やっと戻った日常
エナジー移送装置も完成しやっと懸案事項が解消された。然も自動で稼動するオマケつきだ。
台座の魔法陣は、最初にエナジーを流すと中心の魔石にエナジーを溜める。
溜めたエナジーの一部を消費し自動で稼動し続ける。溜まるエナジーの方が消費量より多い為、魔石の容量を超えた分のエナジーがミスリルワイヤーに流れ出口で魔法石を稼働させる。
此れで半永久的に自動稼働が可能なのだが、魔石が消耗品の為、数十年毎に交換が必要なのだ。魔石には、使用許容年数が有り、段々とエナジーの貯蔵量が落ちていき、最終的には貯蔵しなくなる。充電回数が決められている電池と同じようなものなのだ。
やはり永久機関なんて土台無理な話なんだよねぇ。こっちの世界なら魔法で何とかなるかと思ったのだが・・・ガクン
其れでも数十年は交換する必要が無い為、毎日エナジーを注入することに比べたら大助かりである。
それはそうとやっと時間が取れる様になった。毎日議論と試作で明け暮れてたからねぇ、久々に社畜に戻った気分だった。
懸案事項が解消されたので、今日は広場で子供の相手をしていた。
ベルの子供が生まれてから約2ヶ月振りで保育園復帰である。
乳幼児係は、ベルとフリーゼとパフィオでエルフの乳母も居る。確定文様の出たグーの奥様達も手伝いに入っているし、メイド達も手伝っているので手は足りているだろう。
保育園組は、俺とグーとキュリアとヒュパさんとメリトさんで面倒を見ている。
屋敷の事はラヴォージェとハニーが仕切っている。
そして、脳筋3人組は、あいも変わらず年長組を鍛えている。子供達も真剣だ。成人したらジェンナーで護衛隊になるそうだ。
殆どがヘディとラーニャとカトレアの子なんだけどねぇ。
3人で二十数人の子供を相手に訓練している。
「ほらそこ。脇が甘い!最短で振りぬけ」
「やー」
可愛い掛け声が聞こえる。年長組になったばかりの子達だろうな。かなり厳しめの訓練だなぁ。
然しここで訓練を受けるとかなり上達して護衛隊に入隊できるらしく直ぐに精鋭に抜擢されるそうだ。
精鋭隊と言うのがあるらしく基本業務は、ジェンナーの俺の屋敷の警護である。其れだと精鋭なのに最も暇な仕事じゃないのかな?
それに森もジェンナーの街も結界に守られてるから悪意のあるものは入って来れないんだけどねぇ。毎回思うけど過剰防衛だよね。
こんな事をぼーっと考えてられるのも今保育園組はお昼寝の最中なのだ。この時間が俺達の休憩時間になる。本物の保育士だとこの時間も色々な準備や父兄へのお知らせを書くなど仕事が目白押しなのだが、自分たちの子供だからね。そんな仕事は無いのだよ。
俺達は円卓を出し椅子に座って紅茶を飲んでいる。お菓子はキュリアの作ったアップルパイだ。
これ本当に美味いんだよね。
給仕は、ヒュパさんとメリトさんがしてくれている。
「何時食べてもキュリアのアップルパイは美味いよな。久々に食べた気がするけど」
「ケミンは、林檎が好きだったでしょ?だからこれだけは誰にも譲らずに私が作ってるのよ」
キュリアが恥ずかしそうに言った。
「そうか、有難う。キュリアの作ったアップルパイを食べるともう他の人の作ったアップルパイは食べられないよ」
「うふふ、有難うケミン」
俯きながらキュリアが言う顔は湯気が出そうなほど真赤になっていた。
「此処暑いよねぇ、あーー暑いなぁ」
グーが呆れたように生温かい目で見ながら言った。このバカップルが!とでも言いたげな目だった。
「まあでも久々にゆっくり出来てるよね。こういう平和な時間がいいな」
秘技話題逸らしだ。
「そ・そうね!癌化やらベルの出産やらでずっと忙しかったものね!本当に久しぶりにゆっくり出来るわ!」
キュリアが乗ってきた。
「でも来月はまたジェンナーよ。誰を連れて行くの?」
キュリアが毎年8月恒例のジェンナー滞在について聞いて来た。
「ベルは産後で乳飲み子が居るから無理だろ?俺とキュリアとクララとヒュパさんとメリトさんかな?あとはラヴォージェか。ヘディ達には訓練で残って貰わないとだしパフィオとフリーゼは乳児室から出てこないだろうしねぇ。ハニーは勝手に誰かが来るだろうから・・・はっはっはっ」
「確かにハニービーは、誰か来るわね、子供達も全部エルフに任せるわけにはいかないものね」
「私は如何したら良いかなぁ?」
グーが俺達の不在の間は如何したら良いか聞いて来た。
「グーは、そのまま迎賓館でいいよ?奥さん達も確定が出たばかりだろ?あんまり動かさない方が良いよ」
「解ったよぉ。子守の手伝いをしてるよぉ」
「おお、有難う!1月には戻ってくるからよろしくね!」
その後は雑談をしながら子供達が起きてくるのを待った。
日が傾き夕焼けになる頃には、屋外保育は終了になる。子供達は各々の部屋に戻り自由に過ごしている。
夕食の時間になると大食堂が一際にぎやかになる。皆一緒に食堂で食べるためだ。
子供が増えるにしたがって屋敷もどんどん増築していった。食堂も全員一緒に食べられるように新しく作り直している。
食事が終わると風呂になる。風呂はそもそもが温泉の大浴場と同じサイズなのであまり困らなかった。今考えるとキュリア様様である。子供達を順に入れて寝かしつけてから大人たちが風呂に入る。
最近は、忙しいので皆一緒に入っていた。
「はーぁ、風呂に入るとやっと1日が終わる気がする。気持ちいねぇ」
「まぁ子供が多いから疲れるわよねぇ。あのパワーにはちょっとついていけないわ」
「本当に保育園組は元気だよね1日中走り回ってるもの」
俺が風呂に浸かってる横にキュリアとベルが居る今はべるも母乳が出る為、胸のサイズが大きくなってる。ぽよんぽよんである。
初めてみた時は驚いたがもう3回目なので驚かないよ!
「ケミン君そんなに僕の胸が珍しいのかなぁ!?」
と言いながらベルにパッカーーンと叩かれた。だから風呂に入ってるのに何処からスリッパ出すんだよ。
「バカケミン!こっちにも胸あるでしょ!」
そしてキュリアからはそう言われながらパッカーーンと叩かれた。時間差攻撃かよ・・・ガクン
俺が這う這うの体で洗い場に逃げ出すとちびっこ3人組が、体を洗ってあげると言って来た。クララもそこに混ざってきてるし・・・4人に取り囲まれて逃げられないので素直に洗ってもらった。
カトレアとヘディは、風呂に入っても訓練の話をしていた。少しは訓練から離れろよ!
ヒュパさんとメリトさんは、一足先に出て俺の着替えの為に脱衣所で待機してるし・・・
みんな仕事熱心なのにもほどがあるぞ!
そんな風呂タイムは、毎日の事だった・・・
そして夜の帳が降りてくる。夜空には満天星達が輝き平和な日常の夜を飾っていた。
そんな日々が数週間過ぎ、明日にはジェンナーに向かう事に為った。




