報告と届け物の中身は…
今回は前回の終わりから明けた次の日の話だ。どうやらジャックが王城に呼び出されたようだ。
次の日、王城から近衛がきた。
近衛「ジャック様。陛下がお呼びです。きて頂けますね?」
ジャック「ん?どうした。俺なんか悪いことしたっけ?」
近衛「いえ、確か何か昨日のことで報告をしてほしいと仰っていました。」
ジャック「あぁ、昨日のことか…」
ネブラ「なんだ、お前まだ報告に行ってなかったのか?早く行ってこい。」
ジャック「チッ、面倒くせえなぁ…」
ジャックは心底面倒くさそうにそう言ったが、ソファから起き上がった。
ジャック「わかったよ。ちょっくら行ってくる。」
近衛「では、そこの通りに馬車を待たせているのでそちらに…」
ジャック「ほう、こりゃありがたい。」
そして、馬車に乗ること1時間ほど経つと王城に到着した。
近衛「それではお通ししますので、こちらへ…」
ジャック「おぉ、ずいぶん丁寧なことで。」
どうやらジャックは王城では中々の地位として扱われているようだ。しばらく歩くと、普通の扉を近衛がノックした。
近衛「陛下、ジャック様をお連れしました。」
陛下って、王様がこんな小さな部屋にいるわけ…
グリシャ「ありがとう、下がってくれ。」
えぇ嘘だろ、本当に王様の部屋だったよ。
近衛「それではここで。」
近衛は深々と頭を下げると、自分の持ち場へ戻っていった。
ジャック「お前、王なんだからもう少し王らしい部屋とか用意できねえの?」
グリシャ「来て早々それかよ。いつも来るたび言われるが、何度も言うように俺はこの部屋の方が落ち着くんだ。」
ジャック「貧乏根性が染み込んでやがるな。」
グリシャ「余計なお世話だ。そんなことより今回の報告を聞きたいんだが?」
ジャック「わーったよ。それより客が来てんのに飲み物一つ出さねえのか?」
グリシャ「一応だが王の俺にそんな口聞けんのはお前くらいだよ。」
ジャック「ま、いいや。報告は取り敢えずカイナ大陸が壊滅状態になったくらいだな。あとは特に被害は出てない。」
グリシャ「やっぱやっちゃったか〜。大陸一つ壊滅って、どう始末つければいいんだよ…」
ジャック「そこは知らん。そもそもシンのやつがヴェノムファントムやらイルを使ってきたのが悪い。」
グリシャ「え、シンがいたの?」
ジャック「あぁ、あの野郎どうも何か企んでるぜ。」
グリシャ「脱獄したって報告はあったけどまさかこんな早く行動に出るとは…」
シンが出てきたのは相当やばい。それは事実である。ジャックの報告が一通り終わると扉がノックされた。
近衛「陛下にお届け物です。」
そう言って差し出されたのは小さな木箱だった。
グリシャ「なんだこれ?」
ジャック「シンのやつからかもな。毒ガスでも入ってたりしてw」
ジャックは冗談交じりにそんなことを言ったがグリシャが箱の蓋を少し上げた時…
ジャック「ん?おい!そいつを開けるな‼︎」
グリシャ「え?」
しかし遅かった。グリシャは箱を開けてしまい中から煙のようなものが噴き出した。その煙は部屋の扉や窓を突き破り城から街へと広がった。
グリシャ「ごほ、ごほ、なん、だこれは?頭がボーとして、足に、力が…入らない…?」
煙が落ち着くとグリシャが高熱を出して苦しんで倒れていた。扉の前にいた近衛も同様であった。
ジャック「こいつは毒、いや細菌か。とにかくほっといたらやべーな。グリシャこいつを吸え。」
そう言ってジャックはポケットから葉巻のようなものを取り出しそれの先に火を点けた。
ジャック「ちょっと苦しいだろうがすぐ楽になる。」
グリシャ「スゥ…ごほ、ごほ…はぁ、はぁ…なんだったんだ、今のは…」
ジャック「やっぱりやってきやがった。こいつはシンが用意した細菌だろう。かなり毒性を弱めてあるが、宣戦布告のつもりなのか?この城と周辺10マイルはこの細菌が蔓延したはずだ。」
グリシャ「なんでお前は平気だっんだ?」
ジャック「俺はこんな細菌くらい自分の免疫でなんとかできる。だが、こいつの免疫を持ってないやつはさっきのお前みたいに高熱やらで苦しむだろうな。」
グリシャ「お前が吸わせてくれた葉巻はなんだ?」
ジャック「こいつは無菌草の葉を乾燥させて作ったんだ。大抵の菌ならこいつの煙の匂いで逃げる。」
グリシャ「それはあと何本ある?」
ジャック「あと5本だ。そもそもな無菌草なんて代物簡単に手に入るわけねぇだろ。」
ここで説明しておこう。無菌草とはその名の通り菌が無い草のことだ。何故菌がいないのか、それはその草が持つ独特の匂いや成分で菌が寄り付かないからだ。ジャックはそれを葉巻きとして持ち歩いていた。その葉巻は煙の匂いで細菌を体外に逃がす。しかし、無菌草が育つには複雑な条件があり、見つけ出すのが大変なため中々の手に入らない。
ジャック「それにだ。今手に入ったとして、無菌草には麻薬と似た成分があるから下処理に最低でも3日はかかる。毒性を弱めてあるとはいえ、あの細菌くらったら並みの体力じゃ2日と持たず死んじまう。」
グリシャ「そんなにヤバいのか?」
ジャック「ああ、元々戦争の時に敵の軍を一瞬で殲滅するために作られたんだ。毒性は自然界の中でも随一だろうな。」
グリシャ「で、葉巻以外の方法は無いのか?」
ジャック「ちょっと待て今思い出す…あ、」
グリシャ「思い出したか?!」
ジャック「そうか…おい!温かい牛乳を用意しろ。」
グリシャ「え?ぎゅう、にゅう?」
ジャック「そうだ牛乳だ。用意するスタッフにはこいつを吸わせろ。」
そう言って葉巻をグリシャに渡す。
グリシャ「訳が分からないが、温かい牛乳を用意すればいいんだな?」
ジャック「早くしろ。ここの従業員や国民を死なせてもいいのか?」
グリシャは慌てて厨房へ向かった。軍を一瞬で殲滅する細菌に牛乳とは一体どういうことなのか?俺は理解に困った。
ジャック「さて、マーベリックの奴らを連れてくるか…」
to be continued…
今回はジャックがメインの回だ。相変わらず身分や、実力がわかりにくい。シンの悪戯は中々困ったものだ…医学の知識はサッパリなので少しこの先は苦労しそうですな。次回はマーベリックの連中をメインにおいてこの話と繋げる。楽しみにしていてくれ。そういえば俺がどうして平気だったのか?それは内緒だ。さて、牛乳をどうやって使うか…