探査と回収 後編
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有難う御座います。
<m(_ _)m>
其の姿は圧巻だった。
一斉に飛び立つハニービーの子供達、数十万の大群である。探査隊などと言うよりはもう軍隊である。此れでも人口の10%位なのだ。その規模が計り知れよう。ケミカリーナ大森林、いや東の辺境一の人口を誇るのも頷けよう。然も全員が『傾国の美女』なのだ。その美し過ぎる光景に感嘆の言葉も無かった。
皆が一斉に飛び立つと木々に積もっていた雪がドサドサと落ちていった。粉雪がキラキラと輝き飛び立つ傾国の美女達を一層引き立てていた。軽くなった木立は粉雪を舞い散らしながら誇らしげに立っていた。自分達が最もハニービー達の役に立っているのが誇らしいと言うように・・・
広場で雪遊びをしていた子供達も口をあんぐりと開けて目を見開いて驚いていた。
「パパー!小さいハニー叔母ちゃんが一杯いたーー!」
クララの娘が、叫びながら近づいてきた。見た目はクララそっくりだが、髪の毛が黒い。人間時代のクララとは瓜二つだ。クララの幼少時はこんな感じだったのだろう。
「小さくは無いけどな。ハニーがデカすぎるだけだから」
俺はクララの娘をひょいと抱き上げながら言った。
「叔母ちゃんなんて言ったら怒られぞ。ハニーはまだ16歳だぞ。9歳しか歳は違わないだろ?」
クララの娘は、眼を大きく見開いてコテリと首を傾げた。そうなの?と首を傾げている様だ。
まぁハニーがここに通ってくるのは1人だから判らないと思うけど実は、一番若いハニーが来ていたりするのだ。つまり永遠に16歳だったりする。
「だから、ハニーの事はお姉ちゃんって言わないとだめだよ」
「うん!そうする!あっ、お姉ちゃんきたー!」
遠くから飛んでくるハニーを見てクララの娘は言った。
俺はクララの娘をそっと降ろすとハニーが近くに降り立った。
「ケミン様、順調に探査中ですわ。今の所、不審な物は発見されておりません」
ハニーから中間報告があった。まあ始まったばかりで直ぐに見つかるのも困るけどねぇ。
「了解!」
「パパは仕事だから。みんなと遊んでおいで」
俺はクララの娘に皆の所に戻るように施す。
「うん!お姉ちゃんばいばいー!」
そう言うと子供達の輪の中に戻って行った。其れを聞いたハニーが今度は不思議そうな顔をしながら
「お姉ちゃん?何時もは叔母ちゃんですのに?」
「ああ、ハニーは最近、一番若い女王が来るだろ?だからお姉ちゃんと呼ばないとだめだよって言ったんだよ」
「そうですの、お種を頂くのは、若いハニーですけれどわたくしは引退しておりますからもう50歳ですわ、オホホホホ」
口元を隠しハニーは笑いながら言った。それに驚愕したのは、俺とグーだった。
「「全然違いが判らない!」ねぇ!」
美魔女かよ!
「わたくし達は、成人したら姿形は変わりませんもの。インセクターだった名残ですわ」
「成程、老化現象とは無縁なのか」
そんな話をしながら数時間が経ち異常なしの報告を受けながら待っているとチラホラとエルフ達が舞い戻ってくるようになる。高エナジー結晶を持ち帰ってきているからだ。ハニービーの子供達も高エナジー結晶を見つけたら戻ってきて再度探査に向かう。
高エナジー結晶は、円錐を二つ合わせた様な結晶で青く光り輝いている。サイズは様々で親指サイズから掌サイズが多い。そして思ったより数が有った。地面に置かれた高エナジー結晶が、だんだん高く積まれ始めたのだ。
「こんなに有るのかよ・・・」
「まだ有りそうですわ、探索はまだ半分程度ですもの」
「これ羨ましいなぁー、私に欲しいくらいだよぉー」
「此れ平原に持っていったら如何なるのかな?グーのエナジーに変換できるの?」
「平原に持って行ってぇ分解するとぉ、エナジーに戻るよぉ。平原のサイズに比べたら微々たるものだけどねぇ、それでもかなり助かるかなぁ」
「それなら探査で集まった分は、グーが持って行って分解してきたらいいよ」
昼頃になると太陽の光と南からの温かい空気のおかげで広場の雪もすっかり解けて子供達の雪遊びタイムも終了した。蒸発するのも早く広場はすっかり乾いていた。
今の所、癌化した生物の発見報告は入っていない。ハニーによると大森林の60%くらいが探査済みらしい。
「この分なら癌化生物は、あのコックーローチだけだったのかもな。俺達の出番は無さそうだな。グー」
「ケミンー、其れってフラグ立ててないかいぃーー?」
ジト目でグーは俺の事を見た。お前フラグ立てるなよ!みたいな顔だ・・・
「た・立ててないよ・・・早く終わって欲しいなぁとは思ったけどな!」
「そう言う事言うとぉ、完全に立てちゃったよねぇ」
恐ろしい事言うなよ!戦うの面倒だろ!
