……。
「……お、俺なんかでよければ、お、お願いします!」
「ありがとう、とりあえず泣き止んでくれるか? かっこいい顔がだいなしだぞ?」
エリックは時間をかけて、落ち着きを取り戻したようだ。
ーー
「さて、じゃあ、いよいよ耳たぶに穴をあけようか。」
「げっ、遂にこの瞬間がきましたか」と、ローウェルはあからさまに嫌な顔をしたが、騎士組はいつでもいいという風な顔をしている。これが職業による違いだな。
「はー、いいよなお前ら騎士連中は。痛みに耐性があるもんな」と、ローウェルがキースをにらんだ。
はー、また始まったか。この流れはあれだな、もうネタの域だな。
「じゃあ、お前はつけなきゃいいだろ?」
「嫌だよ!俺だけ、仲間外れなんて!」
「ガキだな。」
「あ?」
「はいはい、幼馴染たち。じゃれるのは、それくらいにしろよな」、俺がそういうと、二人は恥ずかしそうにそっぽを向いた。




