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39:スキル

 クロの前足を持って、リストの先頭の魔眼をポチっとする。

 「んっ、」

 あれれ。これはなんというか、

 「魔眼ゲットなのだ!」

 早速魔眼を発動しているクロ。目が紅くてなんかただの魔物っぽいよ?

 「あれ?」

 リストが消えない。

 「どうしたのだ?」

 「そういうことか」

 表示内容が変わっている。リストに表示されているスキルは3つのみ。先程あると予想していたそれらが表示されている。


 【二刀流、スキル強奪、悪運】


 「凄い選択肢が出てるね」

 「うむ、ボーナスステージ?」

 「ボーナススキルかな、どうしようか?」

 「スキル強奪?」

 「んー...」

 スキル強奪は確かに魅力的だけど、なんかなあ。これって悪運とセットで罠な気がするんだよねぇ。

 「二刀流かなあ、クロ取る?」

 「む、我が取っても意味ないのだ。リンが取るのだ!」

 二刀流は剣術スキルがないと意味の無いスキルだったよね、たしか、あれ、ん? 槍術で槍二本持っても発動するのかな? それは二槍流? どうなんだろう。

 「そうだね、少し興味があるし、二刀流取っておこうかな」

 「リン、なぜスキル強奪はダメなのだ?」

 「え、だってクロそれ取ったらフジワラ君殺そうとか言い出すでしょ?」

 「キラーン! リンそれは名案なのだ! それで忍術もゲット出来るではないか! 完璧な布陣!」

 「えー、そこまで考えてなかったのね。けどそんなこと言い出した時点でスキル強奪は却下です」

 「むぅ!」


 まあ大体にして、悪運の悪というのと同じで、強奪などという言葉が入っている時点でろくでもないスキルなのだ。これは相手を殺すことで発動するスキル。これの持ち主がそうだったように、最終的に光魔法の蘇生が効かない魔物、つまり一回しか強奪のチャンスがない相手よりも、蘇生させることでなんどでも強奪の可能性を試せる人間へと標的が移る。これはそういう類いのスキル。暗殺も含まれるけど対魔よりも対人用と思われるスキルが少ないけど確実に存在している。しかも人の持つ暗い部分の、いや、光魔法も魔物に蘇生が効かないという時点で対人用のスキルになる、バランスは取れているということなのか。


 このスキルを持って踏み留まれているフジワラ君は本当に凄いと思う。反面、危ういとも思ってしまう。おそらく通常スキルのみしか強奪できないことが最後の一歩を踏み留まれている最大の要因なのだろう。もし、その要因が取り除かれた場合はフジワラ君でも踏み留まれないのではと思ってしまうし、その時は別の落とし穴が大きな口を開けて待っているのではないかと想像してしまう。



 二刀流スキルを選択する。



 宝箱が消えて行きボス部屋の扉は閉まったまま脱出用の転移魔方陣が出現する。つまり迷宮クリアということ。これでしばらく最下層の扉は閉ざされたままとなる。次に開放されるのはいつになるのか、迷宮のランクが上がったことで今までよりも時間が空くのかもしれない。


 「じゃあ帰ろうか」

 と、魔眼を発動しっぱなしのクロにいうが、さっきから私の事をじーっと見つめたまま何か言いたそうに黙っている。そう、思いっきり鑑定されているのだ。

 「どうしたの?」

 「どうしたのじゃないのだ!」

 「え、なにさ?」

 何となく察しはついているのだけどね。

 「なんなのだ、それはぁぁあ!」

 言いながら私の顔に頭から突進してきて、頭をぐりぐりと押し付けてくる。

 「え、もしかして神眼のこと?」

 「そうなのだ! 我はリンに説明と謝罪を要求するのだ!」

 ぐりぐりが激しくなる。

 「なんで謝罪しなくちゃいけないのさ、」

 そう、私のスキルに神眼が増えているのだ。正確には魔眼が無くなり神眼になったといった方がいいのか。おそらくクロが魔眼を選択したとき私も魔眼を取得したことになったのだろう。どういう判定がなされたのかは不明だけど結果魔眼が神眼に変化した。この場合は進化したといった方がいいのか、ソコのところはまだちょっとよくわかっていない。

 「リンだけ二個もずるいのだ~!」

 「えー、」

 「我も欲しいのだ~!」

 「でも、魔眼の方が格好いいよ?」

 「むむ?」

 「クロも神より魔の方が格好良いと思わない?」

 「ぬぬ?」

 「ほら、クロ目が紅くて魔王っぽいよ?」

 「なぬ?」

 「あ、魔神王だっけ?っぽいよ?」

 「えっへん!」

 あ、よかった。魔神王だと神も入ってるからゴネられるかと思ったけどなんとか誤魔化せたみたい。


 「くくく、我の両目が疼くのだ!」

 クロが魔眼を発動しながらなんかポーズを決めている。

 「カッコイー!」

 「くくく、リンの目は何色なのだ?」

 「ん、」

 言いつつ神眼を発動してみる。


 「――――っ!」

 意識が、、


・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・


 「――ン! リン!」

 クロの呼び声で意識が、、

 「大丈夫。ごめんごめん」

 「リン、神眼使用禁止なのだ、、」

 クロもわかっているようだ。

 「ん、気を付けるね」

 「使用禁止なのだ!」

 「んー、大丈夫。ちゃんと対策考えるからさ」

 「むー!」

 クロが身体をくっつけてくる。


 神眼。

 発動した瞬間、魔力が枯渇した。


 初めて手に入れた神と名の付くスキル、これは想像以上に危険なものなのかもしれない。





 セザールはスキルの迷宮が攻略されたとの一報に、取るものも取り敢えず迷宮入り口へと急いで移動している。途中、ゴルジフ家の騎士達や迷宮攻略者の顔を見ようと集まる冒険者達を見かける。そのなかには見覚えの無い顔もちらほらと交じっていた。どのようにして潜り込んだのか、冒険者ギルドの支配が及ばないとはいえ管理迷宮の入り口にまで入り込める者達、貴族の関係者かとも思ったが格好が冒険者だ。だが冒険者の情報を得るために送り込んだ貴族側の密偵の可能性もある。迂闊に誰何(すいか)するわけにもいかない。苛立たしいかぎりだ。


 などと思っていたところ。転移魔方陣が輝きだす。

 誰か?

 迷宮を攻略したのはどのような者達か?

 思い当たるお方は只一人なのだが、今朝方バラの宿で騒ぎがあり、まだその収拾がついていないと、宿を出た形跡はないと報告を受けている。セバスチャンの事だから秘密裏に外出させる手立ては幾つもあるだろうとは思ってはいたのだが、まさか昨日の今日で攻略を行うなどは無いだろうと高を括っていた。常識をことごとく覆えさせられる。


 現れたのは、見知った冒険者達。あれはたしか二層のボスを標的にしている者達だったか。しまった、迷宮が攻略されたということは最下層ほどではないが各層のボスも暫くポップしないということだ。つまりここに出てくる冒険者は迷宮攻略者のみというわけではない。

 魔方陣が輝き冒険者達が次々と現れる。その冒険者達も迷宮攻略者を一目見ようと魔方陣の周りに陣取り始める。これでは区別がつかん。


 「オオッ!」

 冒険者達の驚きの声に魔方陣を見れば、メイド服の集団と冒険者風の者達数名が出現している。貴族の中でも特別な存在、火の一族の者達。彼女達がいるということはつまりそういうことなのだろう。

 「エエィ、ドケッ! 退かんか!」

 相手が悪いと踏んでか一応に黙り込んでいる冒険者達を掻き分けそちらへと進む。



 その光景を輪の離れたところから眺めている男。

 「彼等です」

 メイドと共に現れた冒険者風の者達が迷宮へ放った手の者だと、その男に説明するのを黙ったまま聞き頷く。

 「取り急ぎ報告を、」

 「あのー」

 「!!!」

 聞き覚えのある声に黙ったまま盛大に驚く。大声をあげなかったのは我ながら天晴れと褒め称えたい。

 「ヤンさん。終わったんで帰ろうと思うのですが、」

 さも当然のように会話を始める声の主リン様。

 「リ、リン様。何時からここに?」

 「え、さっきから?」

 「は、はあ。終わったというのはリン様が迷宮攻略をしたということでよろしいのですか?」

 頭をフル回転させ会話を続ける。

 「まあ、そんな感じです」

 のほほんとした口調でとんでもないことを言う。初対面の時の会話を思い出せは、これが地と言うわけではないのは想像がつく。

 「どのようなスキルを取得したんですか?」

 答える筈がないとわかっているが聞いてみる。

 「え、秘密です」

 「敵は手強かったですか?」

 己のコピーだという話だが、

 「まあ、ほどほどです」

 「道中で何かありませんでしたか?」

 国をひとつ滅ぼしたといわれる勇者がいたはずだが、

 「さあ?」

 まともに答える気はない、と。ならば、反応だけでも、

 「勇者ユウキですが」

 「?」

 首を傾げるだけで対応してくる。何の感情も面に現れない、分かっていたことだが何もつかめない。


 「迷宮が吸収しましたよ」


 !!! 何を?

 いや、つまり、そう言うことなのか? なぜ?

 「それは、ユウキを倒したと言うことですか?」

 「さあ?」

 と言い、ただ曖昧に微笑むだけだ。これ以上話すことはないと言うことか。


 後でわかったことだが、勇者ユウキの愛用していた必中の剣を火の一族のメイドが持っていたという報告を受けた。つまり、ユウキに関係したことの足がそこからつくと踏んでの「迷宮が吸収した」だったのだろう。火の一族に配慮したのか、それともこれ以上詮索するなという警告か、いずれにしてもローラン王国が勇者の死体を手にいれるという、降って湧いた危険な任務は遂行不可能ということだ。

 正直なところ俺の手の届かないところで事態が終息したことに少し安心している。勇者ユウキの死体の確保というは、最悪の二択が発生した可能性があるのだ、友好な勇者か、絶対服従の勇者か、王都のヤンならば二択なのに迷わず両方と答えるだろうが、果たしてこの俺にそれほどの知恵が出たかどうか。


 「で、このまま王都に帰りたいんですけど、何か移動手段はありますか?」

 友好な勇者が聞いてくる。

 「このままですか? 移動手段でしたら、この町に来るのに使った我々専用の馬車がありますが」

 「はい。あ、バラの宿の支払いが済んでないので、町外れかどこかで落ち合う形でお願いしたいのですけど」

 「宿代でしたら我々にお任せいただければ、あちらでは王女がどうとかの騒ぎになっていますし、おそらくこちらも迷宮攻略がどうという騒ぎになりそうですですので、迷宮の入り口に注目が集まっている今ならば移動も容易いかと」

 「はあ、あの、宿代踏み倒したりしないでくださいね?」

 「そりゃまた、我々の評価はどの程度なんですかね」

 「え、貴族の親分的な?」

 「はあ、リン様、王族をその辺の貴族と同じにしないでください」

 まあ、一部の貴族がクソなことは裏の仕事をしている以上知ってはいるが、ローランの名をだしている以上その様なことは絶対にしない。

 「ヤンさん、取り敢えず移動しません? これ以上長居するとメイドさん達に気づかれそうで怖いんですけど」

 確かに、今火の一族のメイド共にここにこられるのは不味い、すべての注目がリン様に集まってしまい身動きがとれなくなる。

 「わかりました」

 指示を出しながら移動する。ブオトの町に散らばっている者達へ、馬車の手配、情報の集約、噂の煽動。

 「あっと、あの人達との合流は後にしてくださいね」

 リン様が迷宮に同行した冒険者に扮した者達を指差す。

 「何故ですか?」

 「いやあ、もれなく隠密したメイドさんが付いてくると思うので、ねえ?」

 「ああ、わかりました」

 部下の一人を見れば、ちいさく頷き魔方陣から現れたメイドの数がいつの間にか減っていると報告してくる。


 まったく、抜け目の無い奴等だ、まあ敵でないのが唯一の救いか。


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