俺はこのまま終わってくれることを祈るようになった。フラグは折るために有るんだぜ!
更に数時間経ちそろそろ探査が終わろうとしていた。高エナジー結晶は、山の様になっていた。
「グーさん、こんなに有りますけど・・・処理しきれるの?」
「うーん、大丈夫だよぉいっぺんに分解を掛けるからねぇ、収納に入れて持って行くから運ぶのも簡単だしぃ」
「成程、分解は簡単らしいな、良かったよ。そろそろ終わるみたいだから仕舞っておきなよ」
そうすると言いながらグーが高エナジー結晶を異次元収納に仕舞い始めた。
グーが粗方仕舞い終わったところでハニーに報告が入った。
「ケミン様!北部で癌化した猪が発見されたそうですわ!現在エルフが、戦闘中ですわ。場所はドワーフ街北東10km」
「ほーらぁフラグ立ってたぁ!仕方ないから行くかぁ」
「参ったなぁ、もうすぐ終わりだったのに、ハニー行くから光玉上げてくれって伝えてね」
「解りましたわ!御武運を!」
俺とグーは、ドワーフ街に向けて飛び立った。全速で街に向かうと確かに北東の方角で光の玉が上がった。俺達は、その光に向かって全速で到達した。
その場所では、数人のエルフとハニー達が、牽制する様に猪と対峙していた。
癌化した猪もかなり巨大化していた。通常の猪の3倍はあるだろうか、真っ黒のオーラを出し毛皮も黒くなっている。牙の長さも通常の猪の倍は有りそうである。かなり興奮しているようで地面を蹄で掻き乍ら今にもエルフ達に突撃を敢行しそうだった。
俺達は、エルフ達と猪の間に降り立った。
「こいつも雑食性か、何でも食べるやつは高エナジー結晶も食べるって事なのかな?」
「その可能性が高いよねぇ、こいつぅ捉えるのぉ?」
「もうそろそろ日も暮れるし面倒だから倒しとこうか!」
そう言って俺はグーに合図をすると一緒に魔法を放った。俺は氷魔法矢を作りグーは風の刃を作り一斉に放つ数十の氷の矢が体に刺さった黒猪は、地面にのたうち回って暴れ出した。
風の刃を受けて彼方此方に切り傷も出来ていたが、まだ倒れる様子はなく、更に怒りが増幅されたように。此方に突っ込んできた。
「ブモーーー!」
正に雄たけびを上げながらの猪突猛進だ。俺達は左右に分かれて突撃を交わす。まっすぐに突撃する事しかできない黒猪は、止まる事も出来ずに俺達の後ろに有った木に激突してようやく止まった。
突撃された木は悲惨だった。ぶつかった瞬間にミシミシドドーンと音を立てて折れて倒れたのだ。
「ああああ!俺の木がーーー!ムカつくーーー!絶対に許さねーーーーー!」
俺は黒猪に向かって全エナジーをぶつける程の氷の矢を作り一斉に放った。数百にのぼる矢が猪の巨体に突き刺さり黒猪を巨大な氷で包み込んだ。そしてパリンパリンと粉々に砕け散ったのだった。そして一面氷の世界になっていた。
「まぁぁ、気持ちはわかるけどぉ、ちょっとぉ遣り過ぎじゃないかなぁ・・・」
呆れたようにグーが言った。
その日の夜、ドワーフの街に初めて雪が降ったらしい・・・
久々のハニー軍団登場でした。




