第四十五話 暴かれる世界の謎(公式が言ってただけ)
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20XX/12/31 23:59:59:57
[システムメッセージ]:『42/225109』
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ロストしたはずの親友の姿に変化した目の前の人物。
それに対してミューが示した反応は当然と言えば当然なものだった。
「え? え? え? ………………ホンモノ?」
そりゃそうである。
そいつ――コロコロ姿を変えるのでなんと呼ぶのが適切なのかは分からないが――とりあえずヴィブティの姿をした少女は下げていた頭を上げたのち、だいぶ迷った様子を見せてから、両手を狐の形にして片足を上げる例のキメポーズでにっこり笑顔を浮かべてみせた。
「美少女ケモミミ錬金術師のヴィブティちゃん! 大復活だコン!」
「本物だー!」
両手を広げてミューが抱き着く。
相当勢いがあったはずだがヴィブティはどうにか受け止めた。体幹強えな。
「ヴィーちゃん! ヴィーちゃん!」
「く、苦しいです……ミューちゃん……」
手加減抜きの抱擁らしい。ミューは号泣しており、ヴィブティの言葉は耳に入っていない。声を上げてひとしきり泣いて、ようやく親友から体を離す。泣いた後によくあるやつだが妙に冷静になっている。
「あのー、感激した後で悪いんだけど……これ今どういう状況? さっきまで大賢者様だったのが今はヴィーちゃんで、ヴィーちゃんは確かにさっきロストしたはずで……」
「その辺はちょっと説明が難しいんだけど、まず私――“ヴィブティ”というのは大賢者様が叡智の聖印を使って友人から借りた人格の一つなんですよ。友人の吸血鬼の姿を借りて灰谷都羽と名乗っていたのと同じで」
「つまりヴィーちゃんは最初から大賢者様だった?」
「そうとも言えるけど、同時にここに“ヴィブティ”という人間も確かにいるんです。{一つの月の大地}にいる私の本体の魂を一部分だけ借りて、大賢者様が行動してるので」
「や、ややこしい。え、コンコン言ってるのが借り物の友達の人格なんだよね?」
「そうだコン」
「で、ロールプレイしてない方は大賢者様の人格だったと」
「いえ、これは大賢者様の協力者である私――ヴィブティのプレイヤーの素の人格です。大賢者様はつい先ほどご自身の姿になられるまではご自身の人格を使っていませんでしたよ」
「本当にややこしい!」
ミューが頭を抱える。ヴィブティがアホみたいなロールプレイをしていなければこんなややこしさは生まれてないのだが。
「えーと、それでさっきロストしたはずのヴィーちゃんが、普通にここにいる理由は?」
「それに関してはなんというか……」
「偽装死ってことだろ。つーかヴィブティ、ちゃんとロールプレイしろやー」
解説ついでに野次を飛ばす。
ヴィブティが非難するように顔をしかめてこっちを向いた。偽装死せざるを得なかった理由は察しがつくし必要性も理解はするが、さっきのミューの落ち込みようを見せられたのだ。これくらいの野次を飛ばす権利は俺にはあると思う。
ミューはピンと来ていないらしい。
「偽装死って?」
「ちょっと、こう、うちはラスボスに挑むわけにはいかない理由があったコン。だから適当なタイミングでリタイアするつもりが、色々アクシデントがあってああなっちゃったコン」
「……つまり、あのPVPの時、自分から死ににいった?」
「そうコン。助けてくれたヨシヤさんと保護してくれたゾンさんには申し訳ないと思ってるコン。もちろん悲しませちゃったミューたんにも」
ケモミミをペタンと折り、再び頭を下げるヴィブティ。
あのときゾンに『アンタらしくもない』と言わなかったのはこれが理由だ。たぶんコイツは隙を見てゾンの庇護下から逃げて、もらった罪貨もその辺に捨てた上で適当な奴にやられたのだろう。いくらゾンでも自分からロストしにいく奴を止められはしない。
