小型モーターボート選手権
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今朝の状況は言うまでもない。キュリアの窒息ブレストプレスで目が覚めたのだ。
この苦痛マジで何とかして欲しいわーーーーーー!
お馴染みの額ペシってして起きる。
するとキュリアは目を覚まし此方をジト眼で見て言った。
「また叩いたでしょー!痛いじゃない!」
「俺は毎回死にそうなんだけどな!」
「私の胸の中で死ねるなら本望じゃない!」
「本望じゃ無い!」
なんてことを言うんだ!腹上死ならぬ胸間死とか有りえんわ!
本日はラヴォージェとミラと俺で魔法陣の工房に来ていた。
昨日作った設計図を試作して貰う為だ。
俺達は、工房長に設計図を見せながらオートクールズに関する詳細な説明を行っていた。所謂プレゼンである。
「ですからこの魔法陣ユニットは、一体型ではなく独立可変型にしたわけです。この方法により既存の魔法陣の変更なく新システムを導入する事により、低コストで最良のパフォーマンスを発揮するオートクルズユニットの作成に成功しました」
すると魔法陣工房の理事達からおおーーー!歓声が上がった。
此処で間髪を入れずに工房長が冷静な顔をして言った。
「これなら試作できそうですな。ケミン様、我々の総力を持って作らせて頂きます」
工房長のGOサインの元でオートクルーズシステムの試作が始まったのだった。
「それじゃー試作品が出来たら俺の新造船に取り付けておいてもらえるかな?」
「了解しました!必ず納得の行くものを付けさせて頂きます」
それから数日後、俺達はジェンナーのボートレース場に来ていた。今日はジェンナー杯と言うボートレースが行われるのだ。
ジェンナーの街で始まったボートレースが他の街でも会場が作られ、どこの町でも行われるようになっていた。
ジェンナー郊外のレース会場に加え、王都ではキュリア湖にレース会場が出来た。
また平原の街ファラッドにも郊外にレース会場が出来、港町にも海にレース会場が作られた。
其々のレース会場は、その自治体が管理し運営している。ケミンは、其々の会場にも賞金提供していた。
資金は勿論、船外機の売り上げと家賃収入と税金である。
レースには一般参加が可能であるが、何時の頃からか賞金稼ぎの小型ボート選手が出現し始めた。
そうなると一般参加の人達は手も足も出なくなる。
そこで、賞金稼ぎの小型モーターボート選手だけを集めてシーズンを通して誰が一番速いのかを競う小型モーターボート選手権が行われるようになったのである。
小型モーターボートのレース会場は、キュリア湖(王都)、ジェンナー、ファラッド、港町に特設会場を併設し1年間で64戦を行い賞金王を決定する。
4月の結婚杯と8月のジェンナー杯が、賞金の最も高いレースらしい。この2戦を制するものが賞金王に近付くのである。
市民達にとっても丁度良い娯楽なのか、かなりの人が集まっている。誰が優勝するのか賭けも行われているようだ。
午前中は予選会である。5挺でレースを行い上位2挺が次レースに進める。
次レースからは、1着のみ次レースに進み決勝5挺が決まるまで行われている。
コースは、オーバルではなく凹のような形をしたなかなかトリッキーなコースでヘアピンのコーナーがあり、そこをいかに上手くターン出来るかで勝敗が決まるようだ。
周回は3周で予選会を行い決勝は5周回で1着の選手が優勝である。
俺達は、貴賓席で予選会を見ていた。優勝者にトロフィーを渡すプレゼンターに選ばれているのだ。
モーターボートの水を切る音が凄まじい。よく見ると波に乗って空中を飛んでいる。
「おおー!あんなスピードでよく走れるな。ほとんど空を飛んでるぞ!」
俺は感嘆の声を漏らす。
「ホント凄いわねー」
キュリアは興味なさそうに呟いた。完全棒読みだな。
レース会場とは裏腹に貴賓席はのほほーんとしている。俺の膝の上にミラが乗り頭をこっくりこっくりしている。寝てるんかよ!
