第19話 船と訓練
ダーンが造船所の親父に、一言の要らない言葉を発したおかげで、
造船所の親父の言い値で、2隻の中古船を買う羽目になってしまった。
あの一言が無ければ、もっと安く中古船を買う事が、出来たかもしれ
ないのだった。過ぎた事は忘れよう.......
その代わりと言っては何だが、魔法動力と魔帆は新しいのに交換して
くれて、尚且つ魔力大砲が最新の物を付けてくれると、造船所の親父は
煎ってくれただのだった。
最新の魔力大砲は、毎分6発も撃てるとか言ってるな、ダーンが説明して
くれた。
「ヤーコブさんの船に、搭載されている魔力大砲は、毎分3発しか撃てな
いのだが、この最新式は、1分間に6発も魔力が撃てるのです」
最新式の魔力大砲は、10秒に1発も撃てるのだ。
ダーンには、この世界での時間の単位も教えてもらっている。
20秒に1発撃つのと、10秒に1発撃てるのでは、速さが違ってくる
そうなると、戦いで大きな差が生まれるのだ。早さは勝利に繋がる
とダーンが力説してくれている。
俺達には、難しくて良く解らなかったのだが、ダーンが造船所の親父と
熱く魔力大砲の事に付いて語ってるのだから、悪い物ではないのだろう
だから、安心して任せておこう。餅は餅屋に任せるのが一番なのだから!
小型船の輸送用ダウ船型には、既に最新式の魔力大砲・新しい魔法動力と魔帆
に交換してあるとの事なので、直ぐにでも航海に出れるとの話であった。
中型船のサムブーク船型は、今から全てを交換するとの事なので、2~3日の
期間で仕上げると言われていた。
サムブーク船が仕上がるまでに、俺達は小型船のダウで、航海の練習をする事に
したのだ。船長は勿論だが、一言多い男!ダーンが勤める事になっている。
ダーンは正直者なのだろうな.....言わないで良い事を言ってしまうからな.....
悪い奴ではないのだが、今度から一緒に買い物をする時は、ダーンには喋らせない
ようにしないと行けないな!
まだアンジェ達は、港に戻って来て居なかったので、ガレー船で待っているヤーコブの側近に、船を買ったので、海に出てから訓練をしてくると伝えたのだ。
そうすると、1人の船員が一緒に行きたいと言い出していた。
ヤーコブの村の者ではなく、ベールプコヴァールト村のアントンの身内だそうだ。
名前は、ランメルトと言い、ベールプコヴァールト村では船で運送をしていたとか
だからか、船に乗りたがっているのだ。
ランメルトは、船乗りになってから、まだ2年だと言っているが、船に乗り込んで
からと言うもの、仕事が出来る男なのだろうな!仕事をする姿が板に付いている
のだった。立ち振る舞いも、一端の船乗りと変わらない!
ランメルトを乗せた、俺達の小型船のダウは、港を出港すると外洋に進んでいる
食料と水などは、港で1日分買い込んで乗せているので、そこまで遠くに行く気は
なかったのだが、もしもの時があるかも知れなかったのだ。
ダーンもランメルトも、俺が最初は食料など要らないと言ったのだが、2人が猛反発して来たのだった。2人が言うには、海を舐めたら酷い目に合うから、兎に角
食料や水だけでも乗せて置いた方が、俺達の為になると言ったのだ。
ここは経験者の意見を訊くことにした。
訓練では、まず最初にする事と言うと、船の部品などの名前を覚える事だった。
小型船なので、そんなに覚える物も無かったので、直ぐに全ての名前を俺と芳乃
静に秋は覚えたのだった。
部品の名前を覚えたら、次にする事は、物の使い方を覚える事だった。
此れには俺達も、だいぶ苦労させられたが、何とか覚えたと思う?
まだ自信がないから、時間を掛けて覚えていくしかないだろうな!
沖合いに出ると、ダーンが待っていたように俺に言ってきたのだ!
「好成さん!魔力大砲の試射をしても良いかな?」
ダーンとランメルトも、大砲の試射が楽しみだったようだな?
2人は、楽しそうに大砲の試射の準備を始めている。
「ダーンが試射をしたいのなら、俺は賛成だぞ」
俺の言葉を訊いたダーンは、船の上なのに大はしゃぎしている、揺れるから
飛び跳ねるのは止めて欲しいの!
漂流している丸太に向かって、ダーンとランメルトが大砲を撃ち出したのだが、
2人は漂流してる丸太に、魔力大砲の弾を当てる事が出来ないで居ると、見かねた静と秋がダーンとランメルトの2人と交代した。
静と秋は、2人からそれぞれ撃ち方を教えて貰うと、漂流している丸太に目掛けて
魔力大砲の照準を合わせてから、大砲を放ったのだった。
魔力大砲から飛び出した弾は、漂流している丸太に吸い込まれるかの様に、丸太に
直撃して丸太を砕いていた。此れを見た芳乃と俺は、根来衆のくノ一の2人が1発
で丸太に直撃させた事に、対抗心が芽生えていたのだ。
オレは来一族の者だ。此処で大砲を目標に当てる等は、大した事ではない。
自分にそう言い聞かせて、次の目標を探して周辺の海域を航海していたのだった。