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おれ、働けるの……!?」

「それは酷いわ、お兄様」



思わずフいた。


お父様がせっかく簡易な言葉で丁寧に説明しようとしているのに、お兄様ったら超ざっくり過ぎる。でもそれがあながち間違いでもないから面白い。確かに、お父様は『おせっかいな近所のおじさん』を責任持ってやろうとしているとも言える。



「う、嬉しいけど……でも、いいの? おれ、金も家も……もう売れるような物もないし、どこ行っても雇ってもらえなかった」


「そうだろうね。ルフは違うようだが、獣人は気性が荒い子も多いからね、働きに出た経験がない場合は敬遠されることも往々にしてある」



せっかくのふさふさしっぽが、またもぺしょんと垂れ下がる。個々の個性も見ずに種族で大雑把に差別されるの、本当に理不尽だわ。



「大丈夫よ、ルフ。お父様は『ルフが自分の力で生きていけるように気を配る』と言ったでしょう? それくらいは想定内よ。その上で後見人になると言っているの」


「最初はうちで下働きしながら色々教えて行くから心配しなくていい。おちついたら冒険者になってもいいし他に就きたい仕事が出来れば紹介しよう。うちで働いた経験があり、私という後見人がいれば今まで断られていた仕事にも問題なく就けるだろう」


「!」



所在なさげに俯いていたルフは、お父様の力強い言葉を聞いてバッ! と音がするくらい勢いよく顔を上げた。



「おれ、働けるの……!?」


「ああ、もちろん。うちの使用人専は厳しいからね。バリバリ鍛えて貰うよ」


「おれ、頑張る……! あ、ありがとう、ございます!」


「ははは、あまり畏まらなくてもいい。私も下心ありだからね」


「?」



キョトンとするルフに、私は苦笑しながら言った。



「お父様は男爵位はあるけれど、商会のお仕事の方が主なの。雑貨から貿易品から服飾、アクセサリーまで幅広く取り扱ってるリットコールってお店、知らないかしら」


「あのお城みたいにでっかい店?」


「そうだよ。今はまだ獣人用の服や日用品が少なくてね、ちょうど獣人の意見も聞きながら品を拡充していこうと思っていたんだ。ルフにも色々協力してもらうかも知れない」


「おれで役に立てるなら何だってやるよ!」



お父様の提案が嬉しかったのか、勢いこんでしっぽを激しく振りながらそう宣言するルフを、お兄様が「こらこら、簡単にそんな約束するもんじゃない」と宥める。でも、お兄様がそう言いたくなる気持ちもなんとなくわかる。



「そうね。ルフは素直そうだから、簡単に悪い人に騙されそうでちょっと心配だわ。少し優しくして貰ったからってなんでも言うこと聞いちゃダメよ?」



大きな黒目がちの目で私達の話を真剣に聞く姿が可愛くて、つい姉のような気持ちになってしまったのは仕方ないと思う。

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