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第1部 敗軍の将

日本史の人物が登場しますが、思いっきり異世界ものです。


関ヶ原の合戦の後、石田三成が大坂を目指して逃亡している途中の場面です。

(朝か・・・)


一人の男が硬い岩の上の寝床から身体を起こすと、この岩窟に身を潜め無事に一夜を過ごすことが出来たことに一先ず安堵する。

しかし、それは今自らが置かれている現実の前では何の慰めにもならない。

それこそ、今から数秒後には自分の命が無事であることが保証できないほどの厳しい現実の前には。


今から数日前、この男は戦場にいた。

大地を震わせ続ける鬨の声・刀剣がぶつかり合う甲高い交差音・爆ぜるような鉄砲の射撃音・そして命を落とした者たちの断末魔。

鉄砲が鳴り響くと同時に多くの騎馬武者や足軽が血飛沫をあげて弾き飛ばされ、その銃撃を掻い潜った騎馬武者が次の射撃が行われるまでの僅かな隙をついてその鉄砲隊を馬蹄にかけ、その混乱に乗じて追いついてきた足軽隊が長柄を突き出して残った者たちを串刺しにしていく。

その地獄のような戦場で、この男は自らの手勢を率いて戦っていた。

小高い山の上に本陣を構え、幾重にも築いた柵と空堀を盾にして雲霞のように攻め寄せる敵勢を前に激しく抵抗していた。

「進め~~!!治部少の首を落とせ~~!!」

「虎の威を借りた狐を打ち取れ~~!!」

「褒美は思いのままぞ!奴を殺せ~!!」

敵勢から聞こえる声に、思わず顔を顰める。

それは自分に向けられた罵声のためではない。


「豊家の恩を忘れた愚か者が・・・ッ!」


自らと同じ豊臣家の家臣でありながら、次の天下人を虎視眈々と狙う徳川家にまるで犬のように尻尾を振って靡いた者たちを睨み付けながら、石田治部少輔三成は唇を噛み締めた。


(・・・何故こうなった・・・?)


岩窟の壁に背をもたれ、これまでに何度となく繰り返してきた自問を浮かべる。

伏見城を早々に落とせなかったことが失敗だったのか?

東軍に属した者たちの妻子を人質に取るような真似をしたことが失敗だったのか?

豊臣家の一族と過信し、あのような者に要衝である松尾山を任せたことが失敗だったのか?(これは元々三成がそうしたかった訳ではなく、勝手に乗っ取られた感じではあったが)

いや、そもそもこの戦そのものが失敗だったのか?


そう思い僅かに首を振る。

(いや、こうしなければ豊家を守ることは出来なかった・・・)

豊臣家最高権力者である太閤殿下が崩御されてから僅か2年足らず、豊臣家の家臣団は櫛の歯が抜けるように徳川家に靡いていった。

弱肉強食の戦国の世を渡り歩き全国でも最大の石高と兵力を誇る徳川家と、農民から身を起こし天下統一まで漕ぎ着けたカリスマである太閤殿下を失った豊臣家を天秤にかけたとき、多くの者たちが豊臣家の未来を信じることが出来なかったのだ。

そんななか、石田三成は飽くまで豊臣家に尽くした。

半ば強引な形で五奉行職を解任され、居城である佐和山に蟄居させられても、豊臣家を守るの一念は変わらなかった。

その頑固なまでの忠義に、当初は必死に三成を説得しようとしていた親友である大谷刑部少輔吉継も最後は折れて、共に徳川家と戦うことに協力してくれた。


だが結局、石田三成は負けた。

しかも自分が守ろうとしていた豊臣家の一族に裏切られるという最悪の形で。

そして今、三成は敗軍の将として東軍の追手から逃れるため、この古橋の岩窟に身を寄せている。


(・・・諦めぬ!)

自分に尽くしてくれた家臣も、最後まで自分を守ろうとしてくれた親友も失ったが、三成は諦めてはいなかった。

自分を見出してくれた太閤殿下に報いるため、そして一度は収まった乱世が再び到来することを防ぐため何度でも戦ってみせる。そう思い立ち上がろうとした時だった。


(・・・・・・?)

ふいに不思議な感覚に襲われ、三成は怪訝な表情を浮かべる。

何かがおかしい。

朝になり先ほどまで聞こえていた鳥の鳴き声が全く聞こえない。

山の木々の間を吹き抜ける風の音も聞こえない。

まるで、万物の全てが止まってしまったような感覚。


「・・・驚いた?」

「うわっ!」

背後から突然発せられた言葉に、思わず三成は前に倒れこむ。

「ご、ごめんなさい、そんなに驚くとは思わなくて」

慌てて振り返って見た先には、幼い童子が一人口元に手を当てて佇んでいた。

いつか小説を書いてみたいと思い挑戦してみた1話目です。

乱文・誤字脱字多々あると思います。

もし改善すべき点などございましたら、次回以降に生かしていきたい考えていますのでご教授のほど、よろしくお願いします。

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