第四話:結婚
「黒い肌のガキをヒリ出しやがった」
三ヶ月の休職を申し出た部下と面談したら、イキナリの告白だった。
「……思う存分にヤれ。出来る限りの支援をする。何かあれば……いや、何も無くても、必ず俺に教えてくれ」
年度末の殺人的なスケジュールを縫って、二人だけの時間を確保したのだ。
「会社で契約している弁護士を付けよう。なに、心配するな。ウチのような上場企業と、専属契約を結んでいる事務所だ。国内でも有数のチームだから、まず負ける事はない」
この国に於ける多くの裁判では、弁護士事務所の格で結果が決まる。
出来レースだ。
希にだが、技術者には天才が現れる。
自分の事はまるで駄目な野郎だが、人々の暮らしに役立つ突飛なアイデアを、実際の商品として現実化するのだ。
周知の基礎的な技術を思いがけない組み合わせで使い、要求された機能を満足させる機構を編み出す。
彼もそんな一人だった。
「お前の人生の分岐点だ。俺は『成功した』と言う報告を待っているぞ」
煽られると冷静になる天の邪鬼な奴だ。
それはお互いに分かっている。
お前が正しい。
その言葉を視線で伝えた。
続く
切ないですね。