ヒロインではないんだよ。
※ヒロインではありません。の続編です。
こちら単体でもお読みいただけると思います。
今日も今日とて推しカプが尊い。
同じ世界線にいられるだけで有り難いし神様仏様ありがとうございますって感じなのにこんなに近くで二人を拝めるだなんて、わたくし前世でそんなにも得を積んだかしら。
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わたくしの名前はローザリーン・ランマント。ランマント侯爵家の長女ですわ。
わたくしなんと転生者なんですの!
気が付いたのは5歳。目が覚めたら大好きだった乙女ゲームの中に!
正直前世でのわたくし自身のことはあまり覚えておりませんが、まぁこの際いいでしょう。
わたくしがこのゲームを好きだった一番の理由はカップルは固定で邪魔者がいないこと!
両片思いであれ、両思いであれ、他人の恋人に邪魔をする人も泥棒猫もいない。物語に波がないのであまり人気はありませんでしたが、それでもお互いがずっと好き同士を見られるからよかったんですの。
その中でも一番のお気に入りは何といってもライ×ミモ!
ビジュもよければCVも良い。幼馴染との結婚エンドなんてもう大好き。ありがとうございます。
学園に入学する日を今か今かと楽しみにしておりましたの。
それがなんということでしょう。
ライ様はいらっしゃいましたが、ミモたんが隣におりませんの!
このお二人は学園でも私生活でもいつも一緒のはずなのに!
あまりの衝撃に三日三晩寝込んでしまいうなされるほどでしたわ。なんの悪夢かと。
久しぶりの学園ではライ様に思わず詰め寄ってしまいましたわ。貴族の令嬢としてはしたなかったですわ。
エントーリ男爵にはご子息しかいないという噂を聞いていてもたってもいられず、ゲーム内でミモたんが幼少期を過ごしたとされる下町へ向かいましたわ。
そしたら!生ミモたんが!
「か、かわいい。ライ様もですが、本当にビジュがいい。ゲームのキャラなのにこうして生きていても違和感がない…。え、今から最推しにわたくし自ら声をかけなければなりませんの。でも…やりますわ。」
うわー。緊張しますわ。深呼吸して。
「もし、そちらの貴女。よろしくって?」
「は、はい?」
きょとんとしたミモたんかわいっ声もかわいっ。
「あなた名前をなんとおっしゃるの?」
「ミモザと申しますが…。」
知らない人に名前を教えちゃう無防備なミモたん。かわいいやつめ。
…じゃなくて。
「…(あ、だめだわ顔を見ると)やっぱり(かわいい)。(じゃなくて!)ヒロインがこんな場所でなにをしているんですの⁉」
「…え?」
それから全力のオタクムーブでわたくしが転生者であること。ミモザが乙女ゲームの中の主人公であること。実はエントーリ男爵の子供で学園に通うはずであることを伝えた。
「あの、お言葉ですが…私が男爵様の隠し子というのはありえないかと。」
「そ、そんなはずはございませんわ!あなたエントーリ男爵と瓜二つですし」
以前お会いしたエントーリ男爵はミモたんと髪や目の色が違うもののほぼ瓜二つ。
男性なのになぜこんなにも綺麗な顔なのかと思うほどでしたわ。
「あぁ、父の兄だと聞いています。」
「…は?」
聞けば、ミモたんのお父様はエントーリ男爵の弟だそうで、それは似ていてもおかしくないですわね。…え、でもそれって
「そんな、ライ様とミモたんの恋を間近で見ることができませんの…?」
「お嬢様、そろそろお戻りになりませんと。」
「え、ええ、そうね。突然申し訳ございません。失礼いたしましたわ。」
そんなやりとりをし、気が付けば私室のソファに座っておりましたの。
どうしましょう。せっかく生でライ×ミモが拝めると思っていたのに…。
でも今日の下町スタイルもよかったなぁ。
「…はっ!そうですわ!学園で拝めないからなんですの!私がお二人のところに通えばいいだけじゃないですか!」
そうと決まれば憂いることはありませんもの!
「姉さん。何を騒いでるの。」
弟のオーリーがノックもなしに部屋に入ってきた。
「レディーの部屋にノックもなしに入ってくるなんてマナーがなっておりませんわね。」
「淑女は大きな声で騒がないけどね。」
「うぐっ…。」
実の弟ながら手厳しいですわ…。
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Side オーリー
姉さんは幼いころから少し変わっていた。
商人の息子と男爵令嬢の恋物語を事実であるように語るのだ。
調べてみると確かにその二人は存在した。男爵令嬢ではなかったが。
でも姉さんが言うほど熱狂するものなのか?
やわらかいブロンドヘアーにピンクトルマリンの瞳。弟の僕から見てもとても可憐で清楚だ。
「僕にとっては姉さんが唯一のヒロインだけどね。」
本当にどうしてこうなった。
令嬢ははじめこんな残念なキャラの予定ではありませんでしたが、いつの間にかこうなっていました。
弟もいる予定ではありませんでした。
いつの間にか勝手に弟が出てきてしまいました。