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戦国の鍛冶師  作者: 和蔵(わくら)
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第104話 彼女の将来と貴族の未来

泣き崩れるヘレナをエドヴァルドが、助け起こすとエドヴァルドが、

今度は俺に自己紹介をして、白の騎士団の団員の治療のお礼と娘の

治療のお礼を言ったのだった。


彼は、黒の騎士団の頂点に居る人物だそうで、ヘレナさんと同じく

辺境伯に所属する騎士団の実質的な、頂点に君臨する2人であった。

俺は、それを訊いた時は、無礼にならない様にダーンやヤーコブか

ら習った挨拶をしたのだが、平民が騎士に対してする礼とは、どう

も卑屈な感じがするが、それは日ノ本でも同じである。


土下座をして、相手の許しがなければ頭も上げれない。そんな礼を

此方の世界でする訳にも行かず、此方の世界の礼をしたのである。

それは、肩膝を突き右腕は心臓の前で、握り拳を作り固定したまま

で、左腕は背中に回し固定する。それが、此方の世界での偉い人に

対しての礼であった。


土下座か肩膝を付くかの違いでしかないが、相手より目線を下げさ

せられるのだ。それが俺には卑屈だと思わせていたが、庶民の様に

立ったまま挨拶などが出来るはずも無いので、俺は卑屈だ何だと、

思っていても口には出さなかった。


そうするとエドヴァルドさんは、俺に立つ様にと言ってくれたのだ。

娘を救ってくれた御仁に対して、平民だの何だのと言う気は無い様

であった。そこで俺も言われた通りに、立ち上がり女性騎士の名前

を教えて貰うと、エルナさんの傷の説明を伝えたのだった。


傷口が、ギザギザに切り裂かれて居たのが、処置を困難にさせてお

り、処置が少しでも遅れていたら、エルナさんの命は無かった事も

両親に伝えたのだった。


そして、エルナさんが回復した後の事も伝えていた。それは......


エルナさんは未婚で、歳もまだ若く健康的な身体であったが、問題は

彼女の胸元に、大きな切り傷が残る事であったのだ!もしも結婚をし

結婚相手の旦那が、傷を見る事になった時に、この傷の大きさや深さ

を直視できるのか、もしも、旦那になられる人が傷が原因で、結婚を

取り止めると言うのならば、それは悲劇である!


その事を両親に伝えたのだが、エドヴァルドさんとヘレナさんは、俺

に傷の事まで心配しないで良いと言ってくれたのだった。もしも、夫

となる人物が、エルナさんを泣かせる様な事をすれば、白の団と黒の

団を敵に回す事になるだろうと、2人は言っていたのだ。


この人数を見ると、2つの騎士団を合わせれば、1.000人近くの団員が

居そうだと好成は思ったのだ。千人もの騎士から敵対されれば、俺な

らば直ぐに逃げ出すだろう!どう考えても無理だ死ぬ!


好成は苦笑いを続けていたが、教会の奥から一際大きな呻き声が聞こ

えて来たのだった。その声の方を見ると、静が腰に矢が刺さった騎士

を相手に治療をしていたのだが、静と秋だけでは暴れる騎士を抑える

事は出来ずに、騎士は痛みを堪え切れずに暴れていたのだった。


直ぐに俺は静の傍に駆け寄ると、騎士の上半身を押さえて動きを止め

様としたのだが、騎士は好成より数倍も体が大きく、力も好成よりも

強いかと思う程に、暴れる際に力を出していたのだった。


騎士が動けば動くほどに、刺さった矢が背中に食い込み、矢を取り出

す事が困難になっていたのだ。大男を暴れさせない様にするには.......

最後の手段を使うしかなかったのだ。


それは......


暴れる騎士に対して好成は、大声で「すまん」と言うと、騎士の後頭部

の少し下の首筋に、手刀を叩き込んでいたのだ。それを観ていた仲間の

騎士が、足を引きずりながら好成に詰め寄ったのだが、直ぐにエドヴァ

ルドとヘレナが、何故あの様な事をしたのかを騎士に説明していたのだ。


騎士も説明を静かに訊いており、話が終わる頃には納得した様であった。

傷付いた者に対して、少し乱暴であったが彼を助ける為とは言え、強引

な遣り方であった事は否定できなかった。


だが、矢を腰から抜かねば、この大男の騎士は最悪で、歩けなくなる事

も考えられたのだ。そうならない為に遭えて好成は、手刀を首筋に入れ

てまで彼を気絶させ、助けようとしたのである!


静が気絶した男性の腰から、刺さった矢を取り出したのは、彼が気絶し

てから10分後の事であった。腰の筋肉を切り鏃を折らない様にしながら

丁寧に取り出したのだ。その甲斐もあり、鏃は折れる事も無く無事に腰

から取り出されていた。


騎士の処置が成功した事を教会の待合室で、神に祈っていた家族に告げ

られたのだった。


「精霊様、有難う御座います!主人を助けてくれて感謝します」


騎士の妻であろう人物は、待合室だと言う事も忘れ、大声で教会の壁画

に描かれていた精霊に、感謝の言葉と口付けを続けていたのだった。


エドヴァルドとヘレナは、白の団所属・エルナ分隊の副分隊長である

アンットの処置が終わるのを見届けると、2人は教会を後にしていたの

だった。


2人が向かった先は、辺境伯の屋敷である。被害報告と此れからの貴族に

対しての対応策を辺境伯に報告する為であったのだ。


「あの貴族は、シーランド本島から生きて出られる事は、これで無くな

ったわ!私を完全に怒らせたのは、エドヴァルドに続いて2人目よ!」


「お......おう!........」


返事をしたエドヴァルドは、ヘレナの顔を見るなり数歩程、後ろに後ず

さる程に恐怖していたのだった。エドヴァルドはヘレナと結婚する時に

決闘をして勝ったのだが、売り言葉に買い言葉で、ヘレナに色々な事を

言ってしまって怒らせた経験はあったが、その時は、此処までの顔をし

ては居なかった。


娘を傷付けられたヘレナは、完全に鬼と化していたのだった!



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