廃城の骸
骸は眠る。
廃城の奥、玉座の間。
寂れた城の主として、玉座に今なお鎮座する。
城のような島。
島のような城。
海で囲まれた孤島は、対岸の大地と1本の道で繋がっている。
時たま潮に埋もれて、時たま姿を現す道は、気まぐれな在り方を隠しもしない。
かつては隆盛したであろう城下も、今は人っ子一人住んじゃいない。
幽霊城とも称されるその城は、海を漂うブイのようでもある。
伽藍堂の内部は、今にも何かが出てきそうな雰囲気さえある。
だが、1人の骸が眠るだけである。
骸は何を見つめる?
世の無常か。
人の無情か。
裏切りの飽和か。
衰退の脆弱か。
戦士の美談か。
傾国の美女か。
夜景の静寂か。
日の出の光栄か。
息を吹きかければ蘇りそうな記憶も、
埃に混ざって跡形もない。
あの時何があったのか。
何故かの骸は在り続けるのか。
立ち寄った1人の男が問いかける。
「お前は何を見る」
それは長い金髪の男であった。
「王様」
細くも筋肉質な体のラインが見える、タイトな黒ずくめであった。
「哀れな王様」
声は無表情。
「1人ぼっちの王国で満足か?」
両手をポケットに突っ込んでいる。
「なぁ? 1人ぼっちの自分勝手な王様よ」
立ち去る音が鳴り響く。
「夢見て独りで嘆いてろ」
ロングコートを羽織る。
「救いようのない馬鹿者め」
コツコツ、コツコツ。
コツコツ、コツコツ。
もうすぐ夜が来る。
暗い広間は影に染み込む。
喋ろうとしても死者は語らず。
王の姿が骸に重なる。
――――骸は何も語らない。
大した意味は考えてません。
今後何かと繫がる可能性はありますが、大した意味はありません。
思いつきです。はい。
あ、でも、これに出てくる男性は後々の僕の作品で重要なキャラクターになります。
まだ公表はしませんが。
あと、なんだっけ?
モンサンミシェルだっけ?
あの世界遺産の城をモデルにしてます。
この作品に関しては以上です。
以上。