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37:私vs私その2

 現時点での状況分析をしよう。

 戦力は、こちらは私とクロ。対してあちらは私コピーとユウキコピー。

 技量、意外なことに私と私コピー、糸の操作を見る限りというかスキルではない技能までも使いこなしている事と、その扱いの錬度までもが同等な存在となっている。餌にしたスキルが相当良かったのかそれとも大当たりを引いたのか、正直魔王とかが出てきてくれたほうがまだましだった。いとも簡単にという訳ではないのだろうけど、完全に私のコピーが創り出せてしまう迷宮と言う存在の奥深さに感嘆を禁じえない。


 ユウキコピー、これに関しては中身も本人と同じと想定したなら雑魚といってしまっても問題ないかな。スキルスペックは最強だけど、まあそれだけ、武器を持っていないから使える武技スキルは格闘術だけ、魔法は全て使えるが糸との相性を考えると有効なのは先ほど使った雷系。だけどあちらもこちらも糸使いである以上きちんと連携しないと自滅の恐れもある。

 私コピーのパートナーとしては完全なる失敗策。よほど息の合った仲間で無い限り人間サイズでは糸の運用の邪魔でしかない。


 その点、子猫サイズのクロは糸との相性がとても良い。練習が必要だったけど糸の上を走る事も出来るし、糸の隙間を縫うように移動も出来る。後ろ足や尻尾に糸を絡めての奇襲も有効だ。

 まあけど、相手が私である以上クロも迂闊に動くのは危険。悪戯に動くクロを糸で捕まえる事に関して私はエキスパート、つまり当然私コピーもエキスパートだという結論に達してしまうからだ。


 私対私だけと考えるならば、向こうが出現する前から準備を始めていた私に少しだけ分がある。しかしそれは相手が私だけでは無いとなると誤差の範疇。

 やはりキーはクロとユウキコピー、いや、私コピーにとってユウキコピーは単なる捨て駒、だよね、おそらく、死んででもいいから有効に利用しようとするはず。逆に私にとってのクロは...




 糸の攻撃方法は数種類存在する。


 代表的な一つ目は、鞭のように糸を高速で相手に叩きつける方法。糸が相手に当たる瞬間、鞭は手首のスナップで威力を増すが、糸は指をくいっとする事で先端が音速を超え対象を容易く切断する。


 ひぅんと糸が風を斬り私へと襲い掛かる。縦に斬り下ろして来る糸を横に斬る糸が迎え撃つ。互いの糸が糸を断つ。



 二つ目は、空気の流れに糸を乗せ漂わせる方法。特に戦闘時は敵と味方の間で、時には激しく時には微量に気流が発生する。風に舞う蜘蛛の糸のように漂わせた糸を指先で細かな軌道修正を行ったり、糸自体を空に放ち自由に漂わせたりし、有効な間合いに入った瞬間、指先のわずかな動きで糸を相手に絡めたり、魔力による強制的な力で糸を操り相手を斬り裂く。


 間合いに達したその糸を掴み、私と私が魔力を放つ。

 糸の両端から放たれた魔力が糸の中間でぶつかり合い糸が千切れる。



 三つ目は、複雑に編みこまれた糸の結界。不用意に突っ込んできたものを切断し、魔力を通す事で足場として運用する事も出来る糸の結界。張り詰めた糸の一部を切り離す事で任意の方向へ糸を一直線に放つ事も出来る。直線的に襲来する針よりも細い糸は音も鳴らず痛みも感じず相手へと突き刺さる。


 私へと飛来する糸、真っ直ぐ飛来する視認さえ難しい糸、縦に斬る事も横に斬る事も絡め取る事も難しい。軌道から避けるというのが唯一の手段。それは今、両手の指で行っている作業を中断しなくてはいけないという事で、同じ事をしている私との差に繋がる。

 なので私はもう一つの方法をとる。そのための魔眼であり、そのための糸の結界。

 糸の結界から放たれた糸を、糸の結界から放たれた糸が迎え撃つ。



 「凄いね」

 私コピーの行った神業に思わず賞賛の言葉を贈る。そして、少しだけある分を使う。私コピーより多く存在する糸の結界から次々と糸を放つ。数の差で全てを迎え撃つことは不可能。避ければその差はさらに広がり決定的になる。


 どうするのかな?


 ユウキコピーが格闘術のダッシュで私と私コピーの間に割り込み糸を受け止める。針より細い糸、刺さった程度では何のダメージも与えられない。しかし残念、魔力を通す事で全てを斬り裂く鋼の刃と化す。


 内部から斬り裂かれるユウキコピー。次の瞬間光となって消える。

 「そうくるかぁ」

 純白のローブに身を包む私コピーの隣に佇むユウキコピー。その傷は既に塞がりほぼ全快、というかあっというまに全快した。


 ユウキコピー。クロと同じで使い魔扱いと言う事で手元に召喚が可能らしい。そしてユウキコピーのパッシブスキルのHP回復5に加え私コピーの魔王のローブ、漆黒から純白にする事で範囲回復効果が発生し一瞬で全快。

 「ちょっとクロ君、私って凄くない?」

 「うむ、敵だがな」

 「そうなんだよねー、困っちゃうね」

 「うむ、リンにおっちょこちょい要素があればよかったのにな!」

 「えー、そんなのあったらもう死んでるよ」

 「そこを我が華麗にフォローするというのが定番なのだ!」

 「何の定番なのさ?」

 「さあ?」


 念話に切り替える。

 (けど、やっぱりユウキコピーがキーかな)

 あの場面で身を挺してかばうとか、普通の女の子ならときめいちゃうんだろうけど、ちょっとありえない。普通なら鉄魔法で鉄の壁を出して雷魔法でそれに攻撃とか、二人で連携すべき場面。

 ユウキ君の戦い方、雑だと思ってたけど、おそらく悪運の効果であんなことしても生き残ってこれたとかなんだろうな。それで慎重な考えというか戦い方が出来ていないと。

 (うむ、連携が取れていないな)

 (だね、能力は完全にコピー出来ても経験がないね)

 (だな)

 私とクロには今まで一緒に戦い、一緒に生活してきたという経験がある。いわゆる以心伝心、阿吽(あうん)の呼吸というやつだ。


 ユウキコピーが何か足を引っ張る行動をした時にそこを衝こうかな。


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