初めての敵
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奴等を見た瞬間、俺のテンションはだだ下がりだった。
深夜のキッチンに出没し真っ暗なキッチンの中をブーンと飛んだり、カサカサと動き生ゴミを漁る。スリッパを掴み、撃退しようとパコーンと叩けば、上手く躱して速攻で逃げる。室内の隙間に生息していつも隙を窺っている奴等だ。
「黒い奴等」
生前には、かなり手を焼いた昆虫コックローチ・・・ガクン
「1匹見つけたら30匹は居ると思え」とは、母親からよく言われていた奴が、目の前に大挙して居たのだ。
然もサイズが違う。1m近い体長で少し動くだけでガサガサと音がする。森の木々の間をすり抜けながら逃げるわけでもなくどんどんこちらに近付いてくる。
此奴ら完全に俺達の事を狙っているな。
はっきり言って気持ち悪いわ!ゴ○ブリホイホイ、プリーズ!アー○ジェット!プリーズ!
まぁそんな物はこの世界には無いので戦うしかないのだが・・・
「ヘディ、ラーニャ、カトレア、此奴ら大丈夫か?嫌だったら戻っても良いぞ・・・」
みんな女性だからな、さすがに此奴らは嫌いだろうと思って言ってみた。
「私は、ケミン様の盾、ケミン様をお守りするのが役目です」
そう言うと俺の前に立ち大盾を構える。
ラーニャは涎をたらしそうな顔で言った。
「大丈夫にゃ、美味そうにゃー」
「あんなの食べちゃダメだよ!お腹こわすよ!」
俺は慌てて言った。確かにラーニャ達、種族の捕食対象かも知れないけどあんなに巨大化してるのは、食べたら何が起こるか判らないからな。
「全く問題ない」
口数の少ないカトレアも大丈夫そうだ。鞭を振るっている。
「それじゃー行くか!1匹は生け捕りにするから、何が起こったのか原因を調べないと!」
俺はそう言うと片手を頭上に上げて呪文を唱える。
「氷結矢!!」
そう唱えると頭上の空気は一気に温度を下げ、次々に氷の矢が出来上がっていく。数十本の氷の矢が出来上がり手を前に振り下ろすと一斉にコックローチに向かって飛んで行った。
それを合図に全員攻撃開始した。
近くまで来ていたコックローチ達に一斉に氷の矢がズブズブと刺さる。刺さった瞬間にコックローチは、凍りつき、パリンと砕けて地面に吸い込まれていく。俺は、何度も氷結矢!!と唱え次々に氷の矢を放って行った。
ヘディは俺の前で大盾を構え三又槍にエナジーを溜めていく。槍を振り下ろすと三又の先から稲妻が迸った。此方に向かってくるコックローチに電撃を与え次々に感電死していく。死んだコックローチは、やはり地面に吸い込まれるように消えていった。
ラーニャは左に展開しスティールクロウから風の刃を放っていた。数十匹のコックローチが一斉に切り裂かれ地面に吸い込まれていった。
カトレアも鞭を一振りすると鞭の長さが一気に伸びて十数匹のコックローチを一撃で切り刻んでいた。
切り刻まれたコックローチはやは地面に吸い込まれていった。
1匹の戦闘能力はたいして無いようだが、いかんせん数か多い。倒しても倒しても減る気配がない。
森の地面は、黒い絨毯の様になっていて後からどんどんコックローチは増えていている。
俺は氷結矢で攻撃しながら言った。
「全然数が減らないな!どんだけ居るんだよ全く!」
4人でもう100匹以上は葬ってる筈であるが、減る気配がないのだ。
そう言ってもどんどん攻撃していく。
ラーニャは両手から風の刃を出しネコパンチの様に連続して放っている。ヘディ―の稲妻は、感電させるコックローチを確実に増やしていく。カトレアも両手でドラゴンウィップを操りコックローチを血祭りにあげていった。
コックローチと格闘する事、数時間やっと目に見える数に減って来た。
「カトレア1匹捕獲してラヴォージェに届けてくれ。後は俺達で何とかするから」
「了解!」
カトレアは、返事をするとドラゴンウィップで1匹をグルグルに巻き付けて捕獲すると異次元収納に入れた。そしてそのまま結界の中に入って行った。
収納して大丈夫なのかよ・・・収納の中がゴキブリだらけになるとか可哀そうだぞ?
