第129話 吹っ飛ぶ者と色合いの感性
インガ婆様の昔話を聞いていたのだが、この家族は昔から色々と苦労を
していたのだと思った。
天災に見回れてしまい、その弱みに付け込み島を襲撃してきた海賊共に
怒りを覚えたのだが、そんな事は戦国の世では日常茶飯事であったから
それも定めかとあきらめかけたが、話を聴くにつれて段々とインガ婆様
とエドヴァルドさんの遣り取りが窺えたのだった。
商売人は自分の命と品物の対価を天秤に掛けると、自分の命を大事にする
のだが、これは誰だって自分の命を優先させる事をするであろうが、この
婆様は遣る事が人より何倍も大胆である。
その当時は貴重であった魔力大砲を全門を領主様に譲り渡したのだから
他の人では早々遣れる事ではないだろうな!
それも後先考えずに、全部の魔力大砲を領主様に譲り渡したのがから、
何とも豪気としか言いようが無かったのだ。
海賊を討伐した後の事をインガ婆様が話しだしたので、ここは何も考え
無い様にして話を少し聴くことにしよう。
「だから、海賊の討伐が終わった後に領主の所に行ったんじゃがな、
領主は最初は中々に、私と会おうとせんかったんじゃよ!
何度も何度も訪ねたんじゃが、領主は戦の後始末に追われているとだけ
しか言わないで、私との面会は叶わなかったさね」
「母上は先代様に会えなかったのか?」
オレークさんがインガ婆様に心配そうな顔をしながら訊ねると、
インガ婆様は、下を見つめていたが急にオレークさんの顔を見て
話を再開したのだった。
「領主に会えないならば、領主の身近な者に会って私えの報酬に付いて
きっちりと話を付けようと思ったさね。そうしなければ家族揃って飢え
て死ぬしか道は残されてなかったんじゃ」
領主様の身近な者と言うと、この場合はエドヴァルドさんになるのかなと
俺は思ったのだが、話を聴くとそうではなかった様である。
「エドヴァルドも忙しく動いていたからな、領主と同じで中々捉まらずで
そこで私はな考えたさね!エドヴァルドが捉まらないならば、エドヴァルド
の妻を尋ねれば良いじゃないかとね!」
「流石は母上、相手の弱い場所を衝くのが上手いですな」
オレークさんの褒め言葉で、少しだけインガ婆様はご機嫌になった様子で
満更でもないと言う顔をしていた。
誰にでも出来そうで出来ない事をすんなりと遣るインガ婆様を俺は、少しだけ
怖いと思っていたのは内緒にしておこうかな・・・・・
「ヘレナは当時はまだ白の精霊騎士団の団長をしていたんじゃよ。そして
エドヴァルドと結婚して間もなくてな、新婚ほやほやって感じを滲み出して
いたさね!ケッ・・・」
インガ婆様よ・・・人様の幸せを羨んではいかん!
そんな事をすれば自分が惨めになるだけだ。
「ヘレナとはな、その時に初めてあったんじゃよ。
ヘレナはな若い時はなそれはそれは綺麗じゃった。私の十代の時の様で
昔の自分を見てるかの様に錯覚すらさせられてしまう位じゃったんじゃ」
《えっ!?》
いやいやいや・・・インガ婆様とヘレナさんが同じレベルだと・・・
何を血迷った事を言っているのだと俺は思ったのだが、そんな事を
口に出してしまっては、俺の生命に関わる事なので口が裂けても言える
事柄ではなかった。
もしも、そんな事をポロリと口に出してしまえば、インガ婆様が手にしている
硬い鉄の棒で殴打させられて居たであろう。
「母上、何を馬鹿な事ぉ・・おぉ・・・」
オレークさんがぁ・・・口は災いの元とは良く言ったものだな。合唱!
凄い音をたててオレークさんは横っ飛びしながら部屋の隅にある本棚えと
激突していた。
インガ婆様が持っていた物は、鉄の棒ではなく俺が製作した鉄扇だった。
俺がインガ婆様に渡した時は、色を金色にして渡したのだが何故か今は
銀色に変わっていたから俺は鉄の棒と判断してしまったのだ。
好く見ると銀色に少し黒色を入れてあって渋い色合いに仕上がっていた。
金色よりかは、何倍も良い色合いに仕上がっていると思う。
何故、俺が金色にしたかと言うと、それはだな・・・老人は金色が好き
だからと言う安直な考えから、そうしただけであったのだ。
くぅ・・・インガ婆様の方が何倍も俺より色合いに対しての感性がよい
のを認めるしかないようだ。
数ヶ月間の間、続きを書けない状態でしたが
何とか頑張って続きの話を考えてみました。
まだまだ話を修正しないと行けない部分もありますが
時間を掛けて手直しをしていきます。
これからもどうぞご贔屓にして下さい。