「ラスボスに挑むわけにはいかない理由って?」
ミューが当然の疑問を投げかける。
それを手で制してヴィブティはこちらを向く。ロールプレイを忘れて。
「あの、先に聞きたいんですけど。ヨシヤさん、さっきの口ぶりだと、今の私――ヴィブティのことをずっと『誰だコイツ?』って思ってたってことですよね。それはいったいいつから?」
「初対面の時からだよ。ウルトの街の宿でアンタが勢いよく扉蹴って出てきて、そのせいで俺が吹っ飛ばされたあの時からだ」
「……そんな最初から?」
「正確にゃアンタに【錬金術】のスキルレベルを見せてもらった時からだな。1周目をちゃんとプレイした奴なら絶対に犯さないミスをしてたんだよ、アンタはよ」
右手に持ったままだったリンゴのようなアイテム<(R)知恵の実>を齧る。
ついでに冒険用鞄から<(R)原罪の果実>を取り出す。こちらは血のような色のリンゴみたいなアイテムだ。俺たちが最後のレベリング“握手会”で使ったあのモンスターボールみてえな捕獲アイテムである。
メニュー画面を開き、ある生産スキルのトレーニング表を表示する。
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【錬金術】
LV8:ゴールドインゴットを500個作る。必要SP9、器用さ+4
LV9:原罪の果実を10000個作る。必要SP9、器用さ+5
LV10:原罪の果実を40000個作る。必要SP15、器用さ+6
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「あの時点でアンタは【錬金術】LV9になってた。だが計算が合わねえんだ。
<(R)原罪の果実>の材料は宝石の<(R)真珠>とこの<(R)知恵の実>だ。<(R)真珠>はいいさ。いろんなところで初期から手に入るからな。だが、<(R)知恵の実>がドロップするようになるのは第二の試練{黒の隧道}より先のエリアだ。
{黒の隧道}がクリアされたのは俺たちが会ったあの日の一週間前。つまり【錬金術】をLV8からLV9に上げる時間はどんなに長く考えても1週間しかなかったんだよ。
シュレッダーやってるときにミューには話したよな。<(R)原罪の果実>は【錬金術】だと1個作るのに丸1分かかる。
ミュー、計算してみ」
前に折り鶴の数を計算した時もそうだったがコイツは暗算が得意だ。昔そろばんを習ってたかららしい。
ミューは指でそろばんをはじくような仕草をして、すぐに答えを出す。
「えーと1分かかるやつが1万個だから1万分。1週間で割ると毎日1428分やらないといけない。24で割ると毎時59.5分の作業……つまり毎日ほぼ不眠不休で24時間やり続けないと間に合わない?」
「そうだ。しかもそれは材料が揃いきってる場合の話だ。{黒の隧道}がクリアされたからってすぐに十分な量の<(R)知恵の実>が市場に出回るわけじゃねえ。出回るにしても買い付けに出かける時間が必要だ。つまりどう計算してもあの時点で【錬金術】LV9になってるのはおかしい。
だからずっと『誰だコイツ』って思ってたんだ。1周目にはプレイしてなかったっつってたが、それが嘘で俺の知らないスキル上げ短縮グリッチを知ってた古参プレイヤーなのか、そうじゃなきゃなんでもアリな開発側の人間だろうと思ってた。田神の手下かも、とかな。
それが第四試練のボス戦の後に田神に聞いてみたら開発や運営の人間はこの世界に呼んでないってマジ顔で言うもんだから、『じゃあ誰だ?』ってなってな。ゾンとの話なんかを考慮して消去法で考えると魔法王国の大賢者が容疑者最右翼に浮上したわけだ。
なぁ、ヴィブティ。どうせそれまで【錬金術】のスキル上げなんてまともにしてなかったんだろ?」
ヴィブティが悪びれもせず頷く。ようするに公式チートだ。
「そんな初歩的なミスをしてるとは思ってませんでした。ヨシヤさんが【錬金術】を高レベルまで上げてる人を探してると聞いて管理者権限で強引に上げたんですが、やりすぎでしたか」
