ゆっくりお食べ
「いいの……!?」
ぱぁっと顔を輝かせたルフを連れて食堂へと向かい、美味しそうな、けれどどれも柔らかくて消化が良さそうなものが並べられた食卓についた。
ここ何日か本当に僅かしか食べていないらしいと伝えておいたから、きっとシェフのウロッツが気を利かせてくれたんだろう。
ありがたいなぁと思っていたら、ウロッツが暖かいお茶を持ってきてくれた。ぷくぷくとふくよかで笑顔が優しいウロッツは、ルフを見るとまるで彼のお父さんであるかのように優しい笑顔を見せる。
「柔らかくてあったかい、美味いもん作ったからねぇ。ゆっくりお食べ」
「あ……ありがとう……!」
「うん、お礼言えるの偉いねぇ。ほい、お茶もあったかいよ」
ルフのしっぽが物凄い高速で揺れる。
嬉しいんだなぁ、とこっちまで嬉しく思っていたら、ルフはなぜか私を見て小首を傾げた。
「? 早く食べたら?」
「うん!!! ありがとう!」
大きな木匙でお粥を思いっきり頬張って、ルフは身を震わせた。
「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!! うまいっっっ!!!」
「ははは、料理人冥利に尽きるねぇ」
「ありがとう、おっちゃん!」
口いっぱいに頬張って、しっぽをぶんぶんと音がするくらいに振りながらお粥を書き込むルフ。なんかもうそれを見てるだけで癒されるよね。
ボンボン達に囲まれて、御令嬢達からの冷たい視線を受けて、思いっきり凹んでいた気持ちが一気に軽くなる。ああ、この光景って平和だわぁ……。
まったりした気持ちでルフの食べっぷりを堪能していたら、バンッと勢いよく食堂の扉が開いて、お兄様が入ってきた。
ビックリし過ぎたらしいルフが、椅子からちょっぴり飛び上がったのが可愛い。
「怖がらなくても大丈夫よ、私のお兄様なの」
「え……ええ!?」
二度見三度見する気持ちも分かる。私とお兄様ってあんまり似てないものね。お兄様は鍛え上げたムッキムキの体が自慢のマッチョ騎士だ。確か小隊の隊長だとは聞いているから、それなりに強いんだと思う。
小さい時は可愛いと評判だったと思うんだけど、どこでこうなっちゃったのかしら。
金の短髪にアイスブルーの垂れ目、私とは逆の右目の下に泣きぼくろがあるそれなりに甘いフェイスだ。御令嬢達にはモテるんだと本人は言っているけれど、性格が豪快で脳筋ゆえか、交際しても長続きはしていないらしい。
いわゆる残念な美形だと言えよう。
……人の事は言えないか。私だって充分に外見と内面に差があるタイプだ。
お兄様は大股でズカズカと近寄ってくると、ルフを見下ろして頭をぐりぐりと乱暴に撫でた。
「おお、ホントだ! こりゃまた可愛いのを連れてきたな!」