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街の外での依頼

 丸一日を休息と観光に費やして英気を養った私は、今日もいつもの様に依頼を受けている。


 でも、今いる場所はトランナの街中じゃない。


「またこの森に来ることになるなんてね」


 私は今、ユーリエさんの家からトランナに向かう時に通った森の中を歩いている。


 だけど、今回はユーリエさんの家に帰ることが目的ではなく、フォレストウルフの素材集めが目的で、今はフォレストウルフ狩りの真っ最中だ。


 冒険者ランクが銅二になったことで、私はそこそこ報酬が高い依頼を受けられるようになった。


 だから、何か新しい依頼を受けようと思ったわけで、悩んだあげくフォレストウルフの毛皮の納品依頼があったからそれを選んだ。


 街から森へ行くまで普通に歩いて一日、私が全力で急げば半日だから、依頼の達成は最短でも二日はかかる。


 今まで私の受けていた依頼が一日以内で終わるものばっかりだったことを考えると、今回はかなり時間のかかる依頼だ。だけど、その分だけ報酬も良い。


 この依頼の依頼者はとにかくたくさんの毛皮が欲しいらしく、特に納品数の決まりはない。毛皮の数が増えれば報酬も増えるとのことだった。

 毛皮の数によっては、銅一の時に稼いでいた報酬を簡単に上回れる。


 そんなわけで、たくさんフォレストウルフを倒さなくちゃいけないんだけど、幸いなことにこの森にはフォレストウルフがたくさん生息している。


「あっ、見つけた」


 やっぱり数が多いおかげか、森に入ってすぐにフォレストウルフが見つかった。


 向こうもこちらに気づいてるけど、警戒しているのかすぐさま飛び掛かっては来ない。


「でも、止まってちゃダメね」


 私はウィンドカッターを発動して、止まっているフォレストウルフに向けてそれを飛ばす。


 いきなり私が攻撃してくるとは思わなかったのか、フォレストウルフはウィンドカッターを避けることができずに一撃で動かなくなった。


 私は倒したフォレストウルフに近づき、フォレストウルフが死んでいるのを確認する。


 いつもならこの場でフォレストウルフを解体して、必要な素材とそれ以外に分けるのだけど、今回はそのまま収納袋へと入れる。


 この前作成した収納袋は大きく作りすぎちゃったようで、どれくらいの量が入るのか分かっていない。


 今日はそれを確かめるために、フォレストウルフを解体しないでそのまま入れていくことにしている。


 それにしても……フォレストウルフが明らかに入りそうにない大きさのポーチに入っていくのは、中々にシュールな光景だ。


 ちなみに、収納袋は生きているものを収納できないようになっている。そうじゃないと、使い方を誤れば私がこの中に閉じ込められかねないからね。


「よし、それじゃあ次はどこにいるかな?」


 まずは順調に一匹のフォレストウルフを狩り終えた私は、新たなフォレストウルフを探しに再び歩き始める。


 しばらく歩いていると、今度は十匹ぐらいのフォレストウルフの群れが見つかった。


「ガウァ!」


 さっきの一匹狼と違って、私の姿を見つけた瞬間に一匹が襲い掛かってくる。他のフォレストウルフは、万が一私が避けた時に襲い掛かるつもりなのか、私の事をじっと見ていた。


 群れといっても一匹しか襲ってこないのならば、対処方法は一匹の時とほとんど変わらない。


 私は先程と同じウィンドカッターを撃って、一直線に飛び掛かってきた個体を倒す。


 呆気なく倒された一匹を見た他のフォレストウルフ達は、困惑したかのように仲間同士で顔を合わせている。

 それだと最初のフォレストウルフと同じで、いい的なんだけどなぁ……


 そういえば、フォレストウルフの群れと戦うのって久しぶりかも。


 最近は街中の依頼しか受けてなかったし、丁度いい機会かな。


「一匹ずつじゃなくて、同時にかかってきなさい。そうしないとあなた達に勝ち目はないわよ」


 私は修行していた頃に、ユーリエさんから一対多の戦闘についても指導してもらってある。


 だけど、使っていない知識を忘れちゃうように、しばらく戦っていないと動き方も忘れてしまうし、いざという時に上手く戦えなくなっちゃうかもしれない。


 そこで、私は今もちゃんと腕が鈍ってないか確かめるために、残りのフォレストウルフ達に向かって挑発するようにそう言う。


 言葉が伝わるはずがないのだけど、フォレストウルフ達も同じことを考えていたようで、今度は二匹が同時に襲い掛かってきた。


 最初に私の方へ向かってきた二匹に向かって、ウィンドカッターとアクアバレットを発動する。


 二つの魔法は一直線にフォレストウルフへ向かって飛んでいき、片方のフォレストウルフにはウィンドカッターが命中したけど、もう一匹はアクアバレットを躱して突っ込んできた。


 魔法を躱したフォレストウルフが私の目の前に迫ってくる。


 魔法を発動していては間に合わないと判断して、私は飛び掛かってきたフォレストウルフの牙を横っ飛びで回避する。


 すると、私が地面に着地すると同時に、狙い澄ましたかのようなタイミングで他のフォレストウルフ達が襲いかかってきた。

 最初に群れの取った作戦が成功した形かな?


 フォレストウルフ達は獲物を仕留めたかのような目をしていて、まるで勝ちを確信しているかのようだった。


「勝ったと思うのは、全てが終わってからね」


 私はユーリエさんの教えを思い出しながら、魔力で体を強化して思いっきり上へ飛ぶ。


 飛び掛かってきたフォレストウルフ達の牙は、私がいなくなったことでそのまま空を切っていった。


 突然私がいなくなったことで姿を見失ったのか、私を探すように辺りをキョロキョロするフォレストウルフ。


 その群れを眼下に捉えて、私は空中で魔法を発動する。


『アクアバレット』


 自分の周囲に数十個のアクアバレットを発動し、群れへ向けて一気に飛ばす。


 逃げ場がないくらいの密度で撃ったアクアバレットは、フォレストウルフ達を頭上から襲う。


 相手の数が多いのなら、こちらは手数で上回ればいい。

 少し無茶苦茶で力押しの考え方だけど、実際にできるのなら有効な手段だと思う。


 私は魔力量が人より少し多いみたいだから、こんな使い方をしてもまだ余裕がある。


 アクアバレットの雨が止んで、地面に着地して周囲を確認してみたけど、私以外に動くものはいなかった。どうやら今のアクアバレットで群れは全滅したらしい。


「最初の魔法、外しちゃったなぁ……」


 私は二匹のフォレストウルフが襲ってきた場面を思い出す。


 違う属性の魔法を同時に発動して、それぞれ別の目標に当てられるか確かめてみたけど、片方は外れてしまった。


 複数を相手にした時の圧力に押されて、若干狙いが甘くなっちゃったのかな。


「修行の時はできたのに……これは少し頑張らないとね」


 群れを挑発する前に思っていた通り、やっぱり複数相手にうまく立ち回ることができなくなったのかもしれない。


 倒したフォレストウルフ達を収納袋へ入れてから、私はまたフォレストウルフを探し始める。


 念のため少しは魔力を残しておくつもりだけど、戦い方を思い出せるように、今日はできるところまで頑張ろうかな。

フォレストウルフから必死に逃げていたことが嘘のような成長ぶり。


今回はちょっと短めの更新となりました。

次話は明日、もしくは明後日更新予定です。


行間を調整しました。(2023/7/2)

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