「少しだけな。……ま、普通は気づかれねえけどな。こんなの」
実際ヒントはすべてミューも持ってたはずだが、まるで気づいていなかった。これで気づくのは俺みてえな誰でも疑ってかかる人間か、ゾンみたいな頭のおかしい人間だけだろう。
「バックドア? とかいうのはよく分からなかったけど、ヴィーちゃんがこの世界で田神さんと同じくらいの力を持ってたっていうのは分かった。……ただ」
腕組みをしてミューが漏らしたのは先ほど保留になったのとは別の問いだった。無関係でもないのだろうが。
「ヴィーちゃん……大賢者様は魔族の侵略を阻止するためにこっちの世界に来たって話だったよね。……阻止できたの?」
「できてないコン」
「え? ……失敗したの?」
「そもそもまだ何もしてないコン」
ミューの顔が固まる。そこに落胆の色がありありと浮かんでくる。
{一つの月の大地}――現実世界では世界蝕が起きてからすでに一年が経っている。大賢者が何もしてないのであれば魔族の侵略によりすでに世界は無茶苦茶になっているだろう。日本でもどれだけの人が犠牲になっているか。
とミューが考えているのはその暗い表情から手に取るように分かった。
「ヴィーちゃんの本体の体は今も現実世界――{一つの月の大地}にあるんだよね? 大丈夫なの?」
「ええ、そこは大丈夫です。絶対に」
「どこか安全なところに避難してるってこと?」
「そういう意味ではありません」
そのヴィブティの答えで確信する。
「やっぱそうなのか」
残された最後の二つの世界の謎。
どちらもこの世界のすべてをひっくり返すようなことだ。
二十二万のプレイヤーのほとんどが想像もしていなかったこと。
「今からなんだな?」
ヴィブティは俺の問いかけに真顔で頷いた。
寒気で体が震えるのを自覚する。
ミューが気落ちした顔で当然な疑問を投げてくる。
「今から魔族の侵略を阻止するってことですか? ……もう一年経っちゃってますけど」
今更どうにかできるものなのか。ミューがそう考えているのも分かる。
「なぁミュー。去年の大みそかって何してた? この世界に取り込まれる寸前だ」
「なにって……普通に家で寝てましたけど」
「レンカは?」
「寝てたけど?」
二人は共に怪訝な様子を隠していない。何の意味があるんだこの質問って顔だ。かつてゾンに同じ質問された時の俺もそうだった。
あれはゾンからのヒントだったんだ。
「俺はこの質問を暗黒街の連中にしたことがある。十人か二十人か……けっこうな数に聞いたが全員同じ答えだった。家で寝てたってな」
変わらず話の意図を理解できてなさそうな二人は置いといて、今度は田神に問う。
「俺たちの体は現実世界の俺たちの魂を元に生成したものだとか前の質疑応答の時に言ってたな。ありゃ具体的にはどういう意味だ? 現実世界の俺たちは昏睡して目覚めない感じか? それとも体ごと消えて行方不明か?」
「……こ、後者だ。体を構成する物理情報を魂に凝縮した上でこの世界に召喚したから周囲の人間からは突然消えたように見えただろう。ど、同時に始まった蝕の方が大事だから、たいした騒ぎにはならなかっただろうが」
「その召喚をするのに、対象が睡眠状態じゃなきゃいけないなんてことはないな?」
「……ない。……ま、まさか……そういうことなのか?」
田神大悟が俺と同じように体を大きく震わせた。
気づいたのだ。すべてがひっくり返った。
質問は一巡し、再び大賢者へ。
「俺が使えるのが10倍で、今アンタが使ったのが1000倍か。……最初のは何倍なんだ?」
「52万5600倍です」
フリーザみてえだなと思ったが、指摘してもミューとのジェネギャを感じるだけなので黙っておく。
エアうどん捏ねをしながら暗算する。
365で割り、
24で割り、
60で割る。
鳥肌が立つ。予想以上に短い。
乾いた笑いが腹の底から湧いてきた。この女、マジでふざけたことを世界の裏側でしていやがった。
「どういうこと? さっぱり分からない」
目を尖らせながらレンカが頬をつついてきた。
俺はヴィブティが持つ賢者の石を指さした。アレを使ったわけではなかろうが。
