表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誘惑しよう!どうしよう!?  作者: 栗須まり
4/17

いざ!どっちだよ!?

あれから一度だけダニーの元へ、フレッドから手紙が届いた。

そこには園遊会に令嬢が現れる筈だという事と、今回の行動についての反省や謝罪の言葉が綴られていた。

それを読んだリアムは複雑な気分にはなったが、こうして腹を決め園遊会へ参加したのである。

会場での表彰式もそろそろ終わりに近付き、集まった人々は例年通りなら社交に勤しむ。

動き出すとするならば、今が頃合いだろう。

ハァ‥と深い溜息を吐くリアムに、ダニーは近付き肩を叩く。

「嫌がってるのは分かるけど、本当は"仕方ないやってやるか"とも思ってるよね?フレッドに腹を立てながらも、君は彼の為に出来る事をしてやるつもりなんだ。違うかい?」

「まあ‥そうだな」

フッと笑ってもう一度ダニーはリアムの肩を叩く。

「何だかんだ言っても、友達思いだからねぇ君は。私の次に」

「そこは私を褒めるだけでいいんじゃないか?余計な一言で、やる気が半減したぞ」

「いやいや、2人の間でこんな面倒くさい事やってる私こそ褒めてくれ!ウチの者にレイウッド家のタウンハウスを張らせたり、この会場で令嬢がどの位置にいるかまで調べあげたんだからな!あー苦労した!あーしんどい!」

「分かった。ダニー君は偉い!以上!」

「氷結!言葉が氷結!君ねぇ、これから女性を口説くんだから、もっと甘く優しく話さなきゃいかんよ!?ほら、私が教えた甘い言葉、練習しただろ?今リハーサルしてみなよ?」

「今か!?いや、本番には強いタイプだから、今やらなくても‥」

「今出来ない事が本番で出来る筈ないだろ!ほら、私を令嬢だと思って、さあ!」

「‥‥どうやら私は‥貴女に出会う為に、‥生まれてきた様だ‥くっ!」

「ん?どうした?」

「歯が浮いて‥」

「我慢しろ。その顔でこのセリフを言われて、落ちない令嬢はいない!もっとサラッと言えばイチコロだ。さあ、もう一度!」

「いや、これ以上練習したら、噛み合わせが悪くなる気がする。それより令嬢は何処にいるんだ?今動かないとどうでもいい連中に捕まって、身動き取れなくなるぞ」

「それもそうだな。え〜っと、森への小径付近だと聞いたから、東の方‥あっ!あの二人組じゃないか!?」

「どこだ?」

「ほら、ヘイワード伯爵夫人の隣!従姉妹と二人での参加で、二人共黒髪にボンネットを被っていると聞いたから、あの二人に違いない!」

指差しはマナー違反なので、顎をクイっと右へ動かすダニーの示した方向へ、リアムは目線を向ける。

そこには世話好きで有名なヘイワード伯爵夫人がおり、その隣に二人の女性が立っていた。


「で、どっちがアシュリー嬢なんだ?」

「それがさぁ‥‥‥‥分からないんだよね」

「は?」

「だってさ、元々令嬢の容姿は知れ渡ってないし、2人共黒髪で背丈も同じくらいだし、張り込ませた者も、分からなかったって言うんだからしょうがないだろ?」

「今か!?いざ、出陣というこのタイミングで、よりによって今カミングアウトするのか!?」

「いや〜悪い悪い。でもまあ、リアムならなんとかなるかなぁってね。君の勘は当たるし、君の選んだ方がきっとアシュリー嬢だよ」

「その何の根拠もない信頼感は、どうかと思うぞ。それでも少し位は情報が無いのか?」

「無いんだなぁこれが。2人共髪色は同じだけど、瞳の色は違う様だね。君はどっちだと思う?」

悪びれもなく言うダニーには呆れたが、いずれにしろ今更やめる訳にはいかない。

リアムは仕方なく、辛うじて顔が確認出来る位置にいる、2人の令嬢を見比べた。

1人はあまり顔色が良くない様で、心なしか元気が無い。

もう1人は表彰式より小径の先の方が気になるらしく、森の方をジッと見ている。

しかし森を見つめるその緑の瞳に、何故だか妙に興味が湧いた。


「‥左だな」

「左?ふうん‥そう、左の令嬢ね。うん、いいんじゃないかな。多分左がアシュリー嬢だよ」

「テキトーだな。そんなんでいいのか!?」

「大丈夫さ。なんたって君は神の愛子だからね」

またそれか!と、心の中で悪態をつき、もう一度深く溜息を吐く。

「‥じゃあ、行って来る」

「おお!いよいよだね!それじゃあ私は、もう1人の令嬢を観察しているよ。後で馬車の前で落ち合おう」

「分かった」

ダニーとそう打ち合わせ、ターゲットとなる令嬢を再び見る。

しかし‥ほんの少し目を離しただけだというのに、いつの間にかさっきの場所に令嬢の姿がない。


いない!一体何処へ‥


焦りを感じて顔をしかめると、近付いて来たどこぞの令嬢がビクリと肩を震わせた。


フン!ちょうどいい。このまま不機嫌オーラ全開で行けば、鬱陶しい連中も寄って来ないだろう。

さて、ターゲットを探さなければな。


そう考えて浮かんだのは、さっき見た時の令嬢の視線の先だ。

やたらと森を気にしていたから、恐らく小径の先へ向かったのだろう。

ざっと会場を見渡して、緑の瞳が見当たらないのを確認すると、リアムは森への小径を進み始めた。

読んで頂いてありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