プロローグ
騎士とは自分が仕えるべき主を見つけてこそ、本物たり得る。
ルークは息子であるシンドレークに稽古をつけるたびにこの言葉を繰り返していた。ルークはラシュン王国の騎士団長であり、剣の腕前をはじめとする武術、戦況を読む戦術力は王国一と謳われており、この国の要である。
ルークの主とは、彼らの住むラシュン王国国王である「ラシュン王」のことである。ルークは元々この国の生まれではないが、彼の実力を評価したラシュン王が彼を騎士団長に任命した。彼は昔の話をする人ではないので、シンドレークは父がの生い立ちやラシュン王に仕えるようになった詳細な経緯を知らない。(息子といえども、多忙の騎士団長と接することができるのは稽古の時ぐらいである)。
ラシュン王国では魔法の使用を18歳以上の許可された者のみに制限している。許可された者とは国内外の警備や民衆の治安維持等を任務とする騎士団に所属するものである。魔法を駆使して悪を制する騎士は国民の憧れであり、騎士を目指す少年少女は非常に多いが、騎士団に入団できる人数は毎年5人程度と非常に少数である。なぜこれほど少ないのか、それは"騎士団が少数でも成り立つように、優秀な人物のみを騎士とする"という国王の方針のためである。人海戦術で沢山の国民が騎士になりラシュン王国としての兵力が増しても、それにより多くの国民が傷つくことは心苦しいという主張である。ではラシュン王国の兵力は近隣国と比べて劣っているのかといえばそうではない。少数でも他国の武力と同程度、もしくはそれ以上の力をもつのがラシュン王国の騎士団なのである。
「たしかに騎士団の人員不足はここ最近、特に顕著だ。けどな、今年は入団者が多すぎる。ちゃんと入団テストやったのかこれ?テストに受かったからって、アタシが不甲斐ないと判断したら騎士団辞めさせてやろうかな」
「ヴァルは厳しいんだから・・・。それに、アタシじゃなくて私たち、でしょ?とはいえ、9人は流石に多いはねぇ。過去最高人数の代じゃないかしらこれ?」
「だろうなぁ、アタシたちの代は3人しか居ないわけだし。人数が何人だろうと、教官としてやることは変わらない。騎士のイロハを体に叩き込んでやるさ」
「私も教官やるのは初めてだから私にも、教官のイロハを叩き込んでちょうだいね。入団者が9人といえど、一番の注目株はやはり彼なの?」
「まあな、あの人の息子だ。注目しないわけにはいかないだろ?とはいえ優遇したり、甘やかすなんてことは絶対しないけどな」
「それはヴァルの教官としてのルールなの、それともあの人の意向?」
「どっちもだな、アタシはコイツがどんなやつでも他のやつと同じように指導するつもりだったぜ。けど、あの人がわざわざアタシに言ったのさ、"シンドレークをよろしく頼む"って」
初投稿になります。更新頻度は遅いと思いますが、必ず完結させたいとおもっています。
まずはプロローグとしてキャラクタや舞台を少し書いてみました。