表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誘惑しよう!どうしよう!?  作者: 栗須まり
1/17

ハレの日に晴れない気分

久々に書いてみました。

王城から聞こえる祝いの空胞に、煌びやかな衣装で集う人々。

オスタニア王国の王立庭園では、毎年この時期になると王家主催の園遊会が開かれる。

ここにはほぼ全ての貴族はもちろん、前年度で優れた功績を挙げた、庶民出身の著名人達も招待されており、彼等を讃えるセレモニーもこの園遊会の見どころであった。

次々と名を呼ばれ、国王自ら授けられる勲章を胸に着けた彼等に、参加者達は皆拍手でそれを讃える。

まさにこの園遊会で最高潮の盛り上がりを見せる中、1人浮かない顔色の若者がいた。

煌めく銀髪にアメジストの瞳、名のある彫刻家をも唸らせる完璧な造形美のこの若者は、憂いた顔すら女性達の視線を集める。

けれど、うかつに声を掛けられないという事は、貴族の間では誰もが知る所であった。

何故なら今迄どの様な美女が近付いても、誰一人として成功した試しはなく、それどころか皆手酷く振られて来たのだから。


国内に三家しかない公爵家の内の一つ、ウォルシャー公爵家の嫡男である彼は、名をリアム・コーヴィル・ウォルシャーという。

先代国王の妹、美貌の王女エレイナを祖母に持ち、父は現国王と従兄弟同士という血筋もさることながら、幼少期から優れた頭脳と容姿を兼ね備えたリアムは、神の愛子と呼ばれていた。

それ故彼を狙う女性は後を絶たず、少年期には何度も襲われかけた苦い思い出を持つ。

お陰ですっかり女嫌いに育った彼は、25歳になった現在でも結婚する気が全くない。

後継の心配をした両親が、何度か見合いの話を持って来ても「後継なら嫁いだ姉上の産んだ子でいいでしょう」と、独身を貫く意思を示し続けていた。

が、そんな彼の意思を曲げざるを得ない出来事が訪れる。


「あ、いたいたリアム!君は目立つから探し易くて助かるよ〜!」

学生時代からの友人の一人、ダニー・レジストンが陽気に声を掛けた。

ハァーと深い溜息を吐いたリアムは、眉間に皺を寄せた顔でダニーに問いかける。

「本当にやらなければいけないのかダニー?君がフレッドを説得してくれたら助かるんだが」

「無理だね!今のフレッドには何を言ったって無駄だよ。なんせ彼の中では、君以外の適任者はいないと思い込んでるんだから。まあ、腹をくくれば簡単だろ?だって君は神の愛子なんだから」

「愛子って‥そんなの勝手につけられたあだ名じゃないか。第一私は、その分野を徹底的に避けて来たんだからな!どう考えたって上手くいくとは思えない」

「そうは言っても"アレ"がフレッドの手元にあるんじゃしょうがない。君が断れば、フレッドは即座に行動に移すと思うよ。この前は落ち込んでいたけど、今は復讐に燃えてるからねぇ」

苦笑いでなんとか宥めようとするダニーに、リアムはまた溜息を吐く。

何しろ今からやろうとしている事は、彼が心底嫌悪して来た、女性に関する事柄だからだ。


フレッドというのはもう一人の友人で、ダニー同様学生時代からの付き合いがある。

昔から下心ありきで近付いて来る輩の多かったリアムだが、この二人にはそれを感じなかった所為だろう。

尤も彼等の家柄を考えると、下心等持つ必要もないのだが。

ダニーは現宰相の息子だし、フレッドは貿易業で財を成した名門侯爵家の嫡男だ。

お互い共感する所が多いこの二人とは、何かと集まっては酒を酌み交わす。

そう、あの日もいつもの飲み会のつもりで、ダニーに誘われフレッドの家へ向かったのだ。

それがまさか、今の追い込まれた状況を生み出す原因になるなんて、誰が予測出来ただろう?

読んで頂き、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