俺は変な想像してゾッとしながらも、攻撃の手は、緩めずに氷結矢を放って行った。
それでもあと数百匹はいるだろうか・・・段々面倒になって来たよ
「一気に片を付けるよ!みんな下がってくれ!」
俺は氷結矢で牽制しながらラーニャとヘディに言った。
「解ったにゃ!」
「承知!」
ヘディもラーニャも最後の攻撃をして結界に中に下がった
俺だけになるとコックローチは一斉に俺の方に向かってきた。
俺は広域の氷魔法を唱える。「液体窒素!!」
空気中の窒素が凝集し始め液体化するイメージを強く持ちコックローチに向けた。
俺が手を振りかざすとコックローチの周囲に液体が生まれる。俺が手を降ろすと液体が雨のように全てのコックローチに降り注いだ。
-196℃の液体がコックローチに降り注ぎ全てを凍らせて粉々に砕け散ったのだった。
空気中の水分も氷の粒に為ってキラキラ輝いていた。ダイヤモンドダスト・・・
「おおー寒い!やり過ぎたか・・・」
俺は周囲を見回しコックローチが、完全に居なくなっている事を確認して結界に戻って行った。
中央広場に戻るとラヴォージェが早速コックローチを解剖していた。
それを興味深そうにグーが見ている。
キュリアとベルは、子供達と一緒に屋敷に避難してる。
こんなデカいゴキブリは見たくないよな・・・
ヘディとラーニャとカトレアはあれだけ戦った後なのにまた戦闘訓練をしていた。
どんだけ元気なんだよ!
モフモフ達は種族毎に纏まって寛いでいた。
檻が有ったら本当に動物園だな!あ!檻が無いからサファ○パークか!
何方にしても結界の中では被害が無い様で良かったよ。
俺は解剖しているラヴォージェに近付いて行った。コックローチは生きたまま解剖されていた。足がうねうね動いている。俺は、解剖を覗き込みながら聞いた。
「ラヴォージェ何か解ったかい?」
「ケミン様、此れは普通の突然変異ではありませんなぁ、器官の所々にエナジーの結晶が付いてますね。高エナジーの結晶を捕食して突然変異したと思われます。通常、高エナジーの結晶は地面の中で出来るのですが・・・」
解剖した器官の所々に確かに小さなエナジー結晶が付いているのが見えた。「此処と此処」などと言いながらラヴォージェは付いているエナジー結晶を指さしていく。
「地上で結晶化するほどエナジーの量が多いって事か?」
「そうですね、ケミカリーナ大森林は、東の辺境の中でも特にエナジー量は豊富ですから稀に地上で結晶化することもあるのでしょうな」
「そうだねぇぇ、平原なんてカツカツだからねぇ、これから増えるだろうけどまだ時間が掛かりそうだよぉ」
グーが、やれやれと言うような顔をして呟いた。まぁ、だから森に来て子作りしてるんだけどな。
俺は仕方ないさと言いながらグーの肩を軽く触れた。
「突然変異の原因は解ったけれどなんで凶暴化したんだ?」
「此れは憶測ですが・・・エナジーの結晶を捕食したことによってエナジーが餌に変換されたのだと思います。エナジーの塊は、即ち我々精霊ですから我々を餌だと認識したのでしょう」
「俺達はゴキブリの餌かよ!嫌だな!」
俺はブルブルと震えて見せた。
「今回は弱いゴキブリでしたから簡単に一掃できましたが、もっと強い動物が高エナジー結晶を捕食したら今回の様には行きませんぞ」
「簡単言うなよ!奴等の繁殖力を考えたら脅威だわ!めっちゃ数が多かったんだぞ!」
「4人で何とか為ったのですから簡単な方ですよケミン様、私もヒュパやメリトも戦いに参加してませんからな」
「皆戦えるのかよ!手伝ってくれても良いだろうに!」
「指示が無かったですから!ハハハハ」
ラヴォージェは笑っているが、此奴、絶対態と手伝ってないよな!
「って事は、またこういう事態が起こりうるって事か?」
「そうですね、避難してきた動物を褒めた方が良いですよ。ここに居る動物達がもしエナジー結晶を捕食していたらもっと脅威になっていましたよ」
「マジか!みんなよくここに避難してきたな、有難う」
動物達は、みんなすり寄ってくる。数が多すぎて埋まるけどなー!
初めて戦闘シーンを書きました。
次はもっと良くなるように精進します。




