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30:悪夢

 ユニークスキルに分類される必中。

 その名のとおり、これを発動した次の攻撃は必ず命中する。


 例えば、パワーのみに重点を置いた必殺の一撃を自分よりも素早い相手に放つ時。超遠距離から予測出来ない突風や突然現れる障害物にその攻撃を邪魔されないように。必中スキルにより必殺の一撃は避けた相手へと軌道修正され、突風により軌道は()れず、障害物は回避し、狙った獲物へその攻撃は必ず命中する。


 このスキルへの対策は、その攻撃を受けることのみとなる。

 盾を装備している騎士や剣士ならば盾自体も本人と認識されるためその対応が可能であるが、受ける装備を持っていない者達にとっては致命的な痛手となる。

 特に必中スキルとともに相手の急所を狙う系統の攻撃スキルを併用してきたら防ぎようが無い。


 しかし、幸いといっていい事に必中のスキルを持った者というのはいまだ存在していない。一説にはこの必中というスキルは人に発現しない分類のスキルなのではないかとも言われている。この極めて希少なスキルは伝説級の武具の固有スキルとして極稀に存在が確認されているのみで、その使用可能頻度も確認されている限りでは一日に一回が精々だという。


 例外として伝説級の武具でなく、レア武器として必中スキルのみが付与されている武具が存在する。


 必中の剣。


 そのスキルゆえ市場では高値で取引される武器ではあるが、実際のところ剣として使い物にならない。


 ある貴族が大枚を(はた)いて必中の剣を手に入れた。

 当然使ってみたくなる。試し斬りとして必中スキルを使用せずに奴隷を斬ってみた。すると、奴隷の皮を斬り肉を斬り骨に達したところで剣が折れてしまったのだ。そう、必中の剣は剣として使い物にならないほどの脆弱な強度なのだ。





 僕は発想を転換する。剣として使えないならば投擲武器として使えばいい。殺傷力が足りないならば武技スキルで補えばいい。こうして生まれた必殺の技。剣という視認しやすい大きな投擲物ゆえ熟練者ほど反撃を視野に入れ最小限の動きで(かわ)そうとしてくる。戦闘に慣れた者達ほど、そのズレが小さいほど、必中スキルがそれを補正し剣を確実に急所へと導いてくれる。


 胸から剣を生やし横たわる五人のメイド達。

 「残念。何のスキルも奪えなかったよ」

 大きく瞳を見開いて僕を見ている僕の嫁にそう告げる。


 丁度良い。僕に逆らったらどういう目に遭うかを解らせるのも兼ねて、これから行ういつもの作業をじっくりと見ていてもらおう。


 まずは、この暗殺弐を持っているメイドから。胸から生えている剣を抜き魔法のポーチにしまい、代わりに幅広の剣を取り出す。

 「リザレクション!」

 「…………ぅ、」


 生き返った事を確認し、心臓に剣を突き立てる。

 「カハッ!」

 刃幅の広い剣が確実に心臓を貫きメイドを絶命させる。大きく瞳を見開いて僕を見ている僕の嫁に教えてあげる。

 「たまに死んだ時の状況を覚えているのがいて、咄嗟に抵抗してくる事があるんだ。必中の剣は脆くてね、折れてしまう事があるから確実に殺せるようにこの剣を使っているんだよ、残念、また何も奪えなかったよ。リザレクション!」

 暗殺弐が残っている事を確認しまた殺す。

 「ダメだな。やっぱりこれはユニークスキルなのかな、リザレクション!」

 一撃で殺す。

 「こうやって一撃で殺すとスキルが消えにくい気がするんだよね、リザレクション!」

 一撃で殺す。

 「新鮮なうちに殺っていても五回目くらいからスキルが消えはじめるなあ、リザレクション!」

 殺す。

 「チッ!」

 ザクザクザクッ!

 「残念、消えちゃったよ」

 大きく瞳を見開いて僕を見ている僕の嫁に教えてあげる。


 「後はそうだなあ、これとこれだったかな」

 暗殺スキルを持っているメイドを嫁の前に持ってくる。暗殺スキルは強奪出来ないけど暗殺スキル持ちを殺していればもしかしたら発現するかもしれないので無くなるまで殺すことにしている。あと僕に逆らったらどうなるかを僕の嫁に理解させるために、

 「いつも、こういうことをしているの?」

 無言だった僕の嫁が僕に話しかけてくる。

 「ん? 当然でしょ、強奪できるか無くなるまでやらないと」

 大きく瞳を見開いて僕を見ている僕の嫁にそう答える。

 「そう...」

 なにか...悲しい? 残念? まあいい。


 単純作業を進める。


 三人目に取り掛かった頃に僕の嫁が聞いてくる。

 「いつからそうなったの?」

 「ん? そりゃリザレクションを覚えてからだよ、それまでは効率アップの為に光魔法を持っている僧侶や司祭を集中的にやったかなあ」

 効率を上げるために行った方法を詳しく教えてあげる。

 「スキルは使用していれば自ずとレベルが上がるのは知ってる?」

 愚問だ。

 「いつ上がるか分からないそんな方法より鑑定で見れば確実に上がるスキルを持っている者が解るんだよ、しかもそれを強奪できれば一瞬でレベルが上がるのも分かっている、それなのにそんな効率の悪いことする意味ある?」

 紅い瞳を見開いて僕を見ている僕の嫁に答える。

 「そんなお前が生きている事に意味はあるのか?」

 翡翠色の瞳が僕に質問してくる。これは...


 胸が痛い。悪運が発動している。

 「凄いね」

 「凄いな」

 「効率、悪いでしょ?」

 紅と翡翠の瞳に返答する。

 「そうだね」

 「そうだな」

 「また、生き延びるのかな...効率悪いなあ」


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