第125話 地下施設と孫の為
「町の中心地に、あんたらの鍛冶関連施設と銃組合施設が建つ
ってのは問題ないが、何で私達の研究施設が、集落の外れなの
かね?銃組合の隣でも良いじゃないか?駄目なのかね?」
水魔法使いのカティ婆さんは、研究施設が集落の外れに建つ事
が余程に嫌そうで、組合の隣に研究施設を建てたいと主張し続
けている。
「だから~何度も言ってるでしょうが!魔力球の研究は昔から
危険が多いんだから、集落の端でないと作れないと!もしも、
研究中に魔力球が爆発でもしたら、集落が消し飛ぶでしょが!」
「そうじゃな....私も何度も爆発させて、街中を火の海にした事が
あるさね!オレークが言ってる事は、至極、当然の主張さね!」
んっ....インガ婆様が、怖い事を言ったぞ!
「それは、火魔力球じゃからじゃ!わたしのは土じゃって、火より
爆発したとしてもましと言うものじゃよ!」
爆発する事が前提で言われても、こっちとしても困るのだが....
「私のは風ですよ!爆発したとしても、爆発風で家々が吹っ飛ぶだけ
ですからね!火よりかはましですわ!」
この人達は、駄目な人達なのかも知れないな....
「もうこうなったら、地下にでも全員監禁して、そこで研究をさせれば
爆発したとしても、死ぬのは婆さん連中だけで済みそうじゃな!」
《ふざけるな!・ふざけるでないぞ!・ふざけるのは顔だけにしてよ!》
オレークさんが、無茶苦茶な事を言い出しているが。
でも、婆様達からのもう抗議で、オレークさんは口を手でふざいで
「しまった」と言う風な顔になっているのだが。
一向に決まらない話し合いを続けているのだから、口が滑ったとしても
仕方ないとも言えるな。
「そう言えば、精霊大戦中に、あの近辺には地下施設があったと訊いた
事があるさね!何の地下施設だったかは覚えておらんが、地下に施設が
まだあるのならば、そこを研究施設にすれば良いさね!」
精霊大戦って言うと、約100年前、シーランド本島で起こった戦いの
事だよな?その時は、ケット・シー族は精霊族側として、人間と戦った
歴史を持っているが、その当時のケット・シー族の生き残りが、まだ居る
ならば......
いるならば......
居たわ!
「あたいって、こう見えても100歳以上なのよ!」って言ってた人が居たわ!
ケット・シー族の族長のアンジェに訊けば、地下施設の場所が判るかも
知れないな!ハルネフェルド村にアンジェが戻っているから、訊くとし
ても村に着いてからでないと、聞く手立てがないが、早々焦る必要も無
いから、アンジェに会った時にでも詳しく訊くことにしよう。
俺は、インガ婆さんにアンジェが、地下施設の事を知っているかも知れない
と伝えると、インガ婆さんもその事を考えていたらしく、頷いていたのだ。
「地下とか空気は悪いし、暗いし、虫とか多そうだし、嫌よ!」
風属性の使い手スオマさんが、地下が嫌いだと連呼しているが、オレークさん
は真剣な表情で、俺の話を聞いていた。
「いやいや!スオマよ!精霊族が使っていた施設だと言う話だし、もしかする
とトンでもない掘り出し物件かもしれん!魔力の地脈がある場所に施設があれ
ば、魔力など使い放題になるのじゃからな!」
《なっ....なんだって!?》
流石は元宮廷魔法使いを務めただけの事はある。博識で物事を違う観点から
見れるとは流石だと言える。
因みに、この元宮廷魔法使いの人の名前は、土属性の使い手マリタ婆さんと
言うそうです。
「もしも、そんな場所に施設があるならば、魔力球の生産をするの何って
無料同然に出来るさね!」
「そうじゃ、そうじゃ、材料費や魔力回復薬を使わないでも、幾らでも作れる
のは魅力的じゃ!」
水魔法使いのカティさんと土属性の使い手マリタさんは、精霊族の地下施設
での研究施設を作る事に乗る気の様だな。
でも、風属性の使い手スオマさんは、魔力の使い放題と言う単語には引かれて
居る様だが、どうも地下が嫌いな様であったのだ。
「スオマよ!お前さんは、初孫に自分の偉大さを示したいと言って居たじゃな
いか、もしも、今回の仕事が成功すれば、お前さんは歴史に名前を刻む程の偉
業を成せるのだぞ!ちょとばかり嫌な事があろうとも、孫の為だと割り切って
仕事をしてみよ!」
「ぐっ....エミリの為に....頑張る.....」