3話
討伐隊一行は鬼が住んでいるらしい鬼ヶ島へと向かっていました。山の麓に着いたとき、1番歳上の若者が言いました。
「よし、この山を越えたら海の方に出るはずだ。全員いるな?」
「おい、18人しかいねーぞ?」
「ん?ほんとだ、逃げたのか?」
そう、逃げたのです。逃げた者はそのまま村に帰ると村に残った人達に非難されるので、討伐隊が鬼退治を終えて戻ってくる頃にいい感じの理由をつけて合流しようと考えていました。そして、同じ考えを持っている者もあと15人ほどいました。
「まあいい、逃げたもんは仕方ねえ。どうせ俺達が鬼退治を終えたあと合流して手柄だけ貰おうって考えだろ。(まあ俺もそうだが)」
「違う道を通って帰ればいいだろ。」
「……(余計なこと言いやがって)、そうだな、じゃあ行くか。」
桃太郎が違う道を通って帰るとか言い出すので、逃げる予定の者達はこの後どうするのか考えを巡らせていました。
しばらく山を登ると、開けた場所に出ました。
「今日はここで泊まる。野営の準備をするぞ!」
その夜、桃太郎は拾い食いをしたため、野営地の近くでお腹を下していました。すると、うめき声や、叫び声が聞こえてきました。
(なんだ?何かあったのか?ちょっと隠れて様子を見よう)
桃太郎が野営地を覗くと、5人ほどの討伐隊メンバーが他のメンバーを刀で殺していました。
(うえっ、、マジか、今出るのはやばい。あいつらが消えるまで待とう。)
そのあと、殺人メンバーは殺した奴らから折れていない刀や僅かな食料を剥ぎ取り、山の中に消えていきました。
(マジか、俺1人になっちまった。たぶんあいつらはしばらく山で過ごして討伐失敗を装って村に帰るかそのままどこか別の場所に行くんだろう。俺はたぶん逃げたことになってるな。)
桃太郎はとりあえず殺されたメンバー達に手を合わせ、殺された村人達に「成仏しろよ。」と言いました。
(俺には名前がかかってるんだ。1人でも行くだけ行ってみるぞ。)
その場に残るのは危険だと判断した桃太郎でしたが、夜の山で歩き回るのは危険な上に血の匂いで獣がくる恐れもあったため、木の上で夜が明けるのを待ちました。