「ちょうど一年前――去年と今年の年が跨ぐ瞬間に田神の《共同幻想魔術》が発動して、この世界が生まれた。同時に大賢者は《時の凝縮》をこの世界全体に掛けたんだ。――52万5600倍でな」
「ごっ……!? そ、それって」
レンカが指を折って計算を始める。
田神はすでに計算が終わっていたのか、ただ黙っていた。
レンカより先に暗算が得意なミューが答えを出す。
「60秒……1分……ですか?」
「そうだ。俺たちは丸一年かけてこの世界の十二の試練を踏破してきた。1年ってのは言い換えれば52万5600分。だがそれは《時の凝縮》で52万5600倍にされた時間だ。
つまり現実世界では今年はまだ1分しか経ってないんだ。世界蝕が始まってからまだ1分しか経ってない」
しんと静まり返る。
数秒後、レンカが恐る恐る口にする。
「……つまり現実世界ではまだ誰一人死んでいない?」
「違う。違うんだ。それだけじゃないんだ」
大きく首を振る。
この世界最後の謎。
そしてこの世界で最大の嘘。
こちらについてはまだ田神大悟も気づいていないだろう。
ヴィブティ――あるいは大賢者ユリアーネ――あるいは“管理者権限”保持者、灰谷都羽に問う。
「本当はこの仮想世界でも誰も死んでねえんだろ?」
「はい」
再び水を打ったようにしんと静まり返った。
言葉を失う、という表現を使うような場面はこれまで何度も遭遇したが、そのどれよりも静かだった。
誰も言葉を発しないのを確認して続ける。
「考えてみりゃあ当たり前だよな。灰谷都羽が大賢者で、この世界において田神大悟と同等以上の権限を持っていて好き勝手できるってんなら、そうするはずだ。命がけのままにしておく必要なんかねえ」
「ま、待ってくれヨシヤくん。それじゃあこれまでロストしたプレイヤーは……全員どうなっているっていうんだ?」
「知らねえよ。そこの女に聞けよ。想像はつくけどな」
田神はすぐに大賢者に視線を向けた。
ヴィブティの姿のまま、大賢者の声と人格で答える。
「田神社長の《共同幻想魔術》に少し修正を入れさせてもらったので、この世界にきた皆さんの体は元の世界に残ったままなのですよ。この世界には純然たる魂のみで来ていただきました。
そしてこの世界でロストした者はその時点で元の世界へと戻る仕様にしてあります。といってもあちらの世界ではまだ1分も経っていませんから、1年前――この世界の開始当初にロストした人でもまだ目覚めて1分経っていないわけですが」
「……プ、プレイヤーの全員が《共同幻想魔術》の発動を就寝状態で迎えたのも君の仕業か」
「そのとおりです。自動車の運転中や歩行中に突然魂を抜いてしまったら肉体に危害が及ぶでしょう? ですから《共同幻想魔術》の発動準備が整ってプレイヤーの魂に干渉できるようになった段階で、発動予定時間には就寝しているように誘導催眠を掛けておいたのです。もちろん自分の意志でそうしたと錯覚させた上でね」
田神大悟は言葉を失い、固まっていた。
その気持ちは分かる。
「つまり“命がけの世界”なんてのは公式が勝手に言ってただけなんだ。言い換えるとアンタはまだ誰一人として殺してねぇ。結局この世界で命がけだったのは《共同幻想魔術》のために命を賭けたアンタ一人だけだったわけだ」
余命1秒未満の男が入り乱れた感情でくしゃくしゃになった顔を両手で覆った。
蟲に操られて犯したはずの自身の大罪。
そんなものはなかったのだと突然明かされればああいう反応にもなる。
ミューがポンと手を叩く。この世界での日々を思い出すように視線を泳がせながら。
「そういえばヨシヤさん、この世界が本当に命がけなのかずっと疑ってましたね。たしか街が閉鎖されるような後半になってまで。……どうして?」
「勘だよ」
「嘘だー」
「嘘じゃねえよ」
田神大悟は嘘つきだし、性格も悪い。だが悪意はない。だから例のアキバのオフ会で初めて顔を合わせた時、俺の数少ない特技の一つである例の勘が告げたのだ。この男は悪人ではない、と。
だから“命がけの世界”なんていう脅しは、この男の演出に過ぎないのではないかとずっと疑っていた。田神が蟲に操られている懸念が湧き、その疑念は一度揺らいだが、田神以外にこの世界を操作している善人の存在が見えてきて、やはり命がけではない方向に俺の推測は傾いていった。
「え。じゃあヨシヤさんがさっきあたしのこと命がけで助けてくれたのって、死んでも大丈夫だって思ってたからなんですか?」
「ちげーよ。そもそも100%確信があったわけじゃねえ」
だから昨夜コイツに『自分たちは生き残れるか』と聞かれたときに即答できなかったのだ。
「ねぇ……ハルハも? あの子も生きてるの?」
レンカが声を震わせながら問いかけた。
「それは――」
言いよどむ大賢者。
ということはゾンの推測は合っていたのだ。この点においても。
「連れて行かれたのか?」
「……ええ、そうです」
「やっぱか。ゾンに言われて理解したよ。この世界で特に多くの罪を犯した黒ネはロストするとき黒い灰になって消滅してた。1周目じゃ誰が死のうが白い灰だったのにな。あれはアンタや田神の目を盗んで魔王派魔族が仕掛けた罠だったんだな。
恐らくそういう黒は{十二の月が巡る大地}に連れて行かれたんだ」
「……恐らくはそうです。その仕様変更はプレイヤーの魂に直接結びついたものだったので管理者権限でも外すことができませんでした」
大賢者は目を伏せ、レンカに僅かに頭を垂れた。謝罪のつもりだろう。
レンカは責めるでもなく淡々と聞いた。
「魔族はなんのためにそんなことを?」
「それは」
大賢者が首を横に振る。分からない、という風に。
レンカは大きくため息をついた。
「……そっか。……でも、生きてるんだ」
レンカの胸中は複雑であろう。結果としてこの世界が命がけでなかったとしても、命がけだと思いながら人を殺し続けたハルハの罪は消えない。レンカがそのことを無視してハルハを赦すことはないだろう。殺すことでしか解決できなかった自身の弱さも。
しかしそれでも――生きてはいる。
レンカはほんのわずかに救いを得たような顔をしていた。
「大賢者ユリアーネ。貴女がしてきたことは分かった。この世界が命がけでなかったことも。現実世界ではまだ世界蝕開始から1分しか経っていないことも。でもどうして貴女がそんなことをしたのかは分からない」
レンカを指でさす。大賢者が答える前に。
「それだ。そこが結局すべての鍵だ。大賢者は何をしたかったのか。俺たちに何をさせたかったのか。
そこをとっかかりに考えることで俺は他のことも全部推測できたんだ。大賢者がなぜ、ヴィブティという偽りの姿で俺たちのそばにいたのか、とかな。
その辺はミューも考察してたろ。答えてみ」
「ちょ、あたしですか!? 無茶ぶりがすぎますよ!」
「今回が一周目なのはお前だけだろ。どうせだから楽しめよ」
第四試練の時に俺がゾンに丸投げされたのと同じだ。
回答するくらいの時間はまだ残っている。
ミューは俺のマネをしてエアうどん捏ねを1分ほどした後、こわごわと切り出した。
「つまり……これも全部ゲーム内設定と同じだったってことですか?」
この世界で最後の推理が始まる。
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・Tips
【ヴィブティ】
寛政7年(西暦1795年)に起きた前回の世界蝕。
その際に{一つの月の大地}側にできた大賢者の協力者、その子孫に一人の女子高生がいた。
彼女が世界間移動してきた大賢者の頼みにより作ったMMORPG『イクリプス・オンライン』のアカウント名が“ヴィブティ”である。
大賢者はこのアカウントとその女子高生の姿と人格を借りて仮想世界に潜入していた。
その名前はインドの宗教家サティヤ・サイ・ババが手から出したとされる聖灰に由来しており、“灰谷都羽”という偽名と同じく、ユリアーネ・アシェクを連想させる大賢者からのあまりに迂遠なヒントであった。
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