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22:真の暴力

 喋る? 自分の思考に疑問が浮かぶ。

 「魔の者の類か」

 喋る魔物は見た事が無い。高位の何かがただの猫の姿に化けている可能性もありうる、それならば気配が無いのも頷ける。これはゴルジフの差し金か?


 「くくく、よく見破ったな。我こそは魔の王...」

 「なんだと!?」

 「…………」

 「ゴルジフは、魔物とも繋がっていたのか!?」

 「…………」

 「だが、俺の魔剣には無意味ぃぃ!」

 「…………、おぃ」 斬!


 隙を突く。

 猫が呆れて口を開いた瞬間。炎を纏った魔剣を横なぎに首に叩き込む。


 キンッ!


 ひょいと無造作にあげた右足から伸びた一本の爪に全力で叩き込んだ魔剣が受け止められる。

 「……なんだ、ただのバカという訳ではないのだな」

 魔物が邪悪に笑う。


 まさかと思ったが軽く受け止められた。やはり見た目とはかけ離れた実力を持っていた。しかし、俺のこれは炎の魔剣と呼ばれている。

 「ケヒィッ!」

 魔剣から炎が吹き上がり、魔物を包み込む。


 「…………」

 魔剣の炎に包まれながらこちらを見上げる魔物。驚いて声も出ないか?

 「キヒィ!」

 「…………」

 必死に耐えているのか無言でこちらを見上げる魔物。魔剣から注ぎ込まれる炎が増す。

 「ヒヒ!」

 炎に焼かれる魔物の首がコトンと傾く。ついに力尽きたか?


 「もしかして、これがお前の最大の攻撃なのか?」

 そう言いつつ、魔物の爪に力が加わり。


 パキンッ!

 魔剣が折れる。


 立ち上がった魔物がブルンッと身を揺すると、その身を包んでいた炎が霧散する。


 「キヒ、ィ?」

 何が起きたのか理解出来ない。


 魔物が宙に浮く。非常識な魔物だ。

 「うむ。やはりこうでなくてはな、下種を見上げるというのは気分が悪い」


 宙に浮く魔物がこちらを見下ろし。

 「取り合えず、跪け」

 何を言っているのか理解出来ない。


 ボキンッ!

 「ガッ!」

 何かとてつもない力に握りつぶされたように膝から下の骨が砕ける。


 膝で立って魔物を見上げる。一体どういう力を行使しているのかまったく解らない。

 「ふむ、特に話すこともないし、しね」

 「まて! まってくれ!」

 「やだ、しね」

 ボキンッ!

 「グガッ!」

 腰から下がとてつもない力に握りつぶされる。


 本当の問答無用とはこういう事かと、己が今までしてきた冒険者に対する仕打ちを思い出しながら考える。問答ではなく結論を言わなくては殺されてしまう。

 「ゴルジフには逆らわない!」

 「うむ? 何の話だ」

 「ゴルジフに雇われたんだろう?」

 「むむ? あんな三流貴族関係ないぞ」

 ボキンッ!

 「グガガッ!」

 両腕がとてつもない力に握りつぶされる。一体どういうことだ、まさかここに来たのは気まぐれだとでもいうのか!?

 「じゃ、じゃあなんでだ?」

 「リンを汚らしい目で見てたから」

 「リ、ン? 誰だ?」

 「おしえなーいのだ!」

 ボキンッ!


 絶命する。


 炎の魔剣使いガロッチ。その死は、邪な考えを看破されての制裁か、ただ何となく殺されたのかは不明だが、その死体は発見されない。しばらく後に訪ねてきた女が返事の無い部屋に入ると、そこには粉々の金属片と何かが燃えたであろう後が残っているだけで、燃えたであろうモノの灰も何も残っていなかったという。公式にはガロッチは消息不明として処理された。


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