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閑話 夢

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<m(__)m>

1名の評価ポイント有難う御座います

<m(__)m>


20000pv及びユニーク4000人に読んで頂きました

これからも宜しくお願いします<m(__)m>




其処は見慣れた景色の場所だった。

液化ガスを収める球形タンクや蒸留塔が何本も建ち、化学プラント棟が建ち並ぶ。化学プラント棟からは、幾つもの配管やダクトが縦横無尽に繋がっている。その隣に10階建ての研究棟がある。


仄かにMIBKやトリクレンの香りがするのも懐かしい。芳香族の香りは如何しても防げないからなぁ・・・


俺は今、研究棟の屋上に立っている。

其処は、真新しいフェンスが出来ており幾つかの花束と俺のお気に入りの缶珈琲と煙草が、置かれていた。


てかさ俺が落ちる前に直して欲しかったよ!

俺はフェンスを握りガシャガシャ揺らしてみた。おーーー!びくともしない!完璧に直ってるよ!


俺はガシャンとフェンスに寄り掛かると煙草に火を着けた。

俺がいつも愛飲しているのは、キャメルのメンソールだ。煙草を吹かしながら花を愛でる。やっぱり菊の花束なんだな。珈琲も頂くか俺の為の物みたいだしー!

久しぶりに珈琲を飲んだな、そう言えばコボルドの貢物の中に珈琲豆も有ったよな?今度キュリアに焙煎して貰おうかな。




そんな感じで寛いでいると花束を抱え珈琲を持った一人の女性が来た。

「え?えええ?えーーー!お化け?幽霊?森中主任、成仏してーーー!」

そう言うと花束で俺を叩こうとしてきた。

「美咲ちゃん!待て待て!落ち着け!足は有るから!此は夢だから!多分・・・」


「夢?私は仕事中です!夢なんて見てません!」

「其処は、俺の夢に巻き込まれたと思ってくれよ。害は無いから安心して良いよ!」

俺はヒラヒラと手を降りながらニッコリ笑い、害が無い事をアピールした。


「本当に大丈夫なんですね?憑依とかは無しですよ!」

「そんな器用な事は出来ないから大丈夫だよ」

 「あっ、森中主任なら憑依しても良いですぅ・・・」

「だから出来ないよ!」


そうだった。此の娘も残念女子だったんだ。

東京の国立工業大学の修士課程出なのに小さな男の子が好きなのだ・・・見た目は綺麗で知的なのに本当に残念だよ!

「俺は、身長が小さいだけで歳は38だからな!オッサンだからな!」

 「だから!合法ショタでしょう!」

「合法ショタ言うなよ!お前は、全く変わってないな!其れは主任に対する態度じゃないよ!」


 「そんなぁ、私達付き合ってたじゃないですかぁ・・・あんなことやこんなこともしたのに・・・」

「付き合ってないよ!何もしてないだろう!自分の妄想をさも現実の様に言うんじゃない!」

 「えーーー、じゃー今から付き合ってください!」

モジモジし出して言いやがった。

「だから俺は死んでるんだよ!逢えたのも今日だけだと思うぞ!そんな事より、実機試験は如何なってるんだ?」

 「そんなこと・・・なんで死んじゃったんですかーうえーん」

「事故だから仕方ないだろうが・・・泣くなよ・・・」

まだヒクヒク泣いているが収まってきたようだ。


「だから実機試験だよ。あれから何日たってどうなったんだ?」

 「主任が亡くなられてから・・・12日経ってます。実機試験なんですけど・・・試験機で出来たのに実機だとうまく分散されなくてポリマーが上手く粒子に為らないんです」


「あー?上手く分散されないって?今やってるのか?何立米の反応缶使ってるんだ?」

 「1立米缶迄は普通に出来ましたが、15立米缶だとお団子状態になります」


「15立米でもう駄目なのかよ。如何言う事だ?ちょっと見てくるか、案内してくれ。何番缶を使ってるんだ?」

 「えーーー?見に行くんですか?だってどう説明したら良いんですか?」

「私の妄想が現実化したんです!とでも言っておけよ、それでみんな納得するから!」

 「そんなので納得しませんよー」

「大丈夫だよ!ほら行くぞ!」

俺は美咲ちゃんの手を引っ張ると反応缶のあるプラント棟に向かった。お姉さんを連行する図の様に為ってるけどねぇ・・・


プラント棟に着くと美咲ちゃんが反応缶監視室のドアを開けて言った。

 「皆さん!私の妄想が現実化しました!!見て下さい!!森中主任です!!」

そして俺が皆の前に見える様に移動した。

「やあ皆さん!美咲君の妄想状態の森中です!呼ばれた様なので来てしまいました。何か皆さんお困りの様で?」


そこに居た開発部の面々、係長や製造課の班長さんや監視員(オペレーター)さん達迄、一様に納得して言った。

「「「「「「「美咲君の妄想が現実化か、成程!」」」」」」」


 「なんでそこで納得するのよーーー!普通こんなの無いでしょー?」

美咲ちゃんは顔を真っ赤にしながらそう言ったが、皆一様に「美咲君ならあり得る!」と断言していたのが面白かったのでつい笑ってしまった。


「それで係長、15立米の実機試験で団子になったって聞きましたが?」

 「ああ。17番缶で今試験中なんだが、見ての通りだよ、此れじゃ製品に為らん、1立米はちゃんと出来たんだけどな」


俺は、17番缶の反応監視モニターを確認した。確かに内部のポリマーは、お団子に為っていた。俺は其処で疑問が浮かぶ。これより小さい反応缶は如何だったのか?5立米と10立米が有った筈だ。


「え?5立米と10立米は如何だったんですか?まさか試験してないとか?」

 「申し訳ない。君が居なくなってからせっつかれてな。飛ばしてしまったんだよ」


意外な事実が明らかになった。普通は順番にテストするだろう!こんな事有りえないよ!


「それでは何処で団子になるか解らないじゃないですか!上は何考えてるのですか?此れが量産化出来れば、今、日本にある放置された杉山が、救われるかもしれないんですよ!」


そうなのだ。此は杉脂(すぎやに)を使った生分解性プラスチックの開発なのだ。

試験段階では、2週間で土に埋めた製品が分解されるのを確認できた。後は実機で作った製品の分解確認だけで製品化できるのだ。


 「それは解っているんだが、申し訳ない」

係長は本当に申し訳なさそうに俺に言った。


あぁ、中間管理職の悲哀。俺も一緒だったなぁ・・・

「何とか考えましょう。攪拌翼はどうですか?シュミレーションでは上手く混ざっていたんですか?」

 「攪拌翼は申し分ない。中間翼も正常に機能しているのだが、何故か団子になるんだよ」


俺はその係長の言葉を聞いてまた聞きたいことが出来た。

「攪拌が上手く行ってるのなら団子にはならないでしょう?その他の要因は何ですか?」

「それが解ったらこんな苦労はしてないよ、仕込みは普通やった。異常は無かった」


「反応速度は?上昇温度は?」

「温度の上昇率は、高かったか?緊急冷却したらしい」


「でしたら原料と可塑剤と分散剤を連続投入にしましょう!必要量と比率は決まってるのですから反応終了時間の1時間前に投入終わるように設定してください!触媒は先行投入と通常通り分割設定で大丈夫だと思います」

「成程、少しずつ入れて反応させるわけか、いいアイデアだな、早速準備させよう」

「それと此の団子ポリマーは後でクラッシャー掛けて成分分析してください。何か解るかもしれません」


暫くして準備が終わると反応をスタートさせる。定量添加装置が動き出すと反応が始まった。

監視モニターを覗くと順調に反応分散されているようできちんと粒子状のポリマーが出来ていた。


「おおー!成功のようですね!ちゃんと粒子になってる!やった!」

その場に居た全員で手を取り合って喜んだ。


「これで量産出来そうですね。30立米も見たかったけどもう時間が無いです」

そう言うと俺の身体は、細かい光の粒子に包まれる。


「森中さん!有さん!逝かないで!」

美咲ちゃんが泣きながら抱き付いて来た。


「美咲ちゃん。良い男見つけなよ。幸せになってな」

そして俺の身体は、光の粒子と共に消えていった。


「あぁぁぁ、有さん、うぅぅ、いかないでー」

そこには呆然と佇む全員の姿と泣き崩れて跪く美咲ちゃんの姿があった。


「森中君は、相当心残りだったんだろうな・・・今回の製造方法は、森中システムと名付けよう。森中君の形見だ・・・」

係長は、美咲ちゃんの肩を軽くおさえながら言った。







俺は目が覚めた。

隣にはキュリアが寝ている。俺は横になったままキュリアの寝顔を見ているとゆっくりと瞼が開く。


「おはようキュリア」

「おはようケミン、どうしたの?何かあったの?」

キュリアは心配そうな顔をして俺に訪ねてきた。


俺は何のことか判らなかったので普通に答える。

「何もないよ?」

「だって・・・泣いてるじゃない・・・」

え?俺泣いてる?


瞼に手を添えると濡れていた。

「夢を・・・見た・かな・・・」

「そう、悲しい夢だったの?」


「多分・・・嬉しい夢だよ。そうだキュリア、珈琲飲もうよ。」

「そうね、たまには良いかもね、じゃー起きましょうか」


俺達はゆっくり起き上がった。





現在第2章の構想中です。

若干時間が掛かるかもしれません。

閑話が数話続くと思います。


また、仕事が立て込んでいる為

数日更新が遅れる事が有りますが

ご了承御願いします。



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