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第8話 貴女の居ない世界なんて

私の知らない所で私の知らない誰かと過ごしている貴女を少しも知りたくない。


+++


【明日から一週間静岡で合宿だから暫く図書館には行けない。】

はるから届いたメッセージは、これだけだった。冷たい。

一週間会えないけど頑張るからとか、会えないの寂しいねとか、早く会いたいね とか、とか、とか……。もっとなにか言葉が欲しかった。これじゃ私ばっかり好きみたい。はるからも好きって言ってくれたのに。……だめだ、私今、重い女になってる。

バスケ部に知りたいがいたら応援とか行けるのにな、誰かいないかな……うーん……いない。暇だよ夏休み。はるが居なきゃ暇だよ。

「…会いたい」


「五十嵐ちょっと良いか?」

「はい」

「コーチに呼ばれるなんて何したの?」

「えっ、悪い事はしてないよ」

「無意識とか?」

「由依ちゃん可愛い顔で怖い事言わないで」

「五十嵐!」

「はい!」

「ほら怒られた」

「由依のせいだから」


「すみません、遅くなりました」

「ん。どうだ、練習きついか?」

「初日は体力的に少し。でも二目以降はそんなに」

「練習終わりも自主練してるんだろ?」

「シュート練とランだけちょっと」

「その体力とやる気があれば大丈夫だ。月末から行われる地区選抜の練習参加してみるか?」

「えっ……はい!」

「うん、じゃ詳しい事はまた話すから」

「はい、ありがとうございます」

「うん、頑張れ」

「はい!」


「怒られた?」

「地区選抜の練習参加するかだって」

「えっ……凄いじゃん、参加するの?」

「もちろん。即答」

「部の練習は?」

「分かんない、詳しい事はあとから話すって」

「…そっか」

「由依?」

「ん?」

「部の練習に私がいないの寂しい?」

「……」

「……」

「寂しいじゃない」

「えっ?」

「寂しいじゃない、いないなんて嫌だ」

「……なんか照れます」

「……うるさい」

由依はいつも照れると口が悪くなる、ツンデレってやつなのかな……。たぶんこのツンデレもモテるポイントなんだろうな。

「コーチなんだって?」

「地区選抜のこと」

「……選ばれた?」

「うん、練習参加することにした」

「凄いじゃんはる。やったね!」

「ありがとう、理佐」

「はるの努力が報われたね」

「自主練付き合ってくれた理佐のおかげだよ、本当にありがとう」

「どういたしまして」

「皆でお祝いしようね」

「良いね、やろっか」

理佐と由依で祝賀会を計画してるみたいで、私は本当に素敵な友人も持ったなと思った。皆、二人みたいな人だったら良いのに。外見だけで寄ってくる人は、どうしても苦手。

あぁ、麻衣に会いたい。ふとそんな事を思った。練習終わりに連絡してみようかな。


【地区選抜に選ばれたから月末から選抜チームの練習にも参加する事になったよ。選抜は目標の一つだったから嬉しい。】

夜にはるから届いたメッセージ。じゃ、もっと会えなくなるじゃん……。そんな事を思いながらもそんな事を言える訳も無くありきたりな言葉を打ってしまう。

【おめでとう、はる!やっぱりはるはバスケ上手だね。またはるがバスケしてる姿観たい……】

観たいじゃなくて本当は、会いたいなんだけどな……。

【ありがとう。選抜メンバーは皆、私より上手いから沢山練習しなきゃ……】

【試合観に来て欲しい。麻衣が応援してくれたらどんな相手にも負ける気がしない】

【無理し過ぎないでね。そうだよ!私が応援するからはるは絶対勝つよ。試合いつあるの?】

【うん、ありがとう気を付ける。来月中旬に試合あるから、近くなったらまた連絡するね。こんなやり取りしてると会いたくなるね… …】

はるも会いたいって思ってくれたことに胸の奥がキュッとなる。会いたい。私もはるに会いたい。

「もしもし?」

「あ、はる?」

「うん」

「ごめんね、電話大丈夫だった?」

「大丈夫だよ」

「メールしてたら声聞きたくなっちゃって……」

「私も麻衣の声聞きたかった」

「本当?」

「本当」

「選抜の練習沢山あるの?」

「うーん、週五日かな」

「大学の練習は?」

「選抜練習と被ってなければ行くよ」

「それじゃ、はるのお休み無くない?」

「そうだね……」

「……図書館来ないの?」

「一日練習じゃなければ、午前か午後どっちか行くよ」

「本当?」

「本当」

電話越しにはるが優しく微笑んでいる姿が想像できる。声から伝わるはるの優しさ。

「会いたいね」

「えっ」

「麻衣に会いたい」

だめ、胸が締め付けられて痛いよ。好きよ、はる。

「うん、私も会いたい」

「次いつ会えるかな?」

「はるの予定は?私ずっと暇だよ」

「週明けにはそっち帰るから、その時かな」

「じゃ、来週だね」

「楽しみだね」

「うん、楽しみだね」

好きと言ってしまいそうになった。でも、きっとはるを困らせるだけだから、もうこの気持ちは言えない。はるの優しさに甘えてる私は、これ以上はるを苦しめちゃいけない。

ねぇ、はる、早く帰って来て、早くあの優しい笑顔を見せて……

言葉に出来ない分、友達として傍にいさせてよ。



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