第5話
見たところ、年齢は二十一か二か三くらい。
外見と仕事ぶりを見るかぎり、恐らく新人だろう。センスのいいスーツを着こなしてはいるが、落ち着きがなく、どこか不安を感じさせるような一面がある。
ふむ、なるほど……。
僕は女の容姿を観察する。
よく見ると、けっこうかわいいな。僕の好みのタイプだ。
ヘアスタイルは、お尻まである超ロングで、色は深緑というよりは鉄色に近い。
顔の次に重要な要素である体型は、名刺に記されていた通りスポーツをやっているからだろう、筋肉質で無駄な贅肉が一切ない。
視線を身体から顔にもどす。
彼女の口は固く結ばれ、書類のチェックに余念が無い。
やはり顔だな。顔がいい。
全体的にバランスのとれた顔立ち、それにパーツのひとつひとつが小さくて、僕好みの薄化粧である。
気になる点としては、やはり胸かな……。
形は良いのだが、率直に言って小さい。
僕の理想は、Dカップくらいなんだけど、彼女のそれはいいとこBカップと見える。
んん、それさえクリアできれば完璧なんだけど……。
「内田様」
「はい」
「ひとつ不躾な質問をさせて頂いても宜しいでしょうか?」
「っえ、ああ、いいですけど」
「今、内田様は、幸せですか?」
「んんんんん、まあまあですかね」
「そうですか」
「……」
「……」
「……」
「……」
「実はですね、嘘みたいな話なんですけど、短期間で幸せになれる方法があるんです」
「っえ、ほんとですか?」
「はい、本当です」
「なんていうか……。信じられませんね」
「正確に言うとですね、本当の自分の欲望、願望を知ることによってより幸福になれる、ということなんですけど」
若い女は語尾に力をこめ、説明を続ける。
「もっと簡単に言うと、本当の自分を知る、ということです」
「つまり、無意識の世界に抑圧された様々なエネルギー、感情と直接向き合うことによって、本当の自分の姿を再発見することができるのです」
女は水の入ったコップを右手でつかみ、それをぐいっと飲んだ。
白いブラウスから、水色の下着が透けて見える。
「えっと、野口さん」
「なんとなく話はわかったんだけど、そのための、なんていうか、具体的な手段っていうのは……」
「はい、もちろんございます」
「弊社の研究施設、といっても普通の会社なんですけど、そこにあります仮眠室で三十分ほど横になって頂くだけで結構です」
「っえ、たったそれだけ?」
「それだけで、本当の自分、だっけ? それがわかるの?」
「はい」
「不明瞭な薬を投与したり、飲んだりする心配は一切ございません。ただ、三十分間、特製ヘッドギアをかぶって横になって頂くだけで診察はほぼ終了いたします」
んん、どうするか……。
怪しいといえば怪しいし。んん、迷う……。
でもここで断ってしまうと、おそらくもう二度とこの子に会えなくなってしまうだろう。
それは困る。非常に困る。
なんとかしないと……。
っあ、そういえば、一番肝心なこと訊くの忘れてた。
「野口さん」
「はい」
「その診察って、いくらかかるんですか?」