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四章 精霊の泉の大騒動(1)

 その夜、勇者棟一階の学園長室は光魔法の仄かな灯りにのみ照らされていた。

 フォルティス総合学園の学園長――グランヴィル・ガレス・ル・オルブライトは、窓から外の暗い景色を眺めつつ、深刻な表情で口を開いた。

「まさか、まだ残党がおったとはの」

 たっぷりと蓄えた髭を片手で擦り、グランヴィルは静かに溜息を吐く。すると背後から凛とした女性の声がかけられた。

「奴らも馬鹿じゃないわ。幹部以上はあの時に駆逐したけれど、それ以外でも力のある奴はいた。狡賢く生き延びていても不思議はないでしょうね」

 赤毛の女性――舞太刀茉莉は豊かな胸を持ち上げるようにして腕を組んだ。

「狙いはなんじゃろうな?」

「考えるまでもないわね。この学園の存在意義は奴らにとって非常に面白くないものでしょう? 今になって狙ってきた理由もだいたい予想できるわ」

「ふむ、お主以外の勇者が実際に召喚されてしまったからのう。焦っておるのやもしれん」

 グランヴィルは窓から離れ、そのドッシリとした巨躯を椅子に預ける。かつて『勇者の仲間』だった彼と勇者本人が睨みを利かせている限り滅多なことは起きないだろう。が、警戒は重ねておいた方が無難だ。

「直接見たわけじゃないけれど、この辺りに潜んでいることは間違いないわ。でも生徒たちにはまだ知らせない方が得策ね。勇者クラスはともかく、他の生徒は確実にパニックになるわ」

 舞太刀茉莉は赤い瞳を眇め、言う。


「魔族に狙われてる、なんて知ったらね」


 特に勇者クラスの問題児共は聖剣も使えないまま首を突っ込むだろう。彼らの基本スペックは聖剣がなくても怪物級だが、魔族は文字通りの怪物だ。戦いは熾烈を極める。

「あの子たちには聖剣が使えるようになるまで、勝手な真似をさせるわけにはいかないわ」

「うむ、そうじゃのう」

 本日の大騒ぎもあって、大人たちは悪ガキ共の対応に頭を悩ませるのだった。


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