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第五話:切ない思い
今年は贔屓の球団が好調だ。
同期の友人と聖地と呼ばれる球場へ、何時もの様に試合を観に行く前の日。
心臓麻痺だった。
喪失感に涙さえ無くした。
◇◇◇
ヨーロッパから単身赴任で駐在していた後輩が帰国した。私よりも一回り年下の男だ。
お互いに認め合う愛煙家である。
「禁煙しました」
理由は聞きたくもない。
「言うな」
遅かった。
「妻が癌です」
私が仲人の真似事をした夫婦だ。
出逢う前から二人を知っている。
勿論、一姫二太郎の子供たちとも顔見知りで、秋の社内運動会でも面倒を見ていた。
「自分ならば、肺癌になっても、最後まで、吸って、いると、覚悟は、していましたが……」
五十年以上も生きていると、自分よりも若い者を見送る機会が増える。
切ない。
続く