27:出会いは偶然に
「ちょっとリン、なんで鑑定するたびにスキルが違うのよ!」
「えー、それはカーサの鑑定が未熟だからでーす」
「ムキーッ! 私の鑑定は相手に気付かれないほどの達人級なのよ!」
「へー、凄いね。あ、ちなみに私、カーサのこと今十回鑑定したんだけど気付いた?」
「もー! リンのバカバカ!」
怒りでその特徴的な耳まで真っ赤にしたカーサが飛び掛ってくる。
鑑定持ち同士がそのスキルを使い合う事で互いのスキルの熟練度が飛躍的に上がる。
「ちょっとフジワラ! なんでアンタまで毎回スキルが違うのよ!」
「え、なんか慣れちまって、こうすれば騙せるかなってやってみたんだけど出来ちゃった?」
「ハァ!? フジワラのくせに生意気よ!」
「なんだよそれ、意味不明だわ」
カーサが与一の弓を構える。与一の弓の特殊効果、必中が発動する。
「死になさい」
「チョ、マテヨ! 止めてくれ、必中はやばいだろ」
フジワラ君が私に止めるように訴えてくる。
「許可するのだ」
私に代わってクロがカーサに撃つ事を許可する。
「チョ、マジ死ぬから!」
同じ攻撃を何度も繰り返されると対応できるようになるのと同じで、鑑定にも慣れというものがあり鑑定される感覚を覚えることで相手に誤情報を与える事も可能だ。しかしそのような事例はただでさえ存在自体が珍しい鑑定持ちが同時に複数存在でもしない限り起こり得ない。極めて稀な事象である。
周囲に同様の鑑定持ちが存在しなかった者はその優位性により己の鑑定がレジストされることなど考えもしない。
稚拙。
この感覚は、王都にいたときカーサ以外の鑑定持ちに鑑定された時と似ている。鑑定という特殊なスキルの性能に胡坐をかいてそれ自体の成長を考えもしなかった者の未熟さ。
愚かしくも嬉しい誤算。
おそらく一番繁盛している屋台に陣取り通りを行きかう人や店に来る客を鑑定しているのだろう。その策自体は褒められるものだが自分で言うのもなんだけど相手が悪い。事実、私を鑑定した後直ぐに興味を失ったようで視線は外を向き、行きかう人々を鑑定している。
(クロは普通のネコ設定で偽装した?)
(うむ、か弱いネコのステータスで鑑定させたのだ)
私も何の取り得も無いステータスとスキルで鑑定させておいた。
店内の様子を見回す振りをして、ちらりとその男の人を鑑る。当然、鑑定した事は相手に気付かれない。鑑定持ちが鑑定に対して一番無防備というのもおかしなものだ。
--------------------------------------------------------------------
名前:ユウキ 種族:人族 性別:男 年齢:28
スキル:(特殊)言語翻訳、鑑定、二刀流、スキル強奪、悪運
(武技)剣術5、槍術5、格闘術5、弓術5
(技) 隠密5
(魔法)炎魔法5、氷魔法5、雷魔法5、鉄魔法5
光魔法5、闇魔法5
(自動)HP回復5、MP回復5
--------------------------------------------------------------------
うはー、なんかヤバイ。
スキル強奪と悪運、この二つが特にヤバイね。しかし、言語翻訳は別としてもユニークスキル五個って凄い。
(リンー、今鑑定しただろー、教えれ!)
(えー、なんで解ったの?)
(動きが不自然だったのだー!)
(えええー、ほんと? もしかして気付かれた可能性ある?)
(我しか気付かーんのだ!)
(なにそれ、じゃあ不自然じゃなかったってことじゃん)
(そうともいうー)
(もー、ビックリさせないでよー)
クロに鑑定結果を伝える。
(小僧の強化版みたいな奴だな)
(うん、確かにスキル強奪持っている時点でフジワラ君に似ているね、強奪できるスキルは軒並みMAXだしね)
(鑑定とスキル強奪のコンボは凶悪だな)
(だね、けど空間魔法とかは持ってないんだよね)
(そうだな、なんかチグハグな奴だな、悪運というのはどんな効果があるのだ?)
(んー、幸運の良くないバージョンみたいな? 詳しく鑑定してないからね、さすがにもう一度鑑定は気付かれないと思うけど念の為やめておきたいし)
(幸運の反対は不運じゃないのか?)
(そうだね、つまり運が無いんじゃなく運が良いけど悪いっていう感じかな、いや、悪いけど良いと言うほうが正しいのかな)
(解りやすく!)
(んー、宿で寝てたら宿が全焼して皆死んだけどなぜか自分だけ無傷で生き残る、みたいな?)
(不幸を呼び込むけど自分だけ逃れるみたいな迷惑なアレか?)
(そうそう、それ、なんていうかアレダヨネ)
(まさに勇者体質?)
(ダヨネー、勇者と呼ばれる存在ってだけで災いを呼ぶのにスキルまで持ってるなんてね)
(迷惑な奴だな、取れてないスキルがあるのも悪運のせいとかありえそうだな、迷惑を振りまかない幸運は却下されるみたいな?)
(あー、かも。関わり合いになりたくないね)
(うむ。華麗にスルーの方向で!)
「ヘイ、オマチ! これがいま出せる限度だ」
ドランツさんが、思ってたより大量のバケットサンドの包みをトレイに乗せて持ってくる。
「あ、ありがとうございます」
「オウ! こちらこそありがとさん、締めて...おまけだ金貨一枚でいいぜ」
二個で銀貨一枚だったから、二十三個だと銀貨一枚と銅貨五枚分のお得。
「ありがとうございます」
言いつつ、魔法の鞄に入れる振りをしながらアイテムボックスにしまっていく。
うひゃー、ちょっと目立っちゃったから鑑定されてる鑑定されてる。けどユウキさんの鑑定している魔法の鞄はそれほど高価なものではない。まさか寄越せとか絡んでこないよね? ね?
長居したくないので、そそくさとドランツさんの屋台を後にする。
念の為、人通りの少ない道を選んで歩く、と背後から人の気配。けど、これは見知った人というか、なんと言うか。
「おはようございます。お嬢様!」
振り向けば昨日合ったメイド軍団の新人さんの、ニアさんだったかな。
「おはようございます。ニアさん」
満面に浮かぶ嬉しそうな笑顔。やだ、何か眩しい!
「わ、あの、私の様な者の名前を覚えてくださって光栄です!」
見れば、買出しの最中だったらしく魔法の鞄に入りきらなかった荷物を両手に抱えている。
(懐かれてるな、リン)
(うーん、困っちゃうね)
(別にいいだろう、これなら洗脳いらずだ)
(そういう問題?)
(そういう問題なのだ)
火の一族の屋敷も冒険者ギルドのそばにあるという事で途中まで一緒に行くことにする。
偶然は必然という人がいる。
何をいっているのか解らないと言う人もいる。
それはそうだ。因果というものは、原因があって結果があるのだから。
しかし、世には強制的に因を創り出す運というモノが存在する。そう、それが悪運だ。




