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誘惑しよう!どうしよう!?  作者: 栗須まり
2/17

冗談だろ?

リアムがフレッドの家に到着した時、既にフレッドはかなり酔っていた。

先に来ていたダニーに尋ねると、彼のこの様子は女性に振られた所為だと言う。

そんな事ぐらいで普段温厚な彼が、自暴自棄の様な状態になるとは、やはり女性とは関わり合いになるものじゃないなと、改めて感じた訳だ。

荒れた様子で酒を飲むフレッドは、その女性の素性を話し始める。

名前はアシュリー・レイウッド。

西部に領地を持つレイウッド伯爵家の令嬢だそうな。

レイウッドと聞いてもピンと来ないリアムに、ダニーが自分の知ってる情報を話す。

体の弱い伯爵は療養の為に、気候の温暖な領地から出る事は滅多に無いらしい。

伯爵夫人は数年前に他界しているそうで、幼い弟や体の弱い父親に代わり、領地運営や伯爵家の管理を、令嬢が全て取り仕切っているとも話していた。

その為令嬢は社交デビューもしていないので、誰もその容姿を知らないのだと。


「へえ。結構苦労人な令嬢なんだな。でも、そんな境遇なら領地から出る事は無いだろう?どうやってフレッドと知り合ったんだい?」

リアムが問いを口にすると、フレッドが切なげに答える。

「最初は全くの偶然だと思ったんだ。でも2度目ともなると、運命だと勘違いするだろう?今となっては‥本当に勘違いだったと分かるがね‥」

そう言ってポツリポツリと今迄の出来事を語り出した。


最初の出会いは本屋で、同じ本を同じタイミングで手に取ろうとしたと言う。

そこはレディファーストでフレッドが譲ると、お礼にと言って近くのカフェでお茶を奢って貰う事になったのだと。

同じ作家のファンである令嬢とは話も弾み、あっという間に時間が過ぎた。

名残惜しい気もしたが、令嬢は従姉妹と待ち合わせをしているとの事で、その時はそのまま別れたのだそうだ。

次に出会ったのもやはり本屋で、その時もフレッドと同じ本を探していたという偶然が起こる。

前回の出会いから何となく忘れられなかったフレッドは、これを運命だと感じたらしい。

その後令嬢をお茶に誘って、お互いの趣味や身の上を語り合った。

あまり自分の事を話したがらない令嬢だったが、今年13歳になる弟が、王都の学園へ入学する準備の為、長らく使われていなかったタウンハウスを整えに来たのだと語ったそうだ。

ちょうど園遊会の招待状も届いた事から、父である伯爵が、やはり社交デビューしていない従姉妹と共に、この機会に暫く王都での生活を楽しんで来る様勧めてくれたと。

暫くという不確定な期間に、焦りを感じたフレッドは、王都の案内役を買って出た。

そうして何度か2人で過ごし、昨日正式なお付き合いを申し込んだ所‥見事に振られたのだそうな。


「‥気持ちはとても嬉しいと言ってくれたよ‥。でも、私と付き合うのは無理だとさ。なあダニー、私とは無理だというのは、私よりレベルが上の男じゃないと受け入れないって事か?」

「いや、君程のレベルは滅多にいないだろうよ。家柄や財産に加え、君自身かなり見栄えのいい容姿だし、それを上回る独身男性なんてリアムくらいだな」

「リアム‥。そうだリアムだ!なあリアム、君‥彼女を誘惑してくれないか?」

突然フレッドが言い出した訳の分からない提案に、リアムもダニーも困惑した。

当然リアムはそれに素早く反論する。

「お、おいフレッド、何でそんな発想になるんだ?そんな事したってお互い何のメリットも無いぞ!」

「ある!何故なら君になびくならば、私も諦めがつくからだ!」

鼻息荒く強い口調のフレッドに、リアムは目が点になる。


もう、どこから突っ込めばいいんだ!?

こういう時はダニーの出番だな。

彼なら上手く宥めてくれるだろう。

と、リアムが思った時だった。


「あ〜分かるな〜その理屈。相手がリアムならしょうがないってなるよな。うん」


おい!ダニー!

そこは同意する所じゃない!

心の中で激しく突っ込みながら、チラリとダニーへ目線を送る。


「まあ、ほらアレだ。何てったってリアムは、神の愛子だからさぁ、ヒック!」


ん?


「そうだ!ヒック!神の愛子なら、誘惑なんて朝飯前だ!頼んだぞリアム〜ウィック!」


んん?

2人は酔っているのか?

ふと2人の周りを見渡せば、いつの間に呑んだのか、空になったボトルが何本も転がっている。

ああ、そうだった。

ダニーは突然酔いが回るタイプなのだ。

フレッドも完全に酔っ払っているし、これは適当に付き合えば明日には覚えていないだろう。

そう思ったリアムは、2人が酔い潰れるまで酒に付き合い、寝落ちた所を見届けると、明け方近くに家へ戻った。

酒には強い方だけど、今日は些か飲み過ぎた。

まあ、フレッドも暫くすれば元気を取り戻すだろう。

そんな呑気な事を考えて。


読んで頂いてありがとうございます。

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