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戦国の鍛冶師  作者: 和蔵(わくら)
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第121話 司祭と苦肉の策

今居る場所は、鍛冶屋の黒猫屋にあるシーランド銃の訓練場であった。

そこでシーランド銃を練習していたのは、精霊教の司祭と従者に修道女

達である。此の者達は、シーランド銃の訓練を開始を始めてから半月も

経っては居なかったのだが、既に的となっている目標に魔力弾が命中す

る程までに上達をしていたのだ。


司祭が一息付いている時に、俺を視界の隅に入れたのであろうか、直に

俺に話しかけてきた。


「好成様、どうですか我々のシーランド銃の扱いを御覧になられて驚かれ

ましたか?既に我々は的に当てれるまでになっておりますぞ!魔獣や魔物

が相手でも我々は、決して後れを取る事はありますまい」


司祭様、その考えが1番怖いのです!物事に為れた時に足元を掬われる

可能性が高くなり、結果として失敗する事がないと思っていても失敗を

してしまう事になります。ですから油断をせずに気を引き締めて下さい!


この司祭に忠告した言葉は、先日前に起こった事が切っ掛けであったのだ

ろう事は、司祭には知る由も無く、好成も自分に言い聞かせる意味で言っ

ただけなのだった。


「好成様のご忠告であるならば、私としても無碍には出来ませぬ!好成様

の言葉を片時も忘れぬ様にし、もしもの事が起きたならば、その言葉を思

い出して戦います」


司祭様、そうして下さい。


好成は短く返事を返すと、司祭に何か分からない事は無いかと訊くと、

司祭から色々な事を訊かれてしまったのだ。


「丁度よかった!聞きたい事が沢山あったのです。まず始めに訊こうと

思ってた事が、シーランド銃の値段です。1丁の値段を教えて下さい」


正確な値段は決まってませんが、1丁辺りの値段は1.500ベルクから

2.000ベルクとなる予定ですね!


「1.500ベルクから2.000ベルクですか!?」


値段が高すぎましたか?


「精霊教が大陸の大多数の国で広まっていた時期でなら、その値段でも

買えたと思いますが、知っての通り精霊教は大陸では、既に西方諸国の

一部でしか信仰されていません.....今の精霊教には、それだけの値段では

数を揃えれる事は出来ませんね」


それでは、幾らでしたら買えるのですか?


「そうですね......1丁の値段が800ベルクから1.000ベルクでしたら、今の

値段の倍は買えるはずです」


800ベルク.....う~ん......ケット・シー族が溜め込んでいる鉄鉱石を奪還さえ

出来れば、その値段で教会に卸しても問題ないはず.....だよな?


「800ベルクで我々に売って下さるのですか?やっぱり好成様は神様の使い

です。貴方様が精霊教にご尽力くださるのならば、我々は無敵でしょう」


司祭は好成の独り言を聞き逃すはずが無く、直に好成の言った事を取り消

されない様にしていたのだった。


司祭様、まだ確実な事は言えませんが、もしかすればの話なので、期待を

されても後から値段が変わる事もありますからね!


好成は司祭の強引に交渉を進めようとした事に対し、牽制の意味を込めて

まだ確実ではないと言ったのだが......


「好成様は我々、精霊教徒の味方ですから、その慈悲を我々教徒の為に

使ってくれると信じています。好成様は神様の使途なのですから」


司祭は強引に、シーランド銃の値段を1丁800ベルクだと思い込み、そのまま

好成に巻くし立てて居たのだった。


好成は、強引な司祭の交渉術に負けてしまい、司祭に押し切られる形となって

しまった。そうなると好成も養う者達が居る、それは芳乃や静に秋の3人だ。

この3人の食い扶持を稼がないと行けないので、好成も引くに引けない立場で

あったのだ。


司祭様、来式シーランド銃を800ベルクで精霊教に卸すとなると、望遠鏡と銃底

それと二脚を外した物になりますよ?


「いやいやいや.......ちょっと待って下さい好成様!」


司祭は慌てて好成の言った言葉を考えていた。それらを外されたら来式の

長所と言える物が全てではないが、半減してしまう事になるのだ。

そうなれば、安くシーランド銃を仕入れても、性能が悪い物になってしまう

事に司祭は恐れていたのだ!


「銃底は、作りを見るからに後で付ける事など出来ないと思いますが、

外して売って貰ったとして、買った後に銃底を付ける事は可能なんで

すかね?」


き....気合があれば.....取り付けできる......はずです。


好成は司祭の顔を直視できずに、顔を逸らしながら話しているのだった。


「気合?気合で取り付け出来るのですか?」


その問いに対して好成は、短く「たぶん」とだけ呟いたのだが、それで司祭

が納得するはずもなく、好成の胸元を掴んでユサユサと前後に揺らし始めた

のだった。


この時に好成が考えて居た事は、旧式になってしまった銃底を取り付ける前

の鋳型を使い、木材の値段を抑えて製作を考えて居たのだ。


既に旧式となってしまった型ではあるが、それなりの量の作り置きしてあった

旧型を使えば、値段を抑えつつ司祭の要望を適える事も出来ると考えた末に、

考え抜いた結果だったのだが、司祭は来式狙撃銃の射程や威力が落ちると思い

込み、好成に詰め寄って抗議をしていたのだ。


だが、彼等はまだ知らなかったのだ。この好成の苦肉の策が、来式銃の未来を

変えると言う事に、2人は今の段階では気が付いていなかった。



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