他の女性陣達は、円卓を囲み優雅に紅茶を飲み、お菓子を食べていた。
「ケミンこのレースいつ終わるの?」
「優勝者が決まるまで?」
「それは解ってるわよ!だからそれが決まるのが何時ごろなのよー」
「夕方くらいじゃないか?」
「まだお昼じゃない!いつまで待たせるのよ!」
「そう言うなよ、俺だってこんなに掛かるとは思って無かったんだもの」
そう言いながら俺はレース会場を見た。
現在は本戦の1回戦最終組が終わった所で準々決勝、準決勝、決勝とまだまだレースが残っている。
「それじゃー、キュリア、賭けに参加してみるか?誰が優勝するかオッズが出てるから見てみなよ」
「私賭け事なんて知らないものー、それに選手なんて分からないし」
「オッズの小さい数字が人気のある強い選手なんだよ」
キュリアはオッズを覗き込んで言う
「じゃー3倍のウーリーウ選手が勝つの?」
「それは解らないけど5倍のブスジマール選手か15倍のアーキヤーラ選手かもしれない」
「それじゃー誰が勝つのよー!」
「まだ決勝レースになってないからなー決勝の5人が決まったら賭けてみるかい?」
「解ったわよ!最後のレースね!」
そんな事を言い始めたらキュリアも真剣にレースを見るようになった。
キュリアはレースを見ながらあの船が早そうとか、あれの船はコーナーリングが良いなどと玄人の様な事を言い始めた。
真剣に見始めると時間の経つのも早い。日が傾く頃に決勝レースになった。
5人の出場選手の中に先ほど挙げた選手達も入っていた。
「ほらキュリア、ウーリーウ選手もブスジマール選手もアーキヤーラ選手も入ってるよ。他にはイノーエ選手とミャンハーラ選手だな誰に賭けるの?」
俺がワクワクしながら聞くとうーんうーんと唸っていたキュリアは言う
「うーん誰が一番小さいの?」
お前の選定基準は身長なのかよ!確かにボートレースの選手は低身長な人は多いけどな!
「この面子だとブスジマール選手じゃないか?」
「じゃー、ブスジマール選手にするわ!金貨1枚ね!」
「まじか!金貨1枚も賭けるのか!」
オッズを確認するとブスジマール選手は、人気を落としており10倍まで跳ね上がっていた。
試走を見てみると確かにストレートの伸びが若干悪いかもしれない。これが人気を落とした原因かな?コーナーリングは良さそうだけど・・・
キュリアは貴賓席にある受付カウンターに行くとブスジマール選手の舟券を買ってきていた。舟券は特別券で銀貨1枚なのでもう束になっていた。
「キュリア!マジで金貨1枚分の舟券かったのか!」
「当たり前でしょー!女は度胸よ!」
「女は愛嬌だよ!」
一応ツッコミを入れていた。
最終のファンファーレが音楽隊から鳴り、レースがスタートした。
皆一斉にスタートしスタートラインを切った。
最もスピードが乗っていたのはウーリーウ選手で半艇抜けてコーナーに突入していくが第一コーナーの90Rで少し膨らみ2番手のイノーエ選手に刺された。
3番手のアーキヤーラ選手が続き4番手がブスジマール選手だった。第2コーナーは30Rの鋭角で無難に順当に回って行った。
第3コーナーがヘアピンで20Rである。ここでブスジマール選手は、持ち前のコーナーリングの良さを生かし3番手に上がる。
第4第5の複合コーナーからストレートに入り1周目が終わろうとしていた。
1周目の順位は、イノーエ、ウーリーウ、ブスジマール、アーキヤーラ、ミャンハーラで2週目に突入した。
最終決勝レースは5周回だ。あと4周である。
「キュリア、ブスジマール選手は3位まで上がったよ」
「がんばれーーー!ブスジマールー!」
キュリアが白熱してる!乗り易い性質だな。
2週目は同順で周回し3週目に入ったここでまたウーリーウ選手が仕掛けてくる。スロットル全開で外からかぶせる様に90Rに入るが艇先でブロックされイノーエ選手に追いつけない
そのすきを狙ったのがブスジマール選手だ。スピードが落ちたウーリーウ選手を躱し2位に浮上した。
「おおー!キュリア、ブスジマール選手が2位になったよ!」
「やったーー!イケイケゴーゴー、ブスジマール!」
それからはなかなか前に行けない、イノーエ選手にうまくブロックされて差し切れていなかった。
4周目の最終コーナーでも順位は変わらず。最終周回に突入した。
90Rでも順位は変わらず。しかし虎視眈々とトップを狙っているように感じる。30Rを廻った所でイノーエ選手にブスジマール選手が仕掛けていった。
外から被せるフェイントをかけてインに切れ込んでいく。それに振られたイノーエ選手のインが空いて綺麗にさして20Rを最速で抜けていった。
「キュリアーーー!ブスジマール選手が1位になったぞーーー!」
「すごーーい!」
複合コーナーを回る頃には、1艇以上の差が開きそのままゴールした。ブスジマール選手ジェンナー杯制覇の瞬間だった。
「やったーー!勝利の女神のおかげですね。キュリア様有難うーーー!」
ブスジマール選手の優勝インタビューでの一言だった。
キュリアも金貨が増えてホクホク顔をしていた。
ボートレース(笑)
最初のカーゴレースの説明と一緒に書こうと思ったのですが、レースの話ばかりになりそうだったので分けた結果がこうなりました(